ど-281. ナニかをしでかしたから結果がある
やっちまったよ、おい
「しかし不思議だよな」
「はい、不思議で御座いますね旦那様」
「世界中を探して、これで何回目だ?」
「十五回目に御座います、旦那様」
「だよな。なんで世界中くまなく探してるはずなのにシャトゥの奴、見つからないんだ? いや、そりゃ確かに隈なくつーても粗はあるだるうから見つからないって可能性はな気にしもないんだろうけどな。なんで十五回も探してその十五回とも見つけ損なうかな」
「それはシャトゥですので」
「まぁ……つーかシャトゥだから、で済ませられるって言うのも正にシャトゥの事を現してるって感じだよな」
「それはどのような感じですか」
「そりゃ……シャトゥって感じ? 何となく伝わらないか?」
「旦那様の想いであれば十二分に伝わっております」
「だろ。シャトゥだから、って感じで何となく意味が分かるよな?」
「いえ、私は単に旦那様の事ですので、旦那様の全ての想いは言葉にせずとも私は理解しておりますよ、と言う意味で申し上げただけの事に御座います。シャトゥだから、で伝わる事など、……」
「な、考えてみるとやっぱりあったりするだろ?」
「そうで御座いますね。シャトゥの件は兎も角としましても、旦那様を言い表す場合には旦那様は旦那様であるという言葉が一番的確かつしっくりくるという純然たる事実が御座いますので、完全な否定はできかねない、と判断いたします」
「いや、俺を現す言葉が旦那様ってどんなだよ?」
「正に名は体を表すとはこの事ですっ」
「ゃ、だから何を……いや、待てよ。あぁ、確かにその通りかもしれないな。俺は旦那様――そうっ、世界中全てのお嬢さんの旦那様になるべくして生まれてきた男、それが俺っ!!」
「まあ旦那様、現実と妄想の堺は正しく持って下さるよう、お願いいたしますね?」
「大丈夫、その二つの区別はちゃんとついてるから。むしろ付いてるからこそ、今の発言があると言ってもいい」
「そうですか。ですが僭越ながら今までの結果から推測いたしますと……旦那様の健気さには涙が溢れて参ります」
「それはどういう意味だ」
「全てのお嬢様方の旦那様? 旦那様、妄言ではなく寝言であるならば、正しく寝ながら仰ってくださいませ」
「だから、それはどういう意味だつーのっ」
「……、はっ」
「うっわー、何、憐れむような上から目線は」
「失礼いたしました旦那様、あまりの発言につい上面と言う名の仮面を剥がしてしまいました」
「そもそもだぞ? お前、今の状況については理解してるんだろうな?」
「はい。何より私自身の事ですので、私の現状につきましては旦那様の次に把握しているという自負が御座います」
「なんだ、ってか俺の方がお前よりもお前の事を把握していると?」
「そんな、私よりも私の事を知っているなどと何の臆面もなくそのような事を仰られると照れてしまいます」
「ふっ、任せろ。俺の瞳は全ての真実を見抜く瞳……の時もあるからな。そのくらいは楽勝だ」
「大変頼もしいお言葉」
「と、言う訳でそこそこ自分の現状は理解してるらしいが敢えて言わせてもらうぞ」
「はい、お受けたします」
「……いや、受けるって何をだ?」
「男女間の営みを前提としたお付き合いの申し込みではないのですか?」
「何処からその申込みとやらが発生したんだ?」
「旦那様が常に考えておられる事では御座いませんか。それを今更、急に出したからと言って何の支障が御座いますでしょうか」
「いや、別にないけどな。そして確かに、それは常に俺の考えている事……の可能性も捨てきれない」
「ではご理解していただけたところで、お受けいたします」
「受けるって、その男女の営みとやらを前提とした付き合いってやつをか?」
「余りそのような事を公然の面前で発言しておりますと、犯罪者として捕縛されますよ?」
「大丈夫だ。ある意味俺の存在そのものが罪だから。誤認捕縛くらいは常に警戒してる。そして俺を捕縛しに来るのがお嬢さんなら、俺は敢えて捕まろう!」
「旦那様はまだ熱がおありのご様子で。お休みしては如何ですか?」
「ああ、確かに俺の熱は冷めないな。そう――愛と言」
「ふぅ。……しかし旦那様、やはり疲れておられたのですね。急に寝てしまわれるなんて。その御苦労の程、この私も痛み入る次第に御座います」
流れモノは大人しく流れ矢にでも当たっていればいいと思いのですよ、何てことを考えてみる。
構成要素はノリと、ノリと、ノリであるまする。
為にならないメイドの小話
「思ったのですが、為にならないとは酷い言い様で御座いますね、皆様方?」