ど-292. 待てと言われて待つ奴を見てみたい
待てと言われて待ってたら……どうなるんだろう?
「これで最後です!」
「それはこっちの科白だ」
「もうしつこいのです、レム。そしてしつこいレムは世界の害悪です!」
「そんな事はない。俺ほど世界に取って有益な存在はいないと断言出来……今はそうだと断言できるぞっ!!」
「うむ、しつこくないレムならそうなのです」
「俺がしつこいんじゃない。逃げるシャトゥが悪いんだ」
「私は悪くないのです。むしろ私は絶対正義とも言えるので、この場合はレムが悪なのです?」
「あ、なるほど確かにそれはあるかもな。と、言う事は俺が悪いのか、何だそうなのかー」
「そうなのです。きっと全部レムが悪いのです」
「――じゃ、ないだろうがっ!!」
「……少なくとも私は全面的に旦那様が、そもそも旦那様がいけないのです、との様に判断しておりますが」
「母様は常に私の味方なのです!」
「って、おい俺を見捨てる気かっ!?」
「――もっとも、旦那様が元より諸悪の根源である事と今シャトゥを捕まえる事とは一切関わり合いは御座いませんが。……それで、シャトゥ。そろそろ止まりなさい?」
「ひぅ!? か、母様何か怒っていますか?」
「ああ。あいつ最近、運が悪かったり連続して屈辱的な目に遭ってたりでかなり機嫌悪いから、素直に言う事を聞いておいた方が身のためだぞ?」
「母様、最近運が悪いのです?」
「ああ。そうなんだよ。一人で出歩くとさ、何もない所で転んで顔を真っ黒にするのは当たり前、突然槍やら魔法やらが降ってきたり、どこからか飛んできた正体不明な物体に埋もれたりと、ろくな目に当てないな、うん」
「そうですか、ついにレムがやってしまわれたのですね」
「やったって、俺が何を?」
「犯人は既に分かっています。レムが母様に呪いを掛けたのですね。レム、断じて許すまじ!」
「――シャトゥ、そこで少しの間、待っていなさい?」
「……あの、レムー?」
「なんだ、シャトゥ」
「母様、何やら怒っていますか?」
「ああ、怒ってるな、すっごく怒ってるな。こんな事態じゃなかったら俺もお近づきになりたくないぞ」
「……旦那様、絶対に私を離さないで下さいませ」
「ぁ、ああ。分かってるって。もし俺が離れたりなんかしたら、多分お前、ろくに歩く事もできなくなるだろうからな」
「お、おお? レムと母様が何やらラヴな雰囲気です。……羨ましくなんて、ないのです」
「そう言う訳だからシャトゥ、逃げるな! ちゃん其処で待ってないと、お前の“母様”からのお仕置きが後で酷いぞー」
「……うむ、何故かお胸がむかむかするのです。きっとレムの所為です、そうに違いありません」
「ん? シャトゥ、何て言ってるのか、ここからじゃよく聞こえな……」
「意地でも今のレムには捕まらないのです!」
「って、言ってる傍から――こら待てシャトゥ!!」
「待ちなさいっ、シャトゥ!!!!」
「待てと言われて待つシャトゥルヌーメはいな……いるかもしれないですけど、今の私は待たないのですっ!」
鬼ごっこは続く。
旦那様の(余計な)一言
「待てと言われて待つ俺はいない!」




