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Wildfire-25


すっぽんぽん!



「吃驚」


「なっ!?」


「……じゃなかった。――ふっ、お前、いま私に何かしましたか?」




ステイルサイトが驚くのも色んな意味で無理はない。


直撃したにも関わらず、赤い少女は全くの無傷だった。そう、“全身隈なく素肌の何処にもかすり傷一つすら負っていないと目視で分かるほど”に無傷だった。


本人はその事実に気づいていないのか気にしていないのか、セリフが見事に決まった事に嬉しそうに自己陶酔していたりする。



“彼”は一瞥すら赤い少女には向けずに――だからこそ“彼”もまたその事実に気づいていないのだが――一歩、前へと進んだ。




「――良い事を、教えてやる」


「っっ」




ただ平々淡々と詰まらないモノを見る目――どころか此処に存在する事すら見止めていないかの様な瞳に、ステイルサイトは思わずと言ったように一歩、後ろへと下がっていた。だが直後に後ろに下がったことそのモノが恥であるという様に二歩、前へと進み出た。


そんな滑稽な様子を“彼”はやはり情の仄暗い眼で見返して、更に一歩前へと踏み出した。




「フレッシュゾン――じゃなかった。痴じ、間違えた。死た……でもなかったな」


「旦那様、燎原です、“燎原”っ」


「あぁ、そう言えばそんな名前(仮)だったか、あの女。……で、だ。ステイルサイトよぉ、使徒【燎原】には“絶対に”出来ない事が二つだけあるって知ってたか?」


「初耳です」


「誰もお前には言ってない」


「それは失礼いたしました、旦那様」


「で、だ。親切にも俺が懇切丁寧に教えてやろうじゃねぇか」



「何を――くっ!」




正に絶え間なく“彼”へと打ち出される紅球は、やはり全てを“彼女”に斬り落とされてしまい“彼”へと届く事はない。


紅球の嵐の中で、“彼”は自分へ届かないのが当然の様に足を進めていく。一歩近づくごとに攻撃が激しさを増すのだが、それでもなお“彼”は一切を気にしなかった。




「使徒【燎原】の攻撃は神殺しさえ可能な『最強』であるにも関わらず、女神シャトゥルヌーメには効かないんだってよ。――正確には、【燎原】が“燎原”ある限りは【燎原】が女神に攻撃する事はない、だったかな」


「それがっ、何だって言うんだ!! たとえそうだったとしても女神様は既に――」


「なあ、ステイルサイト。お前には前に、“灼耀”が何かってのは教えた事があったよな。覚えてるか?」


「っっ!! ……“灼耀”は、女神様の、欠片?」


「そう。それもあそこに居るのはとびきりの――」




“彼”は振り返って後ろを見て、




「……だからテメェがあの後ろにいるのを狙っても無駄だ。例えテメェが何であれ、テメェが“燎原”である時点であいつを傷つける事は不可能なんだよ」




何事も“見なかった”ようにステイルサイトへと視線を戻して話を続けた。つまり私の慌て損ですか、などと前で呟く“彼女”の雰囲気が何やら危ないモノになっている気がしないでもなかったが、後ろのソレと含めて気にしない事にした。




「と、言う訳だ。だからお前が俺たちの隙をついてあいつの力を取り込もうとしたところで端から無駄だったって事だ。そして――来い≪ユグドラシル≫」




呼びかけに≪ユグドラシル≫が“彼”の元へ――来なかった。


“彼”は後ろにいるはずの緑の少女のへと振り返り……赤い少女の姿が視界に映って、やっぱり直ぐに前を向きなおした。だがそれでも少しだけ見えた緑の少女は、何故か両目をギュッと閉じて、両耳を抱えるようにしてしゃがんで震えていた。




「……おい、≪ユグドラシル≫。俺が使ってやるって言ってるんだ。――さっさと来い」




“彼”の再度の脅しに、緑の少女は縮こまったまま身体をびくりと震わせて――すっ、とその場から消えた。そして“彼”の手の中にいつの間にか存在していた小さな枯れ枝……否、今は『若木』と言った方が的確か、が握られていた。




「ったく、手間掛けさせやがって。……それで、よう、ステイルサイト。皮肉にも能力食いはテメェだけの専売特許じゃないってわけだ。この意味、解るよな?」


「――くっ、来るなぁ!!」




二歩、三歩と世界食い≪ユグドラシル≫を手にしながら近づいてくる“彼”にステイルサイトはありったけの紅球を打ち出すが、結果は同じ。“彼女”が全てを斬り落とす。


ステイルサイト自身も無駄だと言う事を理解はしていたが、だからと言ってこの男を相手に下がるという選択肢だけはなかった。


だから、全力でダメと言うのならば全力以上を絞り出して迫り来るモノを打倒するだけ。




「あぁ――ああああああ!!!!」


「……本当に、その表情まで詰まらねぇ野郎だよ、テメェは」




二人の距離――最早、一歩でも踏み出せば手を伸ばして届く距離。一瞬に数千、もしくはそれ以上迫りくる紅球を“彼女”はただの一つも漏らす事なく斬り捨てていく。




「それじゃあ、最後にもう一つ。昔話を聞かせてやる。動く死体は言いましたとさ、例え何があろうとも――例えどんな状況になろうとも、“あなた”を傷つける事はありません、ってな。――さあ、ステイルサイト。面白いモノを見せてやる。“下がれ”」


「っ、旦那さ――」




全てを切り落としていた“彼女”は“彼”の一言を聞いた瞬間、その場から“強制的に”飛び退いていた。


当然のごとく殺到し、紅球は何千、何万と“彼”へと直撃する。


次々と、次々と。ただの一つでこの世界のものであるならば千度殺してもまだ釣りがくるであろう威力を秘めた紅球の全てが的確に、“彼”へと全て直撃する。



目の前で起きている光景にステイルサイトは笑みを浮かべずにはいられなかった。ただし大いに引き攣った、という条件が付きはするが。




「はっ……はは、ははは…………ははははははははは」




紅球は正しく、一つの例外もなく“彼”へ直撃していた。


一つで身を焼き消して、二つあればその身体全てを灰へ変える、三つもあればヒト一人などその存在魂に至るモノすら残ってはいない。


そうであるはずの紅球を、億にも上るであろうそれらをその身で全て受けているとはどういう意味か。少なくとも、億の紅球を受けてもなお原形を保っている、という事に間違いはないではないか。




「愉しいか? そうか、愉しいかステイルサイト。俺は全く愉しくもねぇ」




終始に渡り、本当に詰まらない声を上げる“彼”の言葉を聞いて。


どっ、と胸に衝撃を受けて、ステイルサイトは笑いを止めて自らの胸を見下ろした。


自分に向けて伸ばされた手、そこに握られているのは若木≪ユグドラシル≫。その先端が胸の中へと埋まっている。



紅球はいつの間にか途切れていた。


≪ユグドラシル≫を突き刺し、怪我一つない姿で“彼”はその眼を紅に輝かせて、ソレを解放させた。




「≪ユグドラシル≫、許可する。――喰らい尽くせ」




と、言う訳で多分終盤戦。つーかいくらなんでももうそろそろ終わらせねば。

んー、でも今回の状況がは結構分かりにくいかもしれないです。書いてて足りないかな?とか思った。



キスケとコトハの一問一答


「心頭滅却しろ!」


「はいっ、師匠! あ、でもその眼隠しは絶対に取らないで下さいよ! 絶対ですからね!?」


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