29. どれいと加勢
〜前回までのあらすじ〜
全世界の女の敵であるレム君は、助けに来たはずの戦闘狂のお姫様、リリアンから何故か決闘の勝負を申し込まれて……。襲いかかるお姫様、逃げ惑う我らが主人公。
リリアン・・・攫われていたはずのお姫様。でも敵国のはずのお姫様と普通に(?)お茶を飲んでいただけだったりした。世界で五番目くらいには強いヒトでもある。
ラライ・・・灼眼の剣士の二つ名をもつ、ボケ娘。一応は世界で四番目ほどには強いっぽい
レアリア&アル・・・レム君の新しい奴隷。今のところ“愛の”と言う修飾はついてこないが、目下レム君が奮闘中。
その他・・・アルカッタ救出隊三人娘(セミリファ、リン、マーサ)&敵国のお姫様(ネルファと言う名前らしい)
「――させません」
「貴女は……」
「レム様を害そうとするモノは何人たりとも、私が許しませんっ」
「……お? 俺まだ無事だ、って、おぉ、ラライかっ、助かった!!」
「たた、たとえレム様がロリコンだったとしてもですぅ!!」
「……おぅ、ラライ。だからそれは勘違いだって言ってるだろ」
「……ラライ、そう。貴女が世界四位、灼眼の剣士ラライと言う訳ね」
「レム様に手を掛けるというのなら、容赦はしません」
「正直この機会を、レムを逃すのは惜しいところではありますが、前々から一度は貴女と戦ってみたいと思ってましたの。相手にとって不足はないですわ」
「レム様は私が守ります!!」
「おお、ラライっ。お前って奴は……」
「あ、でも弄るまでならオッケーです」
「弄る?」
「はい、弄るまでなら、です」
「……ふぅん」
「おぅ、ラライ。お前って奴は……」
「……弄るまでなら、問題ないのよね?」
「はい。弄るまでなら、全然問題無しです」
「ちょっと、詳しく聞かせてもらいましょうか。弄るって、どこからどこまでがオッケーなのかしら?」
「弄ると言ったらアレですよ。ほら、……嫌よ嫌よも好きの内?」
「嫌よ嫌よも……なるほど。奥が深いですわね」
「えぇ! そうなんですよ。レム様を弄ると言ってもですね、色々とありまして、お姉様から武勇伝なんかをいっぱい教わってるので、……宜しければお教えしましょうか?」
「ぜひ」
「いやおいちょっと待てお前ら!!」
「何ですかレム様、今ちょっと盛り上がってきたところなんですよぉ〜」
「何、レム。やっぱりあなたが相手をして下さるの?」
「あ、いやリリアン。そう言う訳じゃなくてだな……つかソコのボケ娘っ! お前は俺を助けに入ったんじゃないのか、急に何を話し出してやがるっ!?」
「何って、お姉様の勇士をこの方にお教えしようかと……」
「要らんわっ!! つかリリアンにまであいつの悪影響を広めるな、バカ!!」
「……むー」
「少し思いましたけど、その“お姉様”や“あいつ”というのはどちらの事ですの?」
「お姉様と言えばお姉様ですよ?」
「お姉様……もしかして、いつもレムの傍にいるあのお方の事かしら。侍女服をいつも着ている、あの銀髪の……」
「あ、きっとそれですねっ」
「そう。……つまり、レムはこれ以上私が強くなるのを恐れているという事ですのね」
「な、ん、でっ! そんな結論になるんだよ、おいっ!?」
「何故って、それはレムが一番分かっているのではなくて? 悪影響などと言って私が強くなれるかもしれない手がかりを邪魔して……」
「いや! それは全くの勘違いだからっ。俺はリリアンにはスれてない、そのままでいて欲しいのっ! ……単なる戦闘馬鹿の方が色々と扱いやすかったりするし」
「……ねえ、えっと、リリアンさん?」
「何ですの、灼眼の剣士ラライ。それと名乗り上げがまだでしたわね。私、リリアン・アルカッタと申します。以後お見知り置きを」
「あ、これはご丁寧にどうもです。それと、私の事はラライで結構ですよ」
「そう、分かりましたわ、ラライ。なら私の事もリリアンで結構ですわ。“さん”は不要です」
「そうですか? ではリリアンと呼ばせてもらいますね」
「許しますわ」
「それにしてもリリアン・アルカッタって、あの大国アルカッタとお揃いの名前ですねっ?」
「それ程でもありませんわ」
「それにリリアン・アルカッタと言えば、W.R.第五位、“掌握の鬼神”と同じ名前なんですね。ますます珍しいです」
「私本人ですっ……先ほどから、ワザと言ってません?」
「ワザとって、何の事ですか?」
「いえ、故意がないのならば、それで宜しいのですが」
「???」
「それで、なんですの、ラライ」
「リリアンっ、一緒にレム様を懲らしめましょう!!」
「待ちやがれボケ子、さっきと言ってる事が逆転してるぞ!?」
「……あんな酷い事を言うレム様なんて、一度酷い目に遭っちゃ――遭わせちゃえばいいんです。ふふっ、ねえ灼眼、あなたも当然、全面的に協力してくれますよね? ええ、そう言ってもらえると力強いです」
「ラライ? 一体誰と話して……」
「リリアンっ、そう言う訳なので、一緒にレム様を懲らしめましょう!」
「ぁ、うん。私はそれで構わない、と言いますかそれが最初の目的だから全然構いませんわ。でも宜しいのかしら?」
「何がですか」
「いえ、先ほどレムを害するのは許さないって言ってたじゃ……」
「弄るのはオッケーなんです」
「……弄るのは」
「はい。弄るのは、全然、全く、これっぽっちも、問題ないんです!! ……うん、ちょっとくらい命の危険がありそうだとしても、全然問題ないよね、灼眼?」
「成程。弄るのは全然オッケーですのね。……奥が深いわ」
「全然深くないからっ、つか……あのー、ラライさん? さっきから聞いてると、もしかしなくてもボケ娘とかボケ子とか言った事、ちょっと怒ってます? いや御免なさい、全然悪気はないんです本当ですよ? ちょっとだけ勢いに乗って見たって言うか、……ちょ、自分調子に乗って済みませんでしたっ!!」
「いいえ、レム様。そんな事はどうでもいいんですよ? だから謝っていただかなくても良いんです」
「な、なら――」
「リリアン」
「――なにかしら?」
「九割までなら大丈夫なはずです」
「何が!? 何が九割なんですか、ラライさんっ!?」
「リリアン、行きますよ――」
「っ、私も“灼眼の剣士”に遅れはとりませんわっ!!」
「いや頼むから遅れでも何でもいいから取――ぅおおお!?!?!? あぶ、危ねぇぇぇぇぇ。ラライっ、テメェ今本気で斬りかかって来やがったなっ!?」
「集え、獏炎。弾け、炎熱――“斬り刻め”!」
「っ、チャンス。――レム、覚悟!!」
「うひょ!?」
「「ちっ、逃がしたか」」
「死ぬっ、絶対死ぬって!! こんなの繰り返してたら俺、絶対死ぬってば!!」
「レム様なら大丈夫ですよ……きっと?」
「レムなら大丈夫ですわ……まぁ、多分?」
「二人とも自信がないなら今すぐ止めようねお願いだからっ!?」
◇◇◇
「……(じー)」
「……レムの奴。何だか大変そうね」
「……(じー)」
「え、助けには入らないのかって? いや無理無理、だって世界第四位と第五位よ。私なんかが間に入っても直ぐにやられちゃうのが関の山だって。私、無駄な事はしたくないのよ」
「……(じー)」
「まあ、一応ご主人さまではあるけど? でもそう言えばレムが居なくなれば、私の奴隷としての主人がいなくなるって事だから、都合がいいと言えば都合がいいのよね」
「……(じー)」
「って、アル。一応は、まだ冗談のつもりだからそんな目で見ないで頂戴。一応は冗談って事で。ね?」
「……(ぷい)」
「あらら、機嫌を損ねちゃったか。まっ、何にしてもあんな化け物の間に入るなんて私には無理よね……と、言うよりもまだ死んでないレムには関心すらするわね」
「……(ちらっ)」
「やっぱりアルもレムの事が気になる?」
「……(ぷい)」
「またそっぽ向かれちゃったか。……でもこれって一体どういう事なのか。まさか、イチが私に嘘を言ってた? でもあの子、確かに“アルカッタから命を狙われてる”って……――そうだ、王女様に聞けば」
「いけー、お姉様ぁぁぁ、そんなクズ男なんて一秒でも早くこの世から抹消してくださいっ!!!!」
「……後にしましょう」
本日は少し遅れました。
と、言うよりも何故か気がつくとリリアンだけじゃなくてラライが加勢する事になってたりするし。いや、冗談じゃなくて、このボケな流れでレムのヤツ死ぬだろ、って思ったり思わなかったり。
今のところ、メイドさんは登場の予定なし。
そのほかの方々は追々、出るかもしれないという事で。