ど-252. プレゼント作成中
芸術は爆発だ!……で、爆発してたら命がいくつあっても足りない。
「旦那様、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、ひとつと言わず二つ三つ、何なら俺の全てを曝け出してもいいぞ」
「いえ、それは結構で御座います」
「そうか、それは残念。んで、こんな改まって、一体何を聞きたいんだ?」
「旦那様は何をなさっておいでなのでしょうか?」
「……、ふっ、お前でさえ見ても分からないか。まあ、仕方ないな。何せ俺だからなっ!」
「ええ、そうで御座いますね。旦那様で御座いますからね?」
「いや皆まで言うな。素敵な俺を理解できなくってもそれは当然、仕方のない事なんだからなっ」
「そうで御座いますね? それで旦那様、一体何をなさっておられるのですか?」
「お前へのプレゼントを作っている最中だ」
「私への、で御座いますか?」
「ああ、そうだ。ちょっとお前に似合いそうな石を見つけたからな。細工その他色々夢いっぱいな詰め合わせをしている最中だ」
「旦那様が夢を詰められた、ですか」
「ああそうだ。楽しみだろ? あと少しで出来るから大人しくいい子にして待ってるんだぞ」
「はい、では心の底より完成を楽しみにしております」
「ああ」
「……」
「……ん〜、あとここを少し細工して、あぁアレも術式に加えておくか。他には、……?」
「……」
「どうした、まだ何か用があるのか?」
「いえ、そう言う訳では御座いませんが。私が旦那様の作業を眺めているのは邪魔になってしまいますか?」
「いや、その程度じゃ俺の心は微塵の揺れもないから問題はないぞ」
「そうですか。それは安心に御座います」
「でも、俺はただ黙々と作業してるだけだぞ。見ててもつまらないと思うのだが……いやっ!? まさか、いつの間にか俺の素敵度はただ見つめているだけでお嬢さんの胸を高鳴らせるほどにアップしているというのかっ!?」
「それは御座いませんのでご安心を」
「……まあ、そうだな。第一まだ何もしてない状態で素敵度が上がっても不気味なだけだ。むしろ俺が努力して素敵度を上げてこそ、価値があるというモノだろう」
「所で旦那様、その“素敵度”なる怪しさ以外何も感じられない言葉はいったい何なのでしょうか?」
「素敵度の事か?」
「はい」
「素敵度っていうのはその名の通り素敵の度合いを指す言葉だ。分かりやすくていいだろ? ちなみに俺の素敵度が100だとすればお前の素敵度は80ぐらいだ」
「80も、で御座いますか」
「ああ、俺の次くらいには素敵なんじゃないかと睨んでるからな」
「私などに、それは勿体無い評価に御座います。せめて30ほどに下げて頂くようお願いいたします」
「なんだ、随分と謙虚だな」
「いえ。謙虚と言うよりも旦那様の仰られている“素敵度”なる如何わしいだけのパラメータなどは欲しくも御座いませんので、下げて頂けると助かるな、と思っている次第に御座います」
「ふっ、その謙虚さに免じて素敵度を82に上げてやろう」
「要りません」
「この期に及んでまだそんな謙虚な姿勢とは……やるなぁ。仕方がない、83に上げ――」
「むしろ減らせ」
「……ふむ、お嬢さんがその暴言はいただけないな。残念だが今ので78ほどには下がったぞ?」
「まだその程度ですか。道は険しそうです」
「はっはっはっ、まあ俺に追いつけるように頑張る事だ」
「ええ、全力で精進致します。……減らす方向へ、ですが」
「っとと。つい話すのが楽しくて手が止まってたな。悪い、ちょっと遅れそうだ」
「いえ。そもそも私が旦那様に話しかけたのがいけないのですし、私の方こそ申し訳ございません。旦那様の注意を逸らすような真似をしてしまいまして」
「いや、それこそ、だな。俺はお前と話すのが楽しいからこうして話してるんだ。だからそれでお前へのプレゼントが遅れるって言うのなら全部俺の所為だからな」
「……旦那様」
「――、ぁ」
「はい? 旦那様、如何なされ――」
「ミスった爆発する!?」
「旦那様危のうございます!」
「って、どうして俺の背中に隠れ、――」
「――……ふぅ、何とか無事でした。旦那様は……も、ご無事なご様子。よかったです」
「それがヒトを盾にした奴の言うセリフか?」
「本望で御座いましょう?」
「まあ、お嬢さんの盾になれたのならそれはそれで確かに……って、何言わせるかー!!」
「ふふっ。……ありがとう御座います、旦那様」
「いや、まぁ、この程度掠り傷だしなっ!」
「……建物は、丸々吹き飛んでおりますがね」
山もなく〜、谷もなく〜、ふわふわと〜
とあるお嬢さんの寝言一句(+アルーシアの溜息)
「何かに熱中している時のレムって、いつもよりもちょっとだけ……格好良く見える、の?」
「女神様の素敵度は常に120%です!」