ど-297. 魂の言葉
叫べ
「さあ、まだ見ぬ俺のお嬢さん、カモーン!!」
「……それで現れるようでしたら誰も苦労はされないのでは御座いませんか、旦那様?」
「ふっ、それで諦めるのが凡人の浅はかさだ。そしてそこで俺の素敵さが輝いてくるってわけだ」
「輝かなくても結構に御座います。むしろ旦那様は輝かれない方が世界の為かと」
「確かにその通りではあるかな。輝き過ぎる俺は周りの奴等を焼いてしまいかねないかなら。そしてそれは俺の本位じゃない」
「そうなのですか?」
「そうなんだよ。別に俺だって好き好んで不幸になる奴を作りたいわけじゃない。たとえそれが野郎であったとしてもな」
「そうだったのですか」
「って、お前は一体俺をどんな目で見てたんだよ?」
「お嬢様方を見れば傍目も振らずに飛んで行かれる」
「ああ、その通りだ」
「そして誰に対しても必要以上に優しく接しようとなさる」
「当然だ。何と言っても、俺の愛は世界を包んでいるからな」
「女性限定、では御座いますがね」
「それも当然の事だ」
「結論といたしましては、女誑しのどうしようもないクズな旦那様が、旦那様では御座いませんでしょうか?」
「ふふっ、最後だけが外れだな。流石のお前も完全には俺の事をは斬り切れていなかったか。まあそれも仕方のない事ではあるけどな」
「旦那様、絶好調ですね?」
「俺は常に絶好調だぜ。つまりこれが普通の状態と言ってもいい」
「では驚くべき事に更に上があるのですか?」
「ああ。確かにあるな。そう……禁断の、ハイテンションモードがな」
「そうですか。では次の街に参りましょうか、旦那様」
「って、あれ? ここって、俺が語るんじゃないのか? と言うより聞きたくはないのか?」
「次の街までどれほどの時間がかかるでしょうかね、旦那様?」
「ぁ、ああ。ここからだと人里まで全速力で走って四日、って所じゃないか」
「一日の距離ですね」
「いや、だから全力で走って四日……」
「旦那様、頑張りましょう。今こそ禁断のハイテンションモードを使うときなのです」
「いや。明らかに違うだろ、それは」
「……出し惜しみですか」
「そう言う訳では……」
「では参りましょう。何、一日……いえ、半日あれば到達可能な距離では御座いませんか」
「ゃ、初めから言ってるけど、全力で四日だと」
「仕方のない、恥ずかしがり屋な旦那様でございますね。そんなに手を引っ張っていただきたいのであれば、直接そう仰ってくださればよろしいものを」
「それも別に俺は言ってない……」
「では早速参りましょうか、旦那様?」
「ぇ、ってちょい待――」
魂の絶叫。
旦那様の(余計な)一言
「俺の愛は世界を救った!」




