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Wildfire-22


水を差し上げる。


漆黒の黒塊――魔晶石と呼ばるモノ。小指ほどの大きさがあれば国一つを滅ぼしてなお余りある、【厄災】を内包せし破壊の権化。


白砂の白塊――“聖遺物”≪白骸≫。一番多くその存在が確認され、“聖遺物”のなれの果てとも言われている、結晶一つで地形を変えるほどの威力を秘めたこの世ならざる輝きを放つ【力】の結晶。



一つあればほとんどの望みが事足りつであろう結晶を、二つも体内に喰らいステイルサイトは浅く息を吐いた。




「――さあ、お待たせしたね。これが正真正銘、貴女に対する切り札だ。魔晶石、“燎原”の力、“聖遺物”――≪ユグドラシル≫の力を使い果たしたのは少し想定外だったけど、この程度なら可愛いモノだよ。さあ、どこからでも来てくれて構わない」


「では――」




今までと同じように“彼女”の姿が僅かに霞み、そして……その残像はそのまま掻き消えた。




「――この程度、かな?」




瞬きの後、ステイルサイトが笑みを漏らす。先ほどまでは見えもしなかった“彼女”の拳を炎の腕で軽々と受け止めていた。


すかさずハイキックが頭部を狙っていたが、それも軽々と受け流されて不発に終わる。




「軽いね。それとも貴女の攻撃は元々こんなモノだったりしたのかな」




肉の焦げたにおいが周囲に漂い出す。


ステイルサイトに掴まれた自らの手が煙を上げて爛れていく様子に“彼女”は若干顔をしかめながら、詰まらないモノを見るようなガラスの瞳でステイルサイトの事を見返した。




「……一つ足りと自らの力を使わぬ輩がモノを言います」


「この力を扱えること自体が僕の力さ。それに、誰もが貴女のように化け物染みた力をその身に秘めてるってわけじゃない」


「確かにその通りですね。誰もが――旦那様のようではない」


「……、は?」




いきなり何を言い出すのかとステイルサイトが呆けた表情を浮かべる事少し。“彼女”は掴まれていた手を丁重に振り払うと軽く後ろへと飛んだ。




「か、母様。おてては大丈夫ですか?」


「……問題ありません」



肉は爛れ落ち、白いモノも見え始めている拳を、心配そうに見てくる赤い少女の視線から隠すようにもう片手で包み込む。


そして次の瞬間、――“彼女”は“何事もなかった”かのように無傷の両手を晒して佇んでいた。




「うむ? 手が治ってます?」



「へぇ、見事な復元力だね。でも納得したよ、貴女が先ほどから“無傷”だったのはそう言うタネがあったからなんだね」


「……しかしながら痛いモノは痛いと、最初に申し上げていたはずですが。その程度の事もお忘れか?」


「ああ、そう言えばそんな事も……言っていたね。貴女には色々と驚く事があり過ぎて、それに何より貴女が魅力的すぎて余り覚えてないや」


「それはそれは――反吐が出ますね?」


「そろそろ優しい言葉の一つでも吐いてくれると、こっちとしては凄く嬉しんだけどなぁ」


「それは僥倖。あなたが一度死んでまっさらな状態で生まれ変われば考慮して差し上げましょう」


「ふふっ、でもそんな言葉を吐く貴女もまた、魅力的だ」


「……怖気の奔る暴言ですね」



本気で寒そうに肩を抱く“彼女”の姿を見てステイルサイトは軽く肩を竦めながら、それでも薄く笑っていた。



「でも、少しばかり強くなりすぎたかな? 貴女の動きが止まって見えたよ」


「何、心配は要りません。その眼球を抉り出せば見えなくもなりましょう」


「今の僕相手にそれが出来るかな?」


「苦も無く」


「ははっ、両腕の次は目かっ! 貴女に付けられた痕であればそれさえも愛おしい。さあ、どんな事をして愉しませてくれるのか、魅せておく――」









≪Reappear――拒絶しろ≫



◆◆◆



「――れ、?」



高笑いをしながら、そのままの状態で固まるステイルサイト。


それは何故か。気がつくと目の前に立っていたはずの“彼女”の姿が何処にもなくなっているから。――否、それどころか周りの風景すらも何もない。白く、地平線の彼方すら何もない全くの無の空間が広がっているだけ。足元に在る地面すらも白で、それが何で出来ているのかさえ定かではない。


何が起きたかもわからず、だがある種の予感がステイルサイトを振り向かせ――何よりも折角の高揚に水を差された事に苛立ちを覚えた。




「よう、気分はどうだ?」




一瞬、目に映った男の姿に違和感を覚えたがそれも些細な事だった。“髪の色が変わって”いようが“瞳の色が変わって”いようが、それがなんだと言うのか。


今のステイルサイトの気分を表すとしたら一つしかない。折角の“彼女”とのダンス、それもいよいよクライマックスかと盛り上がって来た時に“コレ”ではそう言うほかない。


何より、相手が相手でもあるのだから。




「最悪だよ」


「そりゃ――ざまあみろ」


「……≪ユグドラシル≫が喰らったはず、とか、どうしてお前が此処にいるのかなんて聞かないよ。どうせ直ぐに死ぬ身だ」


「ああ、その通りだな。テメェには死んでも理解できないだろうし、そんな高尚さをテメェ如きに求める気は更々ねぇよ」


「あぁ、一瞬でも早くその耳障りな声を止めて、早く“彼女”の元に帰ろう。じゃないと頭が腐りそうだ」


「ウジが湧き切った頭で今更何言ってやがるんだ、テメェはよ?」


「総てを滅ぼし尽くす終焉の業火、全てを塗り替えるモノよ――Wildfire」




ステイルサイトの全身から“赤”が噴き出す。純白だった世界を赤く、赤く、全てを赤く染め上げていく。




「……さあ一瞬でも早く、あの男を――魂さえも焼き殺せ」



と、言う訳でメイドさんのターンも終了? でそろそろ終盤っぽい。つーか書いてる方でいい加減シリアスは飽きてきた。


それはそれとして、本日は遅れて済みませんでした、と朝見てる方には謝っておきます。油断してたらもうこんな時間でした(汗)



キスケとコトハの一問一答


「夢のような時間がずっと続けばいい…なんつーのは、誰もが思っちまうものなのかねぇ」


「……師匠?」


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