ど-243. しょうぶの一回目
万能メイドと暴走旦那様の対決の時は来た! ……来た?
「デートをしよう」
「はい。ではどこに参りましょうか、旦那様?」
「近くに見渡しの良い丘があるんだ。そこでご飯でも食べながらゆっくり、と言うのはどうかな?」
「ええ、それでお引き受けいたしましょう。では少々お待ち頂けますでしょうか?」
「いいよ、いくらでも待つとしよう。女の支度に時間がかかるって言うのは全世界共通の事柄だしな」
「ではしばらくお待ちくださいませ旦那様。ところで何か食べたいモノは御座いませんか?」
「――キミを食、っと。……危ないぞ?」
「時と場所を選んでくださいませ、旦那様。殴りますよ?」
「既に手が出た後じゃ説得力がないな。最も、俺の頬はお嬢さんの唇の為にあるのであって殴られるためにあるのではないっ!!」
「では噛み切る事に致しましょうか?」
「……ふっ、残念だが遠慮しておくとしよう」
「そうですか。それで旦那様、何か食べたいモノは御座いませんでしょうか?」
「強いて言えばお前の手料理、かな」
「実に面白味のない返答で御座いますね?」
「期待に添えなくて済まない」
「いえ。……処で旦那様?」
「何だ」
「そちらの手に持っておられるバスケットには何が入っているのでしょうか?」
「俺の手作り弁当。――おぉ、言い忘れてたけど弁当なら俺が作ったから持ってこなくてもいいぞ。……ふっ、ここでさりげなく料理が出来るというポイントをプッシュだ」
「ご自身で仰られては全てが台無しです」
「……、問題ない。俺の魅力はまだまだ尽きるところを知らないからな」
「あり過ぎる魅力など鬱陶しくも嫉ましい、負感情の原因になるだけとは思いませんか、旦那様? ちなみに私は存在自体が魅力であると自負しておりますが」
「大丈夫だ。俺の魅力のうちの一つに素敵すぎても妬まれないというのがあってだな、」
「それは間違いようもなく、単に呆れらているだけです」
「そうとも言う」
「そうとしか言いません」
「と、言う訳で弁当はいらないからな。もしその少しだけ時間が必要、と言うのがもしお弁当を用意してくれるつもりだったって言うんなら、嬉しいけど今日の所は俺に華を持たせてくれないか?」
「誰がお弁当を作ると言いましたでしょうか?」
「お前の全身の雰囲気がそう言っていた。俺の眼は誤魔化せないぜっ」
「……普段は節穴だらけの癖に」
「問題ないな。肝心な時に真眼が働けばそれでいいんだ。お嬢さんが悲しんだり落ち込んだり、傍にいて欲しい時に駆け付けられる、そんなお嬢さんたちの機微を見抜くことさえできればそれでいいのさっ」
「そうで御座いますね。そして流石は旦那様、本当に“だけ”を見抜いておられます」
「ふっ、当然だ」
「……、では旦那様、参りましょうか」
「ん? 準備はいいのか?」
「ええ。必要なくなりましたので」
「そうか。なら早速行くとするか」
「ええ、旦那様」
と、言う訳で何気に原点に戻って見る。こう言うのは書いてた楽しいから好きです。楽だし。何より一話で簡単に終わる事が出来る。
……いい事ずくし?
とあるお嬢さんの寝言一句(+アルーシアの溜息)
「実はリョーンさんはレムに名前を呼ばれた事が一度しかないの……かわいそぉ〜ですぅぅぅ……くぅくぅくぅ」
「実はアルーシアは過々保護で馬鹿な兄の所為でデートを一度もした事がありません、くふふ、可哀そうなアルーシア……んみゅぅ〜」
どっちもどっちです。ちなみに寝言。