24. どれいと“しゅっこう”準備?
〜これまでのあらすじ〜
リリアン姫様救出に向かったレム君一行。無事にレアリア、アルとの再会を果たして、さあいよいよ姫様救出だ
……て、あれ? セミリファ達の姿が見えないよ?
レアリア・・・盗賊に襲われていたところをレムに助けられて奴隷にされた女の子。ツンデレのツン120%。最近、「それは単に嫌われているだけじゃ?」とか思ったり思わなかったり。
アル・・・喋れない、奴隷の女の子。なので名前も本名ではない。
ラライ・・・通常モードは寝惚けたお姉さん、覚醒モードはボケたお姉さん。取り敢えず灼眼の剣士と呼ばれる、凄く強いらしいボケたお姉さん。雰囲気は一応大和撫子っぽいらしい。
リリアン・・・囚われ(?)のお姫様。
セミリファ・リン・マーサ・・・リリアン姫救出隊、三名。
「紆余曲折、色々とあったわけだが……」
「色々あったのはあんた一人だけでしょ」
「そこ、うるさい。いいから黙れ」
「はーい」
「よし。……んっ、と。んで、色々とあっちゃったりしたわけだが、それではさっそくリリアン救出作戦に移ろうと思う」
「はぁ、はぁ、はぁ……アルちゃ〜ん」
「……(ころころ、ころころ)」
「はぁ、はぁ、はぁ、うぷっ!?」
「……(ころころ、ころころ)」
「そこっ、俺の話を真面目に聞く! それと無駄にアルにアメを与えない!」
「……(ぷいっ)」
「レム様! アルちゃんが嫌がってます、強制は止めてくださいっ!」
「あーるぅぅぅ!? 頼むから全くの無意味にラライをあおるのは止めてくれっ。……まあ、どうせそんな自覚なんてないだろうし、言っても無駄なんだろうけどさ」
「ねえ、レム。あの二人に構ってると時間なくなるわよ?」
「……うん、俺も少しそう思ったところだ。と、言う訳であの二人、主にラライの事は無視して話を進めようと思うのだが、」
「あの“灼眼の剣士”を無視して、ってのも凄い話よね」
「全くだ。……んで、さっきから気になってたんだがレアリア、セミリファ達はどこにいるんだ?」
「ああ、セミリファ達ならあんたが気絶してる間に先に進んでいったわよ」
「え!? ……俺、どのくらい気絶してたんだ?」
「どのくらいって、……んー、そんな長い時間じゃないわよ? すぐそこの川辺で水を汲んで来たくらいだし」
「川辺、あぁあそこか。とすると確かにその通りだな。それで、セミリファ達は非情にも気絶してる俺を置いて行った、と?」
「ええ。あんたと知り合いなら厄介払いができるって喜んでたわよ?」
「……そこまで嫌われるようなこと、した覚えはないんだけどなぁ」
「いいえ、してるわね、絶対」
「何でレアリアに言い切られなきゃいけないんだよ。俺とあいつらの関係なんてろくに知りもしないだろう?」
「確かにあんた達の関係は知らないけど、でもレムだし?」
「俺だったら何だって言うんですか!?」
「んー、そこはやっぱりあんただし、としか言い様がないんじゃないの?」
「それはどれだけ俺と言う存在が救いようないって言ってるんだよ!! 俺が何かしたか、しましたか!?」
「少なくとも私は会うなり奴隷にさせられたわ」
「それは、ほら、レアリアの場合はレアリア自身の命の危険性もあったわけだし、」
「ついでに『逃がす気はねぇ。骨の髄までしゃぶり尽くしてやるぜ、えっへっへ〜』とかとも言ってたわね」
「言ってないよ!? そんな事絶対言ってないって!!」
「そうだったかしら? 良く覚えてないわ」
「良く覚えてないならそんな事言わないでくれるか!? ……ほら、二人の視線が――」
「……(ぷいっ)」
「――っ!? ……レム様のきちく! 独り善がり! 乙女の天敵!」
「ほら二人に要らぬ誤解を……つかアル、お前はあの場にいただろ? ラライの誤解を助長させるような事は止めてくれ。ただでさえどこかの誰かの所為で俺の誤解を植えつけられてるんだから」
「どこかの誰かって、誰よ?」
「さあな。――と、んでセミリファ達は結局リリアン救出に先行したってわけか」
「ええ、そうね。それで? 私達も行こうってわけ?」
「ああ、そうだ」
「でもここの森、なかなか厄介よ? 行っても行っても入口に戻ってくるし、お陰で一日近くぐるぐる回ってる始末。……何かおかしな魔法でもかかってるんじゃ――」
「や、それは多分ラライを先頭にしてたからだ」
「――はぃ?」
「あいつ、方向感覚ってモノが欠落してるような奴だから。ラライに先陣切らせてると少なく見積もっても目的地まで一年くらいはかかると思うぞ?」
「……」
「そう言う訳だからこの森には特に魔法とかは掛かってない、正真正銘唯の森だ」
「……ら〜ら〜い〜? あんたってのはっ、自分でも一刻も早く急いでるって、そう言ってたでしょうがっ!?」
「……ふ、不思議ですね。アルちゃんもそう思いますよねー?」
「……(ぷいっ)」
「そそ、そんなぁ〜」
「……(ころころ、ころころ)」
「まあ落ち着け、レアリア」
「でもっ――本当にリリアン王女が捕らえられてるんなら早く解放しないと、あの子が――っ!!」
「はいはい、だからこそ落ち着けって。第一、この俺が来たからにはもう事態は解決したも同然だから」
「寝言は寝て言え!」
「……本当に、どうしてそこまで信用ないかな、俺って。レアリアは別にあいつに何か吹き込まれたってわけでもないのになぁ?」
「普段の行いの賜物よっ!」
「あー、もうそれでもいいや。んじゃ、レアリアが冷静になれないみたいだからさっさとリリアン救出に向かうとしますか。先行したって言うセミリファ達の事も気がかりだしな」
「……気がかり? 仮にも彼女たち、アルカッタの精鋭……なのよね?」
「まあそれっぽいし、今から戦争って時に最精鋭は無理なんだろうけど……まぁ、マーサがいればよほどの事がない限りは大丈夫だろ」
「マーサ? どうしてあのおどおどしてた子がいれば大丈夫なのよ?」
「ん〜、セミリファとリンの実力も悪くはないんだけどな、少しばかり役不足って言うか、運が悪かったって所か?」
「意味分からないんだけど?」
「この先に隠れてる奴から見ればセミリファ達“ふたり”は役不足であり、――俺から見ればそいつの方が役不足ってだけの話だよ」
「……ねえ、レム。もしかしてラライに打たれた頭、まだ痛むの?」
「俺は断じて正気です! ったく、俺の事は兎も角としてもこっちには“灼眼の剣士”ラライ様がいるだろ。相手が“点睛の魔女”とか“白面”でもない限りは誰が来ようと相手じゃないさ」
「……確かに」
「つーか、せっかく最大戦力が此処にいて、目的は同じって言うのにどうしてセミリファ達はラライの事置いてってるんだ?」
「あー、それは、ほら? ……あの子が“灼眼の剣士”だって事、結局信用されなかったし」
「……そう言う事か。全く、ヒトを見た目で判断するのは良くないぞ。たとえば俺みたいに。レアリアも気をつけろよ?」
「あんたは見たまんまだと思うけど?」
「ほらっ、さっそく騙されてる!?」
「どーだかっ。それはそうと、向かうなら早く向かうわよ。早くしないと、戦争が始まっちゃうかもしれないじゃないっ」
「そうだな、レアリアの言うとおりか。それじゃ改めて――リリアン救出にむかうとするかっ!!」
「レム! 早く来なさいよ、このノロマ!!」
「レム様〜、置いて行かれちゃいますよ〜?」
「……(じー)」
「……な、何故に? 俺の掛け声の意味は、つかこういう時だけ一致しなくてもいいんじゃないのか? それとも俺をいじめて楽しいのか、あいつらは?」
◇◇◇
「――で、ラライ。この森に隠れてる奴らの事はどう見る?」
「そうですね。中々の手練と人数をを集めているかと」
「だな」
「……済みません、レム様」
「ん? 何がだ?」
「居るのは分かるんですけど、場所の特定が難しくて、灼眼の所為で集中できない事もあったりしまして、居場所を探れませんでした」
「ああ、それは気にしなくてもいい、ってかラライがいる事自体俺にとっては想定外だったしな。にしても……ったく、マレーヌの奴め、どうせ情報を送るなら邪魔な奴らを掃討しておくくらいしてくれらばいいものを」
「マレーヌ? マレーヌと言えばあの筋のいい、凄く頑張っていた子ですか?」
「お? マレーヌの事は珍しく覚えてるのか?」
「珍しくってなんですか、珍しくって。でも、ええ、あの子の事は印象に残ってますから。凄く頑張り屋さんでしたし、何より……」
「何より?」
「いえ、何でもないです。本人に言う事でもありませんから」
「本人? どういう事だ?」
「さあ、どういう事でしょうねっ!」
「……なぜ急に怒る?」
「何となく、機嫌が悪くなっただけです」
「何となくと言われても……まあ何となくじゃ仕方ないのか」
「……そうやってすぐに良いと仰られるからレム様は――」
「ん? どうかしたか、ラライ?」
「いいえ、何でもありません」
「そうか? ならいいけど」
「……それで、レム様はどう見ていらっしゃるんですか、この森の警備について?」
「ん〜、そうだなぁ。取り敢えずリーダーは起したまま黙らせるってくらいか。――流石に護衛のリーダー格なら事情を知ってるだろうしな」
「事情ですか?」
「まあ、そこはそれ、追々と。と、言う訳でレアリアにもあいつらの相手はつらいだろうから、ラライ、頼んだぞ」
「はい、解りました。ですけど、追々と、ですか?」
「マレーヌからの情報で、まだ俺の推測の域を出てないからな。まあ、リリアンのいるところまで着く頃には分かるだろ、多分」
「……はあ、レム様がそう仰られるなら、私は信じますけど」
「そりゃ頼もしい。出来れば俺の日頃についても今みたいに簡単に信じてくれると助かるのだが?」
「それは無理です、レム様♪」
「……だよな。はぁ、あいつの影響は此処まで強い、か。面倒な」
最近はこっちの方がノリがいいので書いていて楽しいのです。
もうそろそろリリアン王女の実情の方に移れればいいな、と思っていたりする。