ど-266. 魔法使う
日常であります
「ぁう!?」
「……大丈夫か?」
「…………、問題ありません」
「しかし、見事に何もない所で転んだな。本当に最近のお前、ちょっと、と言うよりもかなり変だぞ? まだ身体の調子とか悪いのか?」
「いえ、身体の調子の方は元に戻っているのです――がっ!!」
「お、今度は踏み留まった」
「草々、何もない道端に足を取られて転んでなどおれません」
「何事もないように振る舞ってるつもりだろうけど、跳ねた泥が思いっきり背中を汚してるぞ?」
「……、水よ、風よ、火よ、凡て流せ――ラウンダー」
「んっ、綺麗になったな。ってか、お前が魔法使うのに態々詠唱使うなんて珍しいのな」
「一度、無詠唱で試みたところ酷い惨事になりました」
「具体的には?」
「服がボロボロに」
「そりゃ御愁傷様」
「いえ、次第にこの“呪い”がどのようなものかと言う把握もできてきましたので」
「は? 呪い?」
「……いえ、何でも御座いません、旦那さ、」
「うお!? ……っと、危ねぇな、と言うよりもいきなり剣とか槍が降ってくるってどんな状況だよ?」
「……旦那様、頭はご無事ですか?」
「ああ、問題ない。俺はかすり傷一つなかったけどお前、は……」
「――何でしょうか、旦那様?」
「……」
「私の顔に何かついておりますでしょうか、旦那様?」
「いや、何も付いてない。綺麗なモノだぞ」
「そうですか、ならば宜しいのですが」
「けど、服ボロボロ――」
「――、……さて、如何いたしましたか旦那様?」
「おお、流石だな。一瞬で着替えてる」
「如何いたしましたか、旦那様?」
「いや、うん、そうだよな。今のは突っ込むところじゃないもんな。あぁ、何でもない。何でもないから……気にするな。なっ?」
「……最後の一言が、一番重いです」
何気にメイドさんが魔法と言う魔法を使ったのはこれが初めてかも、と思ったり。
お洗濯魔法はあった方が絶対に便利だと思う。
為にならないメイドの小話
「慰められるべきでないお方に慰められると、それはもう取り返しのつかない人生の転落ですのでお気を付け下さいます様」