ど-232. 七人目・ストーカーのお姫様
リッパー王女、初(?)登場
「俺のモノになれ、リッパー」
「はいっ、喜んで!!」
「よし。これで場所ゲットだ」
「場所、ですか? ――まさか、場所だけの為に私を……!?」
「それもある」
「旦那様、それは余りにも率直にものを言い過ぎでは――」
「私、生まれて今日まで自分が王女であった事をこれほど嬉しく思った事はありませんっ!」
「そうかそうか」
「……御本人がそれで納得されている、というのであれば私に否は御座いませんが」
「でもな、リッパー。当然場所だけじゃないぞ。もう一つの理由、それは君自身だよ、俺の可愛いリッパー?」
「――!!」
「ふふ、嬉しくて声も出ないのかい、リッパー」
「!!(ぶんぶんぶん)」
「そんな必死な顔も可愛らしいよ。思わず抱きしめてしまいそうだ」
「あ、あ、あぁ……これは現実? それとももしかして夢なのですか?」
「当然現実だよ、リッパー。ほら……」
「っっっ?!?!?!? れれれ、レム様が、レム様が私の頬に口――」
「本当にリッパーは可愛いね。でもこれくらいの事でそんな事じゃ、この先大丈夫かどうか心配だな、俺は」
「この先!? ……ここ、この先、この先と言う事はつまりそう言う事で私とレム様が私とレム様がわた、わたわたわわたわたわた……」
「リッパー?」
「うひゃわっひゃい!?」
「大丈夫、全部俺に任せて。そして全てを俺に委ねて。……ね?」
「は、……――いいえ、レム様。私の全ては初めて会ったその時からレム様のものですから。今更委ねるも何もないんです。どうぞ、レム様のご好きなように――」
「ふふ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか、リッパー」
「いえ、そんなっ。……妻として当然の事を申し上げたまでです」
「……つま?」
「……はい?」
「――あぁ、済まない。リッパー勘違いさせてしまったかもしれない。リッパー、俺はね、リッパーだけのモノになる事は出来ないんだ」
「はい、それは存じ上げています。レム様は皆のレム様。私一人が独占出来るだなんて、そんな大層な事は考えてもいません」
「流石だよ、リッパー。あぁ、本当に君は俺の事を理解していてくれるね」
「そんな。そんなの当然の事ですよぉ〜」
「だからね、非常に済まないとは思うが君の夫となる事は今はまだ無理なんだ。許しておくれ」
「レム様……大丈夫です! 私の国は一夫多妻制です!!!!」
「そうか。……ならいいのかな?」
「はい勿論ですっ。私の心と体と育児の準備はばっちり出来ています!!」
「――いや、やっぱり駄目だ、駄目なんだ。リッパー」
「ど、どうしてですかレム様!?」
「きっと世界にはまだ俺の愛を待っているお嬢さんたちが、涙しているお嬢さんたちが沢山いる。それを放っておいて君だけを幸せにするなんて、そんな事俺にはできない!!」
「さ、さすがレム様です。いえ、私が間違ってました。……そうですよね、それでこそ私が愛するレム様なんですから」
「ああ、リッパーごめんよ。君に寂しい夜を過ごさせると分かっていながら、俺は……俺は俺である事を止めるわけにはいかないんだっ!」
「分かってます。分かってますレム様。私はそのお言葉だけで十分です。ですから……っ」
「ああ。リッパーそれじゃあ少し、行ってくるよ。何、それほど時間は掛けない。何よりリッパー君の愛らしい顔を直ぐに見たいからね」
「はい。お待ちしております、レム様。――いつまでも」
「うん、いい子だ。それじゃあ、ご褒美に……」
「っ! はうぅぅ……」
「……何故でしょうか、この茶番。見ていると頭と胸の奥が痛くなってくるのですが」
リッパー王女様は初めからレム君にべた惚れな非常に珍しいお方。
『講座-二回目-』
「本日は世界の基礎であり基盤であり根源でもある三柱について語ろうと思います」
「神様たちの事?」
「そうです。偉大なる女神シャトゥルヌーメ様とその他二人です」
「……随分と差のある紹介だね?」
「女神様とその他二人を同格にするなんて、そんな事あるわけないじゃないですか」
「あ、そう言えば『燎原』は女神様の使徒なんだっけ」
「そうですよ。アルーシアも光栄でしょう?」
「いや、わたしは……どの神様がどんなのかなんてよく知らないし」
「そう言えばそうですね。アルーシアは三柱が既にいない時代の生まれでしたか」
「うん。お話に聞こうにもレムもあまり話してくれなかったし」
「そうですか。では一応紹介しておきますと、女神様にちょっかいを出そうとするおバカがクゥワトロビエ様です。最も全然相手にされてませんでしたけど、当然の結果ですね」
「ずばっと悪口を言うねぇ、リョーンさん」
「悪口じゃありません。事実ですから。それと何を考えているのか分からない根暗で不気味なのがチートクライ様です」
「それも、悪口じゃないんだ」
「はい。実際女神様もチートクライ様が何を考えているのか分からないってよく言ってましたから」
「ふーん。もしかして神様同士の仲ってよくなかったりしたの?」
「いいえ。基本的にはチートクライ様が中心となって利用し合っていたみたいですよ」
「……利用って」
「……間違えました。信頼、です」
「言いなおしてももう遅いと思う」
「こほん。それで最後が偉大な女神シャトゥルヌーメ様です!」
「あ、女神さまについてならちょっとだけ聞いたことあるよ。小さな子なんだよね?」
「そうですけど、それが愛らしくて素晴らしいんじゃないですか!?」
「リョーンさん、顔近い、近いよぉ」
「っと、失礼しました、アルーシア。それで偉大な女神シャトゥルヌーメ様の事ですが――」
「御免、やっぱり止めとく」
「何故ですか!?」
「なんか、長くなりそうだから」
「大丈夫ですよ、アルーシア。短く……そうですね、四日ほどで済ませますから」
「……じゃあ、わたしはもう行くね、リョーンさん」
「何故ですか!? まだ女神様の事について全然話して――」
……長い