ど-245. 勝負二回目・手を繋ごう
二人繋いで、仲良しこよし
「よし、手をつなごう」
「はい旦那様。……これでよろしいですか?」
「……確かにこうして向かい合って両手を繋ぐって言うのも心惹かれる体勢ではあるんだが、違う。そうじゃなくて、こう、隣に並んで二人一緒に歩きましょ? みたいな感じのヤツだ」
「そんな旦那様の隣に並ぶなどと、恐れ多い事……、これでよろしいのでしょうか?」
「ああ、こう言う感じだ」
「やはり改めて、となりますと少々照れますね、旦那様?」
「そうでもない。それに、こうやって手を繋いで、お前の命の温かさを感じれいられるだけでも俺は十分満たされているさ」
「旦那様の御手は少々汗ばんでおられますね?」
「そりゃ、緊張しているからな」
「照れてはおられないのではありませんでしたか?」
「照れるってわけじゃないさ。でもにお前も見たいな可愛い可愛いお嬢さんと手を繋いで、微塵も緊張しないって言ったら失礼だろう?」
「ちなみに私は旦那様と手を繋いでも緊張の類は一切しておりませんが」
「そ、それは俺に異性としての魅力がないと、そう言っているのか?」
「いえ、そう言う訳では……――いえ、改めて問われますと確かに、そうで御座いますね。そう言う事にしておきましょうか、旦那様」
「……ふ、ふふっ、それでこそ俺がじっくりと口説き落とすに値する相手なだけはあるっ」
「いえ、それは違います、とこれだけは何を先んじましても断言させて頂きましょう」
「余裕だなっ?」
「……ええ、旦那様が仰られた意味においては、確かに私には余裕が有って余り過ぎるほどなのかもしれません」
「良し受けて立とうっ!」
「勝手にお一人で受けていてくださいます様。では私は旦那様の道化を影より堂々と見守らせて頂きましょう」
「……ひとりじゃ寂しいじゃないか」
「何処ぞなりとより女性の方を見つくろってこられればよろしいのでは? ……いつものように」
「それじゃ……俺はお前じゃないとダメなんだっ!」
「……旦那様」
「ああ、解ってくれたのかい?」
「繋いだ手が汗でべとついて少々不快です」
「あ、あぁ、悪い。……――これでどうだっ!」
「どうだと仰られましても、……また手を繋ぐのですか? せっかく離れたのに?」
「そんな寂しい事は云わないでおくれ。俺はいつだってお前の事を感じていたいんだ」
「……旦那様? 色ボケてしまわれている旦那様?」
「ん? 何か機嫌が悪く――」
「それはそうでしょうとも機嫌も悪くなりましょうとも。色ボケておられる旦那様に一つ忠告させて頂きますとただ今のお言葉――『いつだって君の事を感じていたい』とは私にとっては不快でしかありません。いえ、決して旦那様のお傍にいられる事が嫌と言う訳ではないのですが、私に――……私にだけはその台詞を言ってほしくありません」
「――……あぁ、それは気が回らなかった。済まない」
「いえ、ご理解いただけたのでしたら私はそれで。それよりも旦那様には大変不躾な物言いをしてしまい、申し訳も御座いませんでした」
「いや、それは全く、別にいいんだ。でも一つだけ分かっておいてほしいのは、俺だって別にお前の事をないがしろにしたわけじゃないんだよ」
「ええ、重々理解しておりますとも。旦那様はただ色にボケてしまわれただけで御座います」
「そうなんだ。それもこれも全部……お前が俺の心をとらえて離さないのが悪いんだよ?」
「……はぁ。それで旦那様。こうして手を繋いだのは良いのですが、次はどちらへお出かけになられるのでしょうか?」
「ん〜、そうだな。お前はどこに行きたい? 夕陽の見える浜辺? それとも絶景の見渡せる頂きの上? それとも――」
「私は、旦那様と伴にでしたら如何様な場所へも喜んで参りましょう」
日常はあくまで淡々と続く
とあるお嬢さんの寝言一句(+アルーシアの溜息)
「レムの手はおっきくて……食べ甲斐がありそう」
「だ、駄目ですよアルーシア。ちゃんと手を洗ってから食べないと……」
何となく、です。