ど-288. やっぱり寒いのは苦手
変温動物、とかではない。
「大丈夫か?」
「……」
「おい、大丈夫か?」
「……すー」
「っておい寝るな! 寝るんじゃない!!」
「……寝てなど居りません寝てなど居りませんよ旦那様?」
「今、絶対寝てただろ、お前」
「私にはそのような記憶は御座いません」
「そりゃそうだろ。なんつーても寝てたんだからな」
「……すー」
「って言った傍からまた寝るなよっ!!」
「旦那様がいけないのですあの様に激しくお求めになられるから……」
「俺が何を激しく求めたのかは知らんが、だから起きろってっ!!」
「……起きてます、私はちゃんと起きています」
「なら俺の事は誰か、ちゃんと分かるか?」
「はい。私のたった一人の旦那様ですっ♪」
「……ゃ、そう嬉しそうに言われるのは俺としても嬉しいけど、絶対まだ寝惚けてるだろ、お前」
「そんな事は御座いません旦那様。私は正常に……ね、眠たいです」
「ったく。寒いから眠くなるってお前はどこの変温動物だっての」
「トカゲと一緒にしないで下さい!!」
「あーはいはい、解ってますよー。それと、寒いならもっと俺に身体を預けろ。ほら、ちゃんとくっついて」
「……これもあの呪いがいけないのです、そうですそうに決まっています。でも旦那様のお身体、温かいです」
「ほら、ちゃんとくっついたら一応は落ち着くんだから。こういう時に遠慮はするなって」
「別に遠慮しているわけではないのですが……」
「ない? 微妙に俺から離れようとしてるのにか?」
「恥ずかしいのです」
「嘘だろ、そりゃ」
「……」
「いや、だっていつも……ではないにしろ時々くっついたりはしてるだろうに。それを今さら恥ずかしがるようなことでもあるのか?」
「普段は良いのです、普段ならば。ですが、この様な恥辱的な理由で旦那様の温もりを頂く事になろうなどとは……」
「ああ、なるほど。いっつも、お前にしては遠慮してないかなーとか思ってたけどそんな理由か。確かにお前にとってはイヤ〜な理由だよな、これって」
「はい。折角旦那様に密着していられるというのに、これでは嬉しさも半減どころでは御座いません」
「そっか。俺に密着できて嬉しいんだ、お前」
「私に熱を奪われ過ぎましたか? 頭は大丈夫でしょうか、旦那様?」
「そう照れ隠しするなって。ちゃんとお前の気持ちは分かってるからさっ」
「旦那様の正気は初めから御座いませんので、この場合は何を疑えばよろしいのでしょうね?」
「いや、だってお前、さっき自分で嬉しさも半減するとか言ったじゃないか。何を今更、取り繕おうとしてるんだ?」
「……すー」
「そんな、明らかなタヌキ寝入りは良いからさ」
「ばれてしまいました」
「そりゃ当然ばれるだろ」
「はい、流石は旦那様で御座います」
「それくらいは誰だって分かるっての。それよりも、確かに問題だよな」
「問題、とは?」
「お前にかかってるらしい呪いとかいう奴の事だよ。まさか服を着こんで肌の接触面積が減ったり、生地の厚さ分距離が開いたりするだけでもう駄目なんてな。しかもこんなに近くにいるってのに被害に遭うのがピンポイントにお前だけって、そりゃないだろって話だよな」
「事実、起きているのですから何も言うべき事は御座いません」
「そりゃ、その通りか」
「はい」
「でもま、お前にこんな風に素直に甘えてもらえるって言うんだからこれはこれで役得って奴か」
「…………そんな、旦那様が望まれるのであれば、私はいつでも」
「お、やっと次の街が見えてきたな……って、今何か言ってなかったか?」
「シャトゥは見つかりませんね、と申し上げました。……たった今ですが」
基本的には100話ごとに新展開?
旦那様の(余計な)一言
「それで、トカゲとどう違うんだ?」