DeedΣ. コトハ-2
コトハとはちょっと関係ない?
キスケ・・・誰このヒトって感じ。
スヘミア・・・点睛の魔女の異名を持つ、世界十強のうちの一人。基本的にロリだが、シャトゥには敵わない。
「キスケ、キスケ……ね」
「如何なされたのですか、旦那様?」
「いや、結構懐かしい名前を思い出したなと思ってな」
「そうですね。それに旦那様の口から男性の名前が出る事も非常に珍しい」
「まあ、あいつは――サジリカの最後に微笑みをくれた奴だからな。そりゃ覚えてるさ」
「そう、でしたね。最も私どもはその頃の記憶が曖昧なの、あくまで聞き及んだだけで御座いますが」
「それは仕方がない。あのときは大変だったからな」
「御苦労を、おかけいたします」
「そんな事はないさ」
「ええ、そうですね。どちらかと言えば旦那様が私に苦労を掛ける頻度の方が多いですし、いい加減つりあいは取れている頃合いでしょうか」
「……さて、な」
◆◆◆
――男が一人。
その風貌はまさに“鬼”だった。
常闇の中でさえ爛々と鈍い光を放つ紅い瞳と、無造作に刈られた赤“黒い”髪の毛。ぼろ布のような服をはおい、手には鮮血色の刃を持っている。
「――“修羅”、発見しました」
「うん、こっちも目視で確認した」
「あれが、“修羅”。W.R.除外者ですか」
「うん、そうだね。かつての第三位で、“修羅キスケ”。実力は……今の私とどっちが上なんだろうね?」
「す、スヘミア様っ、そんな怖い事を云わないで下さいっ!!」
「っと。ごめんごめん。怖がらせるつもりはなかったんだよ。でも――うん、今のが正直な気持ちってところかな。久しぶりに見たけど全然……ううん、昔以上に」
「……」
「と、言う訳だから君たちはもう下がっていいよ」
「しかし……」
「ううん、ぶっちゃけて言うと邪魔、かな? 手伝ってくれたのは凄く助かったけど、早くどこかへ行った方がいい。レム兄様に迷惑を掛けるわけにもいかないし、何より向こうも気づいてる」
「……それでは、ご武運をお祈りしています」
「はは、ありがとうね」
「では――」
「さて、と。それじゃあ行きますかっ、うん、スヘミアちゃん、ふぁいとー!」
「で、さっきから俺の事をつけてるのは何処のどいつだ?」
「――私だよ、キスケ兄」
「……スヘミアか」
「キスケ兄、久しぶり。しばらく見ない内に髪、少し黒くなったかな?」
「さあな。んなこたぁ一々気にしてねえからな」
「そう言う無頓着な所は相変わらずって言うべきなのかな? それと髪、やっぱり黒くなってるよ。前はあんなに鮮やかな空色だったのに」
「そんな昔の事は覚えてねぇな」
「……キスケ兄の嘘吐き」
「んな事よりも、だ。まどろっこしいのは俺の性分じゃねぇ。率直に聞く――スヘミア、てめえ一体何の用だ?」
「私の用事? そんなの、キスケ兄が一番よく分かってるはずじゃない」
「――知らねぇな。そもそもお前との縁は遠の昔に切れてるはずだ。そのてめぇが俺に何の用事だ、と聞いちゃおかしいか?」
「……私は、ずっとキスケ兄の事を探してたよ? レム兄様の力も借りて」
「レム、……レム、ね。どうにも最近懐かしい名前をよく聞く。それともこれは皮肉かぁ、あいつの近くを飛び出したはいいが、核心はいつもあいつの近くにある、ってのか?」
「ねぇ、キスケ兄。お願いだよ、お願いだから――」
「昔の優しい俺に戻って、何とでも言うつもりか。んな言葉は聞き飽きた! 俺が昔に戻ったとして、それであいつが帰ってくるのか、なぁおいスヘミア、どうなんだっ!!」
「それは……」
「――はっ、……あいつがいないこの世界になんて未練はこれっぽっちもねぇよ」
「……キスケ兄」
「と。それとソレだ、俺の事を兄と呼ぶな。あいつが死んだ以上、俺はお前の兄でも何でもねぇよ」
「でも――キスケ兄は、キスケ兄はお姉ちゃんの旦那様で、お姉ちゃん――サジリカお姉ちゃんは私の、」
「――煩ぇよ。黙れ、スヘミア」
「ううん、黙らないよ。せっかくキスケ兄を見つけたんだから。本当に一杯いっぱい、話したい事とかあるだからっ」
「うぜぇ」
「……私は、ちょっとだけヒトよりも他人事に首を突っ込むのが好きなんだよ。今回のは他人事ってわけじゃないけど」
「うぜぇよ、スヘミア。用事は、言いたい事はそれだけか? なら俺は行かせてもらうぞ」
「――ううん、用事は別に……ちゃんとあるよ。出来る事ならキスケ兄が分かってくれたなら嬉しかったんだけど」
「分かれば、だと? この俺に何を分かれと?」
「キスケ兄、今は何をしてるの? 世界を全部滅ぼしちゃおうとか、そんな事を考えるのはもう止めようよ?」
「――なぁ、スヘミアよぅ。俺が、んな言葉だけで止まる様なもの分かりのいい奴だったらそもそもあんな事は考えてねぇよ」
「……うん、そうだね。キスケ兄はいつも真っ直ぐで、そう言う所が一番好きだって、サジリカお姉ちゃんがよく惚気てたから」
「煩ぇよ、スヘミア。これ以上俺の前であいつの名前を出すな。――殺すぞ?」
「出来るものなら……って、本当は言いたいんだけど、今のキスケ兄だとためらいもなく私を殺しに来ちゃいそうだから言いたくないなぁ」
「なら止しとくんだな。そもそもスヘミア――いや点睛、てめぇが使徒ってだけで、世界の理の一部ってだけで癇に障るんだ。お前じゃなかったら……あいつの肉親じゃなかったらとうの昔に殺してる」
「私は、別に“使徒”ってわけじゃないんだけど……」
「俺にとっちゃ同じ事だ」
「そう、なんだろうね。でも、だからレム兄様やお姉ちゃんに任せるんじゃなくて、私が言わなくっちゃいけないんだと思うんだ。……キスケ兄、キスケ兄がしようとしてる事がどんなことだろうと私、『点睛の魔女』が止めるよ」
「――てめぇごときに俺を止められるか?」
「止められるかどうかとかじゃなくって、私が止めるよ。たとえ洗脳したって、キスケ兄を止める」
「そうか、それは残念だ。お前には少しだが長く生きててもらいたかったんだがな」
「今ならまだ間に合うよ……?」
「……そうだな、スヘミア」
「キスケ兄……!」
「――殺気の欠片も持てねぇ奴が俺に勝てると思うなよ」
◆◆◆
二人の交差は一瞬。
いや、交差したのかも定かではない。唯一確かなのは、この場での勝者がどちらであるのかははっきりしていると言う事。
「キ、キスケ兄……」
「……昔の、あいつとのよしみだ。一度だけ、見逃してやる」
「ゥ……く、キスケ、兄……」
「最後に一つ、いい事を教えておいてやろう、スヘミア。『燎原の賢者』が近々大きな花火を上げるつもりらしいから、せいぜい気をつける事だ」
「――ま、まさか、キスケ兄、今『燎原の賢者』と一緒に……」
「ああ、そうだ」
「何でっ!? なんでよりにもよってあんな――うくぅ!?」
「奴自身は気に喰わないが、今は利害が一致した。ただそれだけだ」
「そ、そんな……」
「――レムにでも伝えておくんだな。舞台は賑やかな方がいいし、あいつが……いや、“あいつらが”か。あいつらがその気になった方がこの世界を殺すのも楽そうだからな」
「キ、キスケ兄……」
「じゃあな、スヘミア。それと――次に会ったら殺す。覚悟を決めるか、俺に会わない様にしておく事だ」
「キスケ兄ー!!!」
「――……、ふん」
そして鬼は去り、後に残るのは力尽きた魔女が一人だけ。
W.R.(ワールドランキング)についてのちょっと説明。
W.R.には欠番、除外者などと言うモノが存在したりします。欠番はNo.1『夜天の女王』で基本的に空座です。それと除外者って言うのはそのまんま。一番いい例でシャトゥ辺りかと。それとレムやスィーカットも。基本的には比較するのが無理か意味がないって場合ですね。
ちなみにキスケも除外者です。