おーい
レム君vsレム君、続き
「ぅぐ、……連続しての不意討ちは流石に卑怯なんじゃないのか?」
「避けられないお前が悪い。そもそも不意打ちを食らうお前が悪い」
「それもそうか」
「ああ。と、言う訳で今度こそ消えろ――」
「っと。流石に三度も同じ手を喰らうほど甘くはないぜ?」
「二度喰らっている時点で甘いとは思わないのか?」
「それはアレだ。完璧過ぎるが故の、俺の生み出したハンデだ」
「ハンデで瀕死になってりゃいうことないよな。見るに堪えねぇよ」
「ふぐっ、そう言うなって。この程度の困難を乗り越えられなくて、何が俺だ」
「それはそれで同感だが、俺は自分から困難な状況を作ってそこに飛び込んでいくようなアホな真似はしないぞ?」
「ふっ、つくづくこの完璧たる俺の余裕が恨めしいぜ」
「確かに恨めしいな、ついでに疎ましい。さっさと消えろ」
「さっきから消えろ消えろと……ならば俺はあえてこう言おう――消えるのはお前の方だぶべっ!?」
「あん? いま何か言ったか?」
「に、二度ならず三度も……それも決め台詞の最中という最大の禁忌に不意打ちしてくるとは、流石俺」
「まだ生きてるのか、つーかいい加減にしぶと過ぎるぞ、てめぇ」
「ふふんっ、それはそれ。俺という完璧な存在を失うのがどれほどの損失になるのか世界の方がちゃんと理解しているからな、故に完璧すぎる俺の前では全ての攻撃が無意味! つまりどれほどお前が俺を攻撃しようとも無意味!」
「ほー、……痛ましい発言もここまでくればいっそ見事だな」
「そう褒めるなよ。俺は至極当然のことしか言ってないぜ?」
「そうか。そりゃ御愁傷様」
「まあ、これも仕方ない事なんだよ。俺とお前の違いっていうの? って、わけだから素直に俺に主導権を渡してお前は消えた方が身の為、何より世界の為だぞ」
「……さっきっから気になってたんだが、その主導権って何の事だ?」
「当然、俺の身体の主導権の事だ。お前というエロスより俺と言う完璧超人が使った方が全てにおいて有益であるって言うのは凡夫たるお前でも分かるだろう?」
「待ておい、誰がエロスだ、誰が」
「……不思議な事を言う。お前以外の誰を指せばエロスだって言うんだ。全く、コレだから凡夫ってのは困るぜ」
「俺としてはそんな不名誉な呼称を受ける事をした覚えは一切ないんだけどな」
「何を言うかっ! エロスが不名誉だと誰が決めたっ!?」
「ならてめぇにやるよ」
「謹んで辞退する。誰が受け取るか、そんな不名誉な呼び方」
「おい、さっきと言ってる事が違ってないか?」
「残念だが俺には完璧、若しくは完全という四文字以外の呼び方はなくてな。エロスなんて言う嫌過ぎる呼び名はてめぇにくれてやろう」
「要るか、バカが」
「だから言ってるだろうが。これは要る要らないの問題じゃない。俺が完璧を止められないのと同じ、お前の存在そのものがエロスなんだ。どうお前が否定しようと、それが変わる事はないっ!」
「……だから、一体いつ俺がエロスとかそんな呼び方されるコトをしたんだよ?」
「ふふっ、そんなこと、俺に言わせるなよ」
「こっちにはそもそも心当たりがねんだよ。てめぇが言う気がないのならその呼び方は止めろ」
「毎日、毎朝、毎晩、超絶美人のメイドさんに起こされたり起こしたりぶちのめされたりしてる野郎が言うセリフか、それ? 自覚ないって、お前何様のつもり? あぁ、旦那様、だったか」
「いや、ぶちのめされるの所だけは明らかに違うだろ」
「でもそれ以外は合ってるだろ? 一応でも俺はお前、お前は俺って事になってるんだからな。その程度の事はお見通しだ」
「それは、まぁ……な」
「それがエロスじゃない? 一度、その事を公言してみろよ。お前、翌日には死んでるぞ? まあ、完璧たる俺であれば死ぬことも、ましてや疎まれる事もあり得ないんだがなっ」
「――むしろ俺がお前を疎む」
「お前は良いんだよ。ある意味特別。俺がそうであるように、お互いを疎んでいて当然の存在だからな」
「……だから、そもそもてめぇは何だって言うんだよ?」
「ゃ、何つーの。鏡の裏と表、光と影って奴か? あ、当然俺の方が表で光だから、そこんとこよろしく」
「あ、そ。でもまぁ確かに――俺の方が裏や影って言うのはあってるかもな」
「判ってるじゃないか。そうならそうで、さっさと栄光のロードを俺に歩かせるた――」
「“完璧”な俺とやらはさ、解ってるんだろう?」
「……何をだ?」
「俺――仮に“レム”という存在があるとして、それが光と影、裏と表だとするとどっちが正しい“俺”なのかって奴をだよ」
「ああ、解ってるぜ。だからこそ俺は完璧であり、俺が光であり表なんじゃねぇか」
「そか。そりゃ話が早くて助かる、いやそもそも話し合う必要もないのか。お前は俺、だったよな」
「……そうだな、その通りだよ」
「なら俺が“レム”って言う存在である限り――てめぇに出番はもうねえよ」
「……そうか」
「俺が“レム”でなけりゃ、俺がお前であってもよかったのかもしれないけどな」
「さあな。どのみち完璧すぎるが故に俺の出番はない気もするけどな」
「かもな。何処まで行っても“俺”は俺だからな」
「ああ、“俺”は俺だ。何があろうともな。――って訳だから、後始末の方は任せるぞ」
「……は? それってどういう意味」
「何、美味しいところを残しているのは悔しいが、まあてめぇに譲ってやる。ありがたく楽しめや、コラ」
「いや待てよお前、だからそれはどういう意味だと――」
「ま、その代わり後始末の方もそれなりに大変だろうけどな、けけっ」
「っ、――おいっ!!」
◇◇◇
「おいっ!!」
「ふぇ!? れ、レム兄様、どうかしたの?」
「……ぁ、いや。スヘミアか。なんでもない、ちょっと縁起の悪い白昼夢を見てただけだ」
「そ、そうなの? でも結構、顔色悪いよ?」
「大丈夫だ。……大丈夫に決まっている」
「そ、そう? ならいいけど」
気分悪そうに頭を振る男と、それを心配そうに見つめる少女。一方が牢屋の中で、鉄格子が間になければそれなりの空気が二人を包んでいただろう――が。
『レム、コトハが起きた』
ぽっ、と唐突に二人の間に緑の少女が出現した。全く、何の前触れもなく。
少女は少しだけ驚いていたが、男の方は全く驚く様子を見せず、鷹揚に緑の少女の言葉に頷いた。
「そうか。……悪いな、スヘミア。少し外すが、寂しくても大人しく待ってるんだぞ」
「ぇ、あ、レム兄さ――行っちゃった」
『寂しい? 寂しい?』
「寂しくなんてありません! って、わたし子供じゃないんだからっ!!」
『大丈夫、レムに此処に残るようにって命令されたから、ひとりじゃない。寂しくない?』
「あー、うん。そうだね。……ところで、さ」
『?』
「君、誰?」
PCもちゃんと映るようになって書く気満々……と言う事で体調を崩しておりました、この数日間。
これ以降、また毎日更新に戻れると思います。申し訳ありませんでした。




