ど-271. 探索結果……実は全世界範囲の凄い魔術
むほー
「不思議だな」
「不思議で御座いますね?」
「シャトゥの奴、どうして見つからないんだろうな。ほとんど世界全域に向かって探索を掛けてるのに此処まで見事に引っかからないとは、どうしたらんな絶妙に探索から外れられるんだろうなぁ?」
「それは、シャトゥですので。そして何よりこの私が手塩にかけて育て、もとい調教しましたので抜かりは一切御座いません」
「で、今はそれが仇になってると、そう言う訳だな?」
「……はい。真に遺憾ながら」
「ま、それがなくてもそう簡単に見つかるとは思わないけどな。なんつーてもシャトゥだし?」
「シャトゥですからね」
「ああ、あいつの場合は本当に本人が意図せず“偶然”包囲網を抜けてるって可能性もあるからな」
「だとしても、シャトゥを見つけねばなりません」
「だな。そうしないとお前の身……は、問題ないとしてもちょっとは心の方を休めてやらないとな」
「私でしたら旦那様が傍にいてくださればそれだけで、心身ともに充実した休息をとる事が可能で御座います」
「……それはつまりあれか、俺に傍にいて欲しいって言う、遠回しの催促か?」
「今の私の言葉をどのようにして受け取ればそのような意味にとれるのか、旦那様の施行構造を疑います、と言うよりも存在していますか?」
「あれ、違ったか?」
「はい。態々遠まわしなどではなく、れっきとした催促に御座います故、捻らず素直にお受け取り下さいませ」
「なんだそうなのか、それは悪かったな」
「いえ、旦那様の捻くれた精神構造ならびに性格・生き方・在り方・生まれる前より身に刻まれたその業がよく表れておりますので、気を害してなどは一切居りません」
「……俺ってそこまで捻くれてるのか? 俺としては真っ直ぐ素直で常に愛を囁く素敵で無敵なナイスガイだと自任してるわけだが」
「真っ直ぐ、と言う事に間違いはないかと。捻じれ曲がってはおりますが、旦那様の性根は大局的に見れば真っ直ぐ……かもしれないですので」
「局部的に見ると?」
「ソレは何の迷路ですか?」
「愛と言う名の壮大な、答えのない迷宮だ」
「それでうまい事答えたつもりだとすれば、旦那様は最悪ですか?」
「真顔で言うなよ、少しだけ哀しくなるじゃないか」
「存分に悲しんでくださいませ、旦那様。それでこそ私の存在意義の生かしどころが生まれるというものです」
「……慰めてくれるのか?」
「旦那様がそれをお望みとあらば、如何様なりとも」
「んー、魅力的だとは思うけど、また今度だ。まずはお前の現状を何とかしないと、拙いからな」
「そうですね」
「てか、既に正体不明の粘体に包まれてお前の姿が見えてないから」
「何故か今に限りまして身体と魔力が思うとおりに動かせません。お助け下さい旦那様」
「応っ、任せておけ――……って、けどやっぱり変なんだよなぁ。何か、誰かから“邪魔”されてるような気が」
「だ、旦那様、はや――うぷっ」
「っとと。頑張れっ、今すぐ俺が助け出してやるからそれまでの辛抱だー!!」
「ぶぶぶ――」
所により、ヒトが降るでしょう。お気を付け下さいませ。
為にならないメイドの小話
「ベショベショの、ヌメヌメの、ぐちょぐちょ……――簡単に言葉で言うほど本人にとっては良い状況ではありませんよ?」