ど-240. 煽る、そして別れる
別離と言うより……分離?
「お前は間違っている!」
「……、こ、この阿呆はどうやって地下牢を抜け出したのかしら? 減給モノですわね」
「震えているじゃないか、どうかしたのか?」
「っ、そ、それ以上私に近づかないで下さいます!?」
「あぁ、そうかそうなのか。震えさせているのは、君を怖がらせているのは他の誰でもないこの俺なのか。……死のう」
「ええ、そうして――」
「っ、旦那様何をなさっておられるのですかっ!?」
「――お姉様!?」
「……何って、ほら、こんな俺なんてもう要らないんじゃない? とか思ったり思わなかったり」
「ええ、男なんてこの世界に一匹たりとも要りませんわね」
「ほら、こう言われてる事だし。お嬢さんを悲しませる俺なんてもう死ぬしかないかな、って」
「そうです、その通りですわ。っと、そのような事よりもお姉様が態々私に会いに来て下さるなんて――」
「もう――」
「……世界中のお嬢さん」
「――」
「お、お姉様?」
「……泣いてる女の子」
「――む」
「お姉様、先ほどから何を仰られて――」
「……れむー、たすけてー」
「――俺が間違っていた!!」
「ひっ!? きゅ、急に大きな声を出さないで下さいますっ!?」
「全て俺が間違っていた。そうだよな、こんなところで立ち止まっていたら、俺を待ってる、全世界のまだ見ぬお嬢さんたちに申し訳が立たないよなっ」
「な、何を急に仰っているのかしら、この阿呆」
「――ふっ、お嬢さん、君を悲しませてしまったのは確かに未熟な俺の責任だ。だから――これは言い訳になってしまうけど……一度だけで良い、俺にやり直す為のチャンスをくれ」
「お断りですわ」
「……世間の荒波は冷たいな。だがっ、こんな所でめげてるわけにはいかないんだっ! ダメと言われて引き下がる――もとい、無理と言われて出来ないような俺ではない事を証明してやるぜ!!」
「結構です!」
「……あぁ、世界中から俺を呼ぶ声がする。だからっ、今の俺に――不可能は、ないっ!!」
「何を仰っ――、ぇ?」
――ちゃいるど、そして俺は世界へ羽ばたくっ!!
「「「「「「「「「「ふっ」」」」」」」」」」
「へぅ!? ぁ……わ、私、夢でも見ているのかしら?」
「「「「「「「「「「いざ参らん、俺を求めるお嬢さんの元へ!!!!」」」」」」」」」」
「……よく考えればヒトが分身だなんて、そんな、これは魔法か何か……いえ、そもそもこんな事が現実であるはずが、夢、夢なんですわ……――はぅ」
「……少々煽り過ぎました。緊急事態です今すぐお止めせねばどのような惨事が所持る事やら。まさか、旦那様“方”が分散されるとは……、仕方ありません私も久々に――本気を出しますか」
何か最近、話がどこに向かっているのかが分からなくなってきた。
とあるお嬢さんの寝言一句(+アルーシアの溜息)
「うん、苦しゅうない……なんちゃって、ちゃってっ。ふふふ」
「わぁぁ、これならレムには困りません!」