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Wildfire-24

やばい


「なっ、何をしてるんだお前は!!」


「何を? いつもどおり、褒美をくれてやっただけだが?」




今までで一番――見ていても面白いほどに慌てるステイルサイトに“彼”はしれっとしたように答える。


同意を求めるように視線を送られた“彼女”は「そーですねっ」と底冷えするほどの平坦な声で、顔を伏せたまま答えていた。



くいっ、と足もとからの引っ張る感覚に“彼”は視線を下に向けて、それからすぐに後悔した。


どこぞの他称女神様の生まれ変わりとかの赤い少女がキラキラと瞳を輝かせて見上げて来ていた。しかも“キラキラと瞳を〜”というのが比喩ではなく、本当に輝いているのだから余計に性質が悪い。


視線が合うと、何か頬を染めて両目を瞑りながら唇を突き出してきたので――“彼”はそのまま無視する事にした。と、言うか無視した。



くいっ、とあ足もとからの引っ張る感覚――まさかの二度目、しかも反対側からの感覚に“彼”は一応、念のため、まあ試しに、と一瞥だけ視線をそちらに遣った。そして直ぐに視線を戻した。


何が楽しいのか、緑の少女が赤の少女と同じような事をしていたので当然無視する事にした。




むー、とか左右から獣の唸り声の様なモノが聞こえてきた気がするが気にしない。




「――ああぁぁ……殺す殺す。お前は、貴方だけは絶対に今すぐこの世界から消し炭にして塵も残らず書き消してやる!! “燎原”の焔よ!!!!」




再びステイルサイトの周囲に灯った赤い世界が周囲を侵食していく、事はなかった。


灯った焔の欠片は一か所に集まり、輝きを増していく。ステイルサイトの掌の上で灼熱の紅球となった焔は、ちりちりとステイルサイトの髪すらも僅かに焦がしながらさらに輝きを増やしていく。




「――掻き消えろっ!!!!」




絶声と共にステイルサイトが手を突き出す。紅球は一瞬だけ溜めを作るようにその場に留まって、……――弾け飛んだ。



弾け飛んでから“彼”へと迫るまで一瞬もなかったその紅球を、“彼”はやはり避けようともしなかった。


ただ紅球がはじけ飛ぶ寸前、その場で一言、




「守れ」




と吐き捨てるだけ。


一瞬もなく迫り来た紅球を、それよりも早く“彼女”の姿が“彼”との間に割り込んで、その腕が一閃された。漆黒の闇を纏っていた腕はただそれだけで、実にあっけなく紅球を真っ二つに両断した。


それでもまだ足りないという様に半分になった紅球をを漆黒が塗り潰し喰らって、それでお終い。ステイルサイトの一撃はただそれだけで何事もなかったように消されていた。


“彼”は一歩たりとも動いておらず、当然無傷のままでその場に佇む。




「どうしてだっ! どうして貴女が邪魔をする!?」




ヒステリックに叫ぶステイルサイトの声が響く。その間もステイルサイトによって作りだされた紅球は幾つも“彼”へと向けて打ち出されていたのだが、それのどれもが“彼”に当たる事はない。目の前に立つ“彼女”がその全てを斬り捨てていた。


“彼女”は淡々と、けれど少しだけ声を荒げて八つ当たり気味にステイルサイトへと言葉を返す。




「私が旦那様をお守りする事に、この方が私の旦那様であるという事以外どのような理由が必要でありましょうか? ……一発くらい打ち洩らしたい気分ですけどっ」


「俺は別にいいぞ。打ち洩らしたらしたで、実に愉快な事になるだけだからな」


「……そう言う訳には、参りません」


「あ、そ」




決してステイルサイトはただ愚直に攻撃をしていたわけではない。“彼女”が“彼”に割って入った後は急緩をつけ、四方八方から狙いを定めて紅球を打ち出しているのだ。


それでも――当たらない。どれだけ打ち出しても、“彼女”はその片腕のみで全ての紅球を寸分の狂いもなく斬り落としていた。




「くそっ、くそっ、くそっ!!」




半分以上冷静さを失っていたステイルサイトも流石に気づく。このままでは時間の無駄で、いくら続けたところで“彼”に紅球を当てる事は叶わず、しかも“彼女”と根競べでもしようものなら先に力尽きるのは間違いなくこちらの方だ、と。


そこで、視界の端に収めた“あるモノ”の姿に、ステイルサイトは口元を歪めた。“あるモノ”などとは言っても、この白いだけの広大な空間には“彼”と“彼女”とステイルサイト自身と、後の残りは語る必要もなく。




「――これならどうするかな、心優しい元・ご主人さま!!!!」




その意図に恐らく最初に気づいたのは当然と言うべきか、“彼女”の方であり。




「シャト、くっ!」




複数の紅球が赤い少女へと向けて打ち出される。


赤い少女は何の反応も示さない。それも当然、先ほどからずっと両目を瞑って、顔を上げた体勢でじっとしていたのだから。迫りくる危険に気づいた様子もない。



駆け寄ろうとした瞬間、狙い澄まして“彼”に殺到してきた紅球を“彼女”は全て斬り落とす。


だがそれでは遅かった。全ては瞬きする間もない一瞬の事で、流石の“彼女”も間に合わない。“彼女”が駆け寄るより先、“燎原”の力を圧縮して詰め込んだ紅球は、赤い少女へと直撃した。




「ははっ、見捨てるか。やっぱり貴方もその程度の詰まらない男だって事だよっ、元・ご主人さま! それとも何の反応もできなかったりしたのかなっ!?」




声高らかに、実に愉快そうに叫ぶステイルサイトを後目に“彼”は実に詰まらなそうに、一度だけ息を漏らした。




「――はんっ、愉快だよなぁ、ステイルサイトよぉ?」




と、言う訳でシャトゥに直撃♪



キスケとコトハの一問一答


「死ぬと思うなら避けろ。簡単な事だろう?」


「無理です無茶です無茶苦茶です、師匠! ……そそ、それが出来れば苦労はしてませんってば、助けて下さいよぉ!?」


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