ど-313. 拗ねる
短い。
「旦那様、旦那様」
「……」
「旦那様?」
「……」
「旦那様、如何なされたのですか?」
「……」
「成程、先の件に対して旦那様なりの抗議のつもりなのですか」
「……」
「ふふっ、拗ねておられる旦那様も可愛らしいですよ?」
「可愛いとか言うなっ!」
「ではどのように申し上げればよろしいのでしょうか?」
「格好良いとか、凛々しいとか、逞しいとか……男を褒めるときはそれなりの言葉があるだろ。それを可愛いはないだろうがっ」
「それは大変失礼を。では格好良く凛々しく逞しい旦那様」
「……かといってそのままそれを使われてもなぁ、微妙な感じだ」
「そうですか。では旦那様をおほめするのは機会をおいて、と言う事に致します」
「そうしてくれ」
「それで旦那様?」
「あん、何だよ?」
「拗ねておられたのはもう宜しいので?」
「ぁ」
「悲しい事に私と口をきかないようにしていた、とお見受けいたしましたが?」
「……そんな事はないぞ」
「そうですか。私の勘違いであったのならば、よろしいのです」
「……――お前、それはずるいんじゃないのか?」
「ずるいとは何の事ですか?」
「惚けてるのか、それとも本気で判ってないのか?」
「? 申し訳ございません、旦那様。旦那様の事であるならば旦那様がひた隠しにしておられるアレの隠し場所も正確に把握しているつもりなのですが……今回に限り本当に、旦那様の仰っている意味が分からないのですが?」
「……だから、ずるいって言ってるんだよ」
「やはり良く分かりませんが……ずるいのは、いつもずるいのは旦那様です」
「――だからなぁ! ……ちっ、あんな表情されたら毒気の一つや二つ抜けるっつーの」
「??? かお、で御座いますか。私、どのような表情を浮かべて……?」
「…………知るか」
ちょっと意図的に短くしてみました。本当にサクッと流して読める? みたいな感じに。
一番最初はこんな感じだったかなぁ? と、思いつつ、最近メイドさんの毒舌っぷりが柔らかくなってきている気がする。
身に覚えのない話
「いやちょっと待て」
「如何なされましたか、旦那様」
「俺は今何を書こうとしていた、ってかこの婚約誓約書って一体何の事だっ!?」




