ど-290. いた
シャトゥルヌーメ、発見。ついでにそのお供(?)のファイとルルーシア(灼耀の飛竜)も一緒。
「見つけた!!」
「見つかった!?」
「見つかったって、やっぱり逃げてたのか。世界中を100回探しても見つからないからおかしいと、」
「いえ、見つけたといわれたのでその場のノリで見つかったと言ってみただけです」
「……あ、そう。まあそれは良い。兎に角、やっと見つけたぞ」
「遂に見つかってしまいましたか」
「やっぱり俺たちの事を避けてただろ、シャトゥ」
「そんな事はないのです。諸悪の根源たるレムを打ち取り我が物にする事を考えたり実行する事はあっても、レムから逃げるなんて考えは私が私でなくなる以前から一度たりとも考えた事はありません。むしろクァモ〜ン? なくらいです」
「何故かその言い方がムカつくな、おい」
「レム、心は広く大きく持つのが吉です。そして出来れば私の入る隙間を用意しておいてくださいませ」
「大丈夫だ、ちゃんとシャトゥの居場所は俺の傍に取っておいてあげているよ?」
「……うむ? レム、何か変ではないですか?」
「変? 俺のどこが変だって言うのかな、シャトゥは?」
「何処と言いましょうか、レムにしては爽やか過ぎる気がしないでもないです。レムはもっとべとべとヌメヌメどろどろしていたはずなのですっ!」
「それは単に、シャトゥがみた時に俺の身体が汚れてただけじゃないのか?」
「そうともいいます。赤緑色の液状生物とか白濁色のぷにぷにしたのとかが周りに散乱していました。あれを地獄と言います?」
「いや、言わないからな。あの程度を地獄だなんて思ってると、」
「お、思っていると?」
「……凄い事になるぞ」
「すす、凄い事ですかっ!」
「ああ、凄い事だ」
「それはどの様な凄い事なのですか?」
「口には出せないほどに凄い事だ」
「成程。奥が深いのです、凄い事」
「奥が深いんだよ、凄い事……って、こんな意味不明な会話をしてる場合じゃなくてだな。おい、シャトゥ」
「なんですか、レム?」
「さっきからどうして微妙に後退ってるんだよ?」
「……おお、驚愕の新事実です」
「そうだな、驚愕だな。それで驚いたところで、そこで俺たちが到着するまでちょっと待ってろよ」
「嫌なのです!」
「何でだよ? 別に俺たちから逃げてたわけじゃないんだろ」
「素直にレムに従うのは癪だから?」
「全然癪じゃないから。だから逃げるなよ?」
「嫌なのです!」
「だから、何でだよ?」
「レムが逃げる私を追ってくるという『うふふ、あはは』な恋人鬼ごっこをしてみたいからですっ!!」
「いやちょっと待て“なんちゃって♪女神”!」
「私は女神じゃないのです!」
「あー、まあシャトゥが女神じゃないのはちゃんと分かってるから。そうじゃなくてな」
「と、言う訳で私は逃げるのです、レムからじゃなくて、母様から。何だか母様の視線が怖い気がするのです。下僕一号様、ルル! さあ行くのです、明日という自由に向かって……――脱兎!」
「って、シャトゥちゃん待――」
『きゅぅぅぅ〜』
「おい、シャトゥ待――」
「――待ちなさいシャトゥ!!!!」
「ぁ、お前は俺から離れると危な」
「――ぶっ!?」
「ほら転ぶ。だから言わんこっちゃない。大丈夫か、ってうわまた顔が凄い事に」
「……く、屈辱です」
見つかったら逃げだすのは世界共通の常識です、間違いありません。
旦那様の(余計な)一言
「俺の魔の手から逃げきれるお嬢さんはいない!!」