28. どれいと誤解
〜これまでのあらすじ〜
攫われたお姫様、リリアン救出に向かったはずが助け出してみると何故か本人は女の子と乳繰り合っていた!?
しかもついでに姫様本人から、「レムは私の婚約者で大切なヒトです!」なんて言葉も飛び出して来て――後は一気にレム君に殺意が向くだけなのです。
リリアン・・・攫われた(はず)のお姫様。世界で十指に入る強者。実は若干、戦闘狂でもある。
レアリア・・・レム君の奴隷その1
アル・・・レム君の奴隷の女の子。喋れない。
セミリファ&リン&マーサ・・・リリアン救出に来た、アルカッタ本国からの救出部隊三人娘。
ラライ・・・いろんな意味でボケ娘。でも実は世界でも五本の指に入るかどうかと言うレベルの強いヒト……のはずなのだが、はてさて。
「……ワタシ、オマエ、コロス」
「ちょ、いや待て。いくら俺でも初対面の奴相手に殺される覚えはないぞっ!?」
「問答ハ、無用ダ。シ、ネッ!!」
「いや、良いから少し落ち着け、てかさっきから言葉遣いが変ですよ!?」
「私のお姉様をー!! 奪う汚らわしい男は皆、みんな殺してやるんだからー!!!!」
「うわー、色々な意味で危ない発言」
「どうせお姉様を押し倒したのだって、きっと卑怯な手を使ったに決まってますわー!!!!」
「いや待てソコっ!? 言葉違ってる、押し倒したじゃなくて、あくまで打倒だから。それも昔ちょっと泣かせちゃった事があるだけだからっ!?」
「ねえ、リン。姫様を押し倒したとか泣かせたとか弄んだとかほざいているこの男、どうするのが一番いいと思う?」
「死刑」
「よね?」
「うん、死ねばいいのに。女の敵」
「ちょ、そこ何不穏当な会話してくれてますかっ、しかも何か余計なモノが増えてるし!?」
「覚悟っ、下男!!!!」
「うをっ、危ねぇ!? ……いや待てだから少し落ち着こうぜお嬢さん。君はきっと勘違いをしている。そう、とても重大な勘違いをしているに違いない」
「その汚らわしい口で私をも惑わそうとしても無駄ですわよっ!! お姉様が身に受けた数々の屈辱――」
「数々も何も……って、どうしてコトがさっきより大きくなってますか!?」
「――問答無用! お姉様の婚約者だなんて羨ましいにもほどがありますわっ。恥を知りなさい、恥を!!」
「俺としては、どちらかと言うと君の方が恥を知った方がいいんじゃないかなーと思わなくもないんだけど?」
「煩いっ、その口二度ときけない様、今すぐ物言わぬ躯にして差し上げますわっ!!」
「怖っ、つーか頼むから少し落ち着いてくれ。俺は極力女の子には手を上げないようにしてるんだから」
「ならそのまま――朽ちろ!」
「うおっ、と。てかさっきから思ってたんだけど、君思いっきり刃物の使い方素人だよな? そんなにぶんぶん振りまわしてると、危ないぞ」
「煩いっ、私は騙されませんわよっ!!」
「いや、俺は一切君を騙そうって気はないんだけど……」
「その口がっ、減らず口を!!」
「つーか俺は何もしてないって。君が思ってるような事は間違いなく、一切合財してないからっ。頼むから少し落ち着けってのっ!!」
「わた、私は充分落ち着いてますわっ」
「そう言うこと言う奴は間違いなく落ち着いてない」
「そんな事はありませんわ。……84、59、63――ほら、お姉様のスリーサイズだってちゃんと言えています。私は冷静ですわ!!」
「……ほー」
「っっ、み、見るなっ! こっちを見るんじゃありませんわ、レム!!」
「はっ!? 私をたばかりましたわね!?」
「……いやいやいや」
「そうですわっ、お姉様をいやらしい目で見ていいのは私だけです!!」
「それはかなり危ない発言だと思うぞ、と言うよりもさっきからかなり危険な発言ばかりしてるから気をつけた方がいいぞ」
「私はお姉様の愛の奴隷です!!!!」
「……うん、それじゃ――アルにレアリア、次の目的地だけど二人ともどこか行きたい場所ってあるか?」
「ちょ、私を無視するのじゃありません、下男の癖に!!」
「あー、俺って平和主義者だから、危ないヒトとかには極力関わらないようにして過ごしたいんだ。……不思議と周りが放っておいてくれないんだけどな」
「どういう意味ですの!? それではまるで私が危ないヒトの様じゃありませんか!!」
「……そうか、今回のは自覚ないのか。はぁぁ」
「私はっ! ただお姉様をお慕いしているだけですわっ!!」
「何事も行き過ぎは良くないとヒトは言う」
「愛に行き過ぎはありません――……って、さっきからちょこまかちょこまかと、良いから早く私に刺されなさいっ!」
「誰が大人しく刺されるかってのっ。俺はそんな趣味は断じて持ってない、てかその滴ってる紫色の奴、思いっきり毒だろうがっ!!」
「龍もイチコロですわっ!!」
「尚の事、誰が刺されてやるかっての!! とー、言うよりもお前らっ、さっきから傍観してないで少しは俺を助けるなり、この娘を落ち着かせるなり何かしたらどうだ!! 特にレアリア! ラライ! それと元凶のリリアン!!」
◇◇◇
「えー、だってー、自業自得でしょ。それを、どうして私がレムのとばっちりを受けなきゃいけないのよー?」
「お前、俺の奴隷だろうがっ!? 大事な大事なご主人さまの命の危機だぞ!?」
「命の危険って、誰が?」
「俺だよ、俺っ。見れば分かるだろうがっ。だから助けろよ……とか贅沢は言わないから、せめて素振りくらい見せようよ!?」
「別に助けたくないし」
「おい!?」
「と言うよりね、レム。見てる限りじゃ随分と余裕じゃない。私と話しながらも簡単に避けてるし」
「全然簡単じゃねぇよ、いっぱいいっぱいだよっ!?」
「ほら、余裕じゃない。だから態々私の助けなんていらないでしょ?」
「要るよ、必要だよっ、切に願ってるよ!!」
「大丈夫、レムならきっと出来るから。あ、あと私は別に刺されたらそれはそれでいいかなー、とかは思ってないからね?」
「笑ってるっ、顔が笑ってるぞレアリア!?」
「何の事か分かりませんー」
「――ちっ、ずっと思ってたがこいつは駄目だ。なら、ラライは……!?」
◇◇◇
「……レム様、いつかやるんじゃないかと思ってましたけど、まさかもう何年も前に、それも小さな子供相手だったなんて」
「うぉぉぉぉい!?!?」
「ロリコンなんて話の中だけの事かと思ってましたけど、まさか実在していたなんて……」
「俺の話を聞け、ラライ」
「レム様が……レム様がろりの魔力に……!!」
「てめぇなにふざけた事ぬかしてますかっ!?」
「でもまさか、レム様がロリコンだったなんて。私、どうすればいいんでしょうか?」
「こっちはもっと駄目だったっ!!!!」
「今から幼児体型……は流石に無理がありますよね。レム様もそうならそうと早く言ってくれれば良かったのに。スヘミアさんが羨ましいです」
「くそっ、伊達にあいつに鍛えられてるわけじゃないってか。なら……そもそもの元凶のリリアンは――」
◇◇◇
「……がんばれー、レムー」
「白旗上げてやがる!?」
「まさかこんな機会にレムの実力が測れるなんて思ってもみませんでしたわ」
「実力も何もねぇ!? お前は俺を殺す気か、てかこのお嬢さんは間違いなく俺を殺す気ですよー!?」
「死ね! シネ! 私のお姉様に話しかけるな、下男の分際で!!」
「ほらねぇぇ!!!」
「――成程成程……ぇ、今のをああして避けますの? それで次の動きはこう。ふふっ、やはり私の思っていた通り只者じゃありませんでしたわね、レム。私の目の前でこれだけの動きを見せておいて、もう言い逃れはできませんわよ?」
「言い逃れする前に死にそうですよ俺は!!」
「……あぁ、でもこうして見てると、なんだか身体がうずうずしてきましたわ」
「「うずうず!?」」
「そう、ですわね。なんだか見てるだけじゃ物足りなくなってきましたわ」
「お姉様がお望みなら私はいつだって身体を渡す覚悟ですわ、むしろ準備万端即オッケーです!!」
「何を言ってるか、お前は。つーかリリアン、お前まさか――」
「流石はレム。私の考えが分かるのですね。それとネルファ、少し黙ってなさい」
「ゃ、解るも何もその闘気に当てられちゃ気付かない方がおかしいと――」
「ではレム、ネルファの相手で身体も温まったでしょう?」
「さっきまで暑かったけど、不思議と急に寒気がしてきたところだよ」
「それは嬉しいですわね」
「……何が?」
「私も、先ほどから全身が震えておりますの。レムと同じ気持だなんて――戦人としての血が騒ぎますわ」
「いや、だからね? 俺なんて大した事もないですよーって、ずっと言ってるじゃないか。な?」
「私は、騙されませんわ。それに何より、今からはっきりする事ですし。殺す気で掛かれば流石のレムも本気になると言うのが先ほどの事で判りましたしね」
「いや、はっきりした頃には俺死んでるってば!!」
「ではレム――お相手、願えますか?」
「……、いーーやぁぁぁーー?!?!」
レム君、またもや命のピンチ。いつになく命を安売りしております……あくまで本人の意志とは関係なく、ねっ。
ずんど来ずんどこ、ずんどこどいっ。
やれこい、さて来い、どんとこいっってな具合です。