ど-272. 慣れですね
慣れたくないものです
「……酷い目に遭いました」
「遭っている、の間違いじゃないのか」
「そうで御座いますね、旦那様」
「お、足元に気をつけろよ。何かよく分からないスライム状のモノがお前の事を狙ってるっぽい――気がする」
「なんですか、それは……――旦那様」
「何だ? それとちゃんと気をつけろって言ったじゃないか」
「そうで御座いますね。出来れば今度からは気がする、などと言う曖昧な表現ではなくきっぱりと明言してくださる様お願いいたします」
「そうだな、次からは気をつける事にするよ。それよりも、だ」
「……はい」
「見事に踏んだな」
「はい、踏んでしまいました。……私は、何を踏みつけたのでしょうか?」
「見ればいいんじゃないのか?」
「何か、私のどこかが拒絶してしまっていて、身体が動きません」
「――、あ〜、それ、正解かもしれないな。ちょっと、見て後悔する物体だった」
「なんですか、それは」
「聞かない方がいい」
「……では聞かない事に致します。それで旦那様、その何かの除去はお願いできますでしょうか?」
「ああ、良いぞ。――って、ほい、終了と」
「そのように簡単に取れるものとは……一体何だったのですか」
「んー、一言で言うならやっぱりスライム?」
「やっぱり、と言う所が気になりますが、いえ気にしないのが一番なのですね」
「ああ、まあそう言う事だな」
「ではそのように。それで旦那様」
「何だ」
「探し人は見つかりましたでしょうか?」
「ヒトって言っても厳密にはヒトじゃないけどな、シャトゥの奴は。なんちゃって♪女神とか、色々混じってる存在だし。言ういなれば、混沌?」
「混沌、ですか」
「ああ。しかし、一刻も早くシャトゥが見つからないと、命にかかわるかもしれないよな、お前の」
「ええ」
「ん、……空から降ってくるカエルとか蛇とか、その他色々は確実に避けれるようになってきたな」
「こんなものは慣れです」
「慣れなのか、てか慣れたくはないモノだな」
「慣れてしまったものは仕方ありませんので」
「それもそうだ。っと、でも本当に凄い偶然だよな、これって。別に故意でやってるとか、誰かが起こしてるってわけじゃないんだろう?」
「仮にそのような原因があるのでしたら私が既にお仕置きと言う名の折檻を行っております」
「だよなぁ。でも滑る、転ぶ、吹き飛ぶ、じゃれつかれる、落ちる、流される……と色々とあるけど、不思議と俺への被害は全くないんだよなぁ」
「残念で仕方ありません」
「俺としても目の前でお嬢さんだけが苦しんでるのを見てるのは中々に酷な状況だぞ?」
「一安心ですね、旦那様?」
「何がだ、何が。っと、そうじゃなくて、本当にどうしたらシャトゥの奴見つかるかなぁ。……意外と呼べば出てくるかも、なんて思ったりしないでもないんだけどな」
「まさか、そのような事は――あり得ますね」
「だよなぁ、それなら、と言う事で試してみるか。――おーい、シャトゥー!!」
「……現れません、か」
「ん〜|、流石に無理があったか」
「そうで御座いますね、それにこの程度でシャトゥが見つかるようならば、既に私が見つけて――」
「ん? どうし……って、いない? あれ? おーい、どこに行ったー?」
何かどうでも置くなってきた。と言うより考えるのが……
眠いのね〜眠いのね〜――いや、ふぁいと一発! 少し、根性を抜きなおそう。
為にならないメイドの小話
「09h4j−qf@えwjf@ ……これを奇声、と申します」