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Deedα. スィーカット-8

一方その頃、とある地上でのお話。

「――む」


「スィー?」




とある場所で、その悪魔は空を見上げた。その様子を傍らにいた少女が不思議そうに眺めてくる。


ちなみにもう一人、少し離れた場所にも別の少女の姿があったのだが、こちらは『ちょうちょ〜』と何かを追いかける事に夢中になっているようでこちらの様子に気づいた気配はない。




「どうかしたの、スィー?」


「今上空から……いや、やはり何でもない。気にするな」


「そんな途中で言うのを止められると余計に気になるんですけど?」


「気にするな」


「……まあ、スィーがそう言うなら、気にしない事にしますけどっ」


「何を怒っている?」


「怒ってないっ! ……そりゃ、私はスィーよりも弱いけど、そんなに私のコト信用できないかな、とか思っただけですから!」


「突然何を言うかと思えば。汝の事はこれ以上ない程に信用しているぞ」


「そ、そう?」


「そうだとも。何よりミミルッポが懐いている。その主らの交友、我が横から口出す事などない」


「……そー言うコト、言ってるんじゃないんですけど。まあ、それもスィーらしいって言えばスィーらしいよね」


「なあ、ライカーレよ」


「うん? どうかした? それともさっき言い掛けてたの、やっぱり話す気になった?」


「いや、その事はこれ以上気にするな。詮無き事だ」


「あ、そう。……それで、いったい何なの、スィー」


「それだ」


「それ?」


「うむ。ずっと気になっていたのだが、その“スィー”とは何の事だ?」


「え? 何って、スィーの……スィーカットの事に決まってるでしょ。ミミルッポだってそう呼んでるし、今更何言ってるの?」


「……むぅ。かつて真名は神聖にして真正なるものとされ、真名を教えるのは契りを交わし合ったモノ達のみであったのだが」


「って、スィー!!!!」


「む? どうかしたか、ライカーレ」


「どうかしたか、ライカーレ……じゃないって! いきなり何変な事言ってるのよっ!?」


「変な事? 変な事とは何の事だ?」


「そっ、それはその……ち、契りとか、いきなり言われると照れるじゃないの」


「……成程。まだ生娘の汝にはこの手の話はまだ早計であったか。許せよ、ライ――」




目にも止まらぬ速さで振られた張り手を、その悪魔は何の苦もなく受け止めた。




「いきなり何を、」




続けて飛んできたもう一方の手も、同じ要領で掴み取る。


両腕を掴んでいるので、これでもう次が来ることはない。




「デリカシーなさすぎよっ、この馬鹿! 大馬鹿!! スィーの……朴念仁!!!!」


「む、朴念仁だと? 我はそこまで情の移ろいに鈍感ではないぞ」


「どの口がその言葉を吐くのよっ!?」


「大丈夫だ、言葉にせずとも汝の気持はちゃんと理解している」


「わわ、分かってるって、なな何をよ……?」


「何を動揺しているのだ、ライカーレ?」


「どっ、動揺なんてしてません!」


「そうか、我の勘違いか。ならば良いのだが……」


「そっ、そんな事よりも、私の気持ちを理解してるって、な……何の事よ?」


「……ああ、その事か。ライカーレ、汝がミミルッポの事を大切に想ってくれている事はちゃんと理解している」


「――」


「ミミルッポに代わり、我が礼を述べておこう」


「……ぃぃ」


「む? 今何と言った、ライカーレ?」


「――良い、って言ったのよ、バカッ、バカバカバカ……この悪魔!!!!」


「……いや、確かに我は悪魔と呼ばれている存在ではあるが、それを今更どうしたというのだ?」


「〜〜っ、こういう時に限って揚げ足取らないでよっ!?」


「揚げ足を取った気はないぞ。それにライカーレよ、何故怒っているのだ?」


「――知らないわよ、スィーカットなんて……この馬鹿ー!!!!」




やけっぱちの様な蹴りを紙一重で避けて、捕らえていた両手を離した時にはもう遅かった。


その姿は脱兎のごとく、走り去ってしまっていた。


「……ふむ」


少女が去っていく姿をその場で見送りながら、思案する。


ああまで顔を赤くして何をそれほど怒っていたのか、とその悪魔は僅かに沈黙した。





◇◇◇





「すぃー?」


「うむ、ミミルッポか。ちょうちょはもう良いのか?」


「すぃー、ライねぇとけんかしたの?」


「いや、喧嘩はしていないのだが、ライカーレが突然怒り出したのだ。理由は我にもよく分からぬ」


「すぃーにもわからないの?」


「うむ。どうしたものか……」


「ん〜、わたしはすぃーがライねぇにあやまるのがいいとおもうー」


「何故だ? やはり我が何か拙い事を言っていたのか?」


「しらな〜い」


「ふむ、それもそうか。ミミルッポは我らの会話を聞いていたわけでもなし。だがミミルッポがそう言うのであれば、ライカーレには謝っておく事にしよう」


「んー、すぃーいいこ、いいこ」


「そう褒めるな。照れるではないか」


「てれるの?」


「少しな」


「すぃーのてれやさんっ」


「うむ。こう見えて我は照れ屋なのだ」


「……んぅ〜」


「どうした、ミミルッポ?」


「うん、れむさまたち、みつからないね?」


「……ああ、そう言えば我々は置き手紙一つ残して消えたあの者達を探していたのであったな。すっかり忘れていたぞ」


「すぃー、め、なの」


「うむ、反省しよう。だがミミルッポ、恐らくだが奴らの事はもう探す必要はないはずだ」


「そーなの?」


「うむ。先ほど空の彼方より驚嘆すべき力を感じた。恐らくあの銀髪の娘のものであろう。なればあの男も同様に、その傍らに居るはずだ」


「ふへー、そうなんだ」


「うむ。と言う訳だから、急いで何かをする必要はないぞ、ミミルッポ。存分に遊び、楽しむとよい」


「んー……もう、かえろっか、すぃー」


「そうか。ミミルッポがそう言うのであれば、そうするとしよう。では早速――」


「すぃー、そのまえにライねぇをさがさなきゃ」


「……む? そう言えば、どこかへ行ったままであったな。どこまで走って行ったのだ、ライカーレは?」


「きっと、とおくまでだとおもうの」


「……ふぅ、厄介な事だ。やれやれ」


やれやれ……なんてのはこっちの言葉だとツッコミを入れたくなる、と思わなくもない今日この頃。

基本スペック、メイドさんとスィーカットは同じくらいの設定なので、スィーカットが館にいたなら『燎原の賢者』に襲われる事もなかったのになぁ……と、言う事でこいつら一体何してるんだ、という感じです。


レム君探索隊、その一?

その二はない。



キスケとコトハの一問一答


「よし、刀の扱い方を教えてやろう!」


「怖いから要らないです、師匠っ!」


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