DeedΣ. ??? -最凶と最狂と-
シリアスモード、皆に伝染中。
「――冥了、だと?」
――ええ、【大厄災】キスケ、あなたの成果には概ね満足しています、これからも尽力を惜しまぬよう
「……何を、言ってやがる、テメェ?」
――何をとは異な事を言う、私はただこれからも私の為に、如いてはあのお方の為に尽くしなさいと言っているに過ぎません
「ざけるなっ!!!! 誰が、誰の為に尽くすだと? ふざけた事ぬかすのも大概にしやがれ、冥りょ――がぁぁ!!??」
「きゃあああああ!?!?」
「キスケ兄!? コトハちゃん!!」
キスケと、ついでとばかりに膝枕をしていたコトハの身体が吹き飛ばされる。
ただ無造作に地の上をごろごろと転がって、それから数秒の後に二人の身体はようやく動きを止めた。
――働きは認めましょう、ですがあなた如き【大厄災】に名を呼ぶ許しを与えた覚えはありません、一度は許しもしましょうが、身を弁えなさい
「……“冥了”、あなた」
――珍しい事もあるものですね、【点睛】、『最凶』にして『最狂』たる貴女がこの程度で気を乱すなど
「悪いけどね、私はあなたの言う“点睛”じゃなくて、“点睛の魔女”スヘミアだよ」
――成程、器に絆されたと言う訳ですか、それは情けない
「情けなくなんか、あるもんか」
――いいえ、情けない、あの蒙昧無知な女神の使徒ならまだいざ知らず、貴女はそれでもあのお方の使徒か【点睛】
「“冥了”、君はヒトを舐め過ぎだね」
――あの男と同じ事を口にする
「ふふん、あの男ってのが誰かは知らないけど、君にそれだけ嫌われてるんだ。それは光栄だね。それと――私を甘く見過ぎだよ」
――……そうですか、そう言えば【点睛】、貴女もあの男に“壊されて”いたのでしたね、所詮は面汚しの欠陥品と言う訳ですか
「“冥了”――サジリカお姉ちゃんや、他にもいっぱいの子たちを殺した罪、償ってもらうよ。――点睛!」
――私を引き摺り出す心算ですか【点睛】、だがそのような事をされずとも……
霧が集う。雫が集う。
何処からともなく集まった蒸気が宙で一つのヒトの形をとり――手と足と、それから輪郭だけでも均衡が取れていると分かる身体、靡く髪を再現していく。
形成された頭部から、水晶のように澄んで無情な瞳が網膜の下からこちらを見下ろして、
「っ!?」
ぱっ、と周囲に“緑色”の光がはじけ飛んだ。
『こちらから出ていこう、【点睛】。たとえ一度壊れた欠陥品だとしても同じ使徒として、それが礼儀と言うモノ……その程度の風情は学んでいる』
其処にいたのは一人の少女。宙に浮いていたのは美しいお人形。
男神チートクライが眷属の証たる澄んだ緑色の髪と瞳を持つ、決して消えぬ微笑みを携えた慈悲深き少女。それは、ヒトであった頃は他の名前で呼ばれていたであろう――使徒【冥了】
その少女はただの器には違いない。ただ憐れな、【冥了】に侵され、喰われ、消えていった単なる抜け殻。
理解はしていた。だが、けれど、偶然か或いは必然か。それは同時に、皮肉にも彼女が誰よりも知っている相手でもあった。
「……サジリ――いや、そんなことあるもんか」
『? あぁ、これは、私が今まで“食べた”中で一番相性の良かった身体です。本来の身体はあの男に壊されてしまいましたから。他意はありませんよ――スヘミアちゃん? ……おっと』
「っ――“冥了”!!!!」
『ああ、これは怖い。昔はあんなにもお姉ちゃんと慕ってくれていたではありませんか。……おっと、それはこの器の少女の話でしたね?』
「“冥了”、きっさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『――スヘミアちゃん、お姉ちゃんに、酷い事するの?』
「っ!!」
『ふむ、なるほど。これは中々、楽しいかもしれませんね』
「……あんただけはっ、あんただけは――塵も残さず、欠片も許さず、この世界にいた意味さえも粉々に打ち砕いてやるっ、“冥了”!!」
『――何とも心地よい狂喜か。それでこその【点睛】。ようやく、少しだけらしくなってきましたか』
「“点睛の眼”――奴を引き摺りこめ」
――はい、マイマスター・スヘミア、貴女の願い請う様に。覚悟は良い、【冥了】?
『それであのお方の使徒たる【冥了】を壊せると思っているのなら、やってみると良い、【点睛】』
「「――望むところだよ、【冥了】」」
と、言う訳で気がつくと何故か出現していた使徒【冥了】様。自然と話の流れもシリアスな方向になっていくはず!
……ここでいきなりシャトゥが舞い戻ってきたりしなければ良いなぁ、と思ったり。
出来るだけ早く終わらせるつもりではありますが、まだ続きます、シリアス・モード。ご了承下さいませ。
キスケとコトハの一問一答
「薬は先ず自分の舌で確かめてみるのが一番、と言う事でコレだっ!」
「はい師匠! ……苦いです、それと舌がピリピリするよぅ」




