23. どれいと、一方その頃……?
〜これまでのあらすじ〜
リリアン姫様救出に向かったはいいけどいきなり気絶させられたレム。でも実は相手は知り合いで……、ついでに無事にレアリア、アルとの再会を果たせたわけなのだが、何故かアルの機嫌が悪い……悪いの?
レアリア・・・ツンデレのツン120%の奴隷の女の子。主人を主人とは思っていない。
アル・・・口のきけない、奴隷の女の子。レムが街で奴隷商人から買った。
ラライ・・・灼眼の剣士ラライとかって呼ばれる、強いヒトのはずなのですが。
マレーヌ・・・レムの奴隷。館では処理部に所属。いろいろな事をこなす、結構万能な女の子。
サリア・・・とある街の宿屋の娘さん。レムの事はレム兄と呼んでいるが慕っているかどうかは別問題。
「アルさんアルさん、機嫌を直して下さいな?」
「……」
「アルー? 一緒にいられなかったのは悪かったと思ってるよ、ほら、この通りだからっ。なっ、頼む、赦してくれ!!」
「……」
「そうか、こんな俺を許してくれるのか。アルはやっぱり優しいなぁ」
「……」
「アルー、そんな所でそんな奴の一人漫才に付き合わなくてもいいのよ?」
「……(こくん)」
「うわああああ、あるぅぅぅぅ、俺を置いていかないでぇぇぇ」
「鬱陶しいわねぇ」
「……」
「ぁ、あんな子供っぽいレム様もちょっと可愛いかも?」
「それ、本気で言ってる、ラライ?」
「じょじょ冗談に決まってるじゃないですカー、レアリアさん!? アルちゃんもっ!!」
「……(じー)」
「ほ、本当ですヨ?」
「……良いわ。何か聞けば聞くだけ嘘っぽく聞こえてくるから。それにラライがレムを好きでも嫌いでも私には関係ない事だし」
「ほっ」
「……(じー)」
「い、いえっアルちゃん!? 別に今安心したりとかしてないですからねっ!!」
「……(じー)」
「そ、そんなつぶらな瞳で見つめられると私、私……ぶっ!?」
「ちょ、ラライまたっ!?」
「……(じー)」
「そ、その殺人的な愛らしさがまた、あぁもう我慢――」
「ちょ、ラライ!」
「っ、……うわぁぁぁん、お願いしますからちょっと落ち着いてくださいよぅ、灼眼!!!!」
「……(ぷいっ)」
「いいなぁ、あっちは楽しそうで。……けっ、どうせ俺なんて、俺なんて」
◇◇◇
「ふぅ、一息つきました」
「そうだねー」
「しかし中々やりますね。正直サリアの事を侮っていたかもしれません」
「ふふんっ、無愛想なマレーヌちゃんとは違うんだよ、人付き合いの年季ってものがね♪」
「かと言って足が遅いのと体力がないのではやっぱり足手まといですけど」
「ちょ、わたし体力あるもんっ! 足とか体力はマレーヌちゃんがあり過ぎるの、異常なの!」
「そんな事はありません」
「……何を事実にそんな断言してるの?」
「周りを見れば自然と出る答であり、私などまだまだです。今はまだ役目の為の最低限の体力や技能しかついてませんから」
「――……そっか、そんなに大変なんだ」
「いえ、別に誰の為、などと言う訳ではありませんが」
「別にそんな事は聞いてないよ、マレーヌちゃん?」
「……気の迷いです。今のは忘れて下さい、サリア」
「はーい」
「その返事はどうにも信用できないのですが……」
「それはそうとアレはないよねー。マレーヌちゃんもそうは思わない?」
「任務には極力私情を挟まないもの……ですが、サリアの言いたい事も解かります」
「だよね? だよね??? せっかく苦労して探したって言うのに、あんな」
「それは言わない事です、サリア。つまりはそもそもが“こちら”に問題がなかった、と言うだけの事ですから」
「むー、そんな事言ってもっ。あんなので戦争とかに巻き込まれちゃったら私たちも堪らないよっ!!」
「でしょうね。まあ主様が向かっている……かどうかは知りませんがアルカッタの方でも動きがあったようなので取り敢えずリリアン姫の方は大丈夫でしょう」
「大丈夫も何も、あんなの放っておいてもいいんじゃないの?」
「一応、本人は嫌がってましたが」
「だねー」
「さてサリア、一息ついたところでひとつ聞きますが、どうでした?」
「どうって、……マレーヌちゃんのお仕事について、だよね?」
「そうです。大変でしょう、諦めましたね? ならこれ以上主様に付きまとうのは止めてください」
「うん、楽しかったよー」
「……今回の任務は偶々危険が少なかっただけです。サリア、いつもは――」
「分かってるよ、マレーヌちゃん。森の中でだってマレーヌちゃんが守ってくれてた事、私が足手まといだったってのはちゃんと分かってるもん」
「いえ、別にサリアを守ったつもりなどありませんが。あくまで任務に支障をきたしそうな危険を排除したくらいです」
「うん、そう言う事にしておくよ」
「ええ、そうしておいてください」
「マレーヌちゃんの“うでまえ”は見せてもらったわけだから、今度は私が“うでまえ”を見せる番かな?」
「そうですね。数年の修行の所為かとやらを見せてもらいましょうか、サリア」
「炊事、洗濯、家事何でも御座れだよ。花嫁修行の成果を見せてあげるっ!」
「……サリア、ふと思ったのですが、ひとついいですか?」
「うん、何?」
「花嫁修行と言いましたが、それならその……」
「うん? 良く聞こえないけど」
「サリア、ちょっとこっちに耳を寄せて」
「うん、いいけど……?」
「ですからね、花嫁修行なら――」
「ふふふ〜んっ、そそそそんなの当然じゃないっ」
「でっ、ではサリア。まさか誰か男性とお付き合いした事が――」
「ないないない!!!!」
「……何ですか。単なる耳年増ですか」
「そそ、そう言うマレーヌちゃんの方はどうなの……その、そっちの方については?」
「ヘタレかつ甲斐性無しですから」
「だ、だよねー……ほっ」
「と、言う訳なのでこちらの方は引き分けという事にしておいてあげましょう」
「それはこっちの科白だよ、マレーヌちゃん。私の方こそ引き分けにしておいてあげる、だよ」
「いいますね、サリアの癖に」
「ふふんっ、マレーヌちゃんだって」
「……、それで、サリアの花嫁修行の成果なのですが」
「うん、ここじゃちょっとだから一度家の方に戻って――」
「いえ、済みませんがもう少し私に付き合ってもらいます」
「え? でもマレーヌちゃんの任務って言うのは『お姫様の軟禁場所を見つけ出す』って事で、もう終わったんじゃないの?」
「はい。ですがもう一つやらなくてはいけない事が出来てしまったみたいです」
「やる事?」
「少し“遠目”で視ていたのですが、どうにもアルカッタの軍の一部が暴走気味に進行を開始した様です」
「様って、え? でもお姫様を見つければ戦争は起きないってマレーヌちゃんが……」
「はい、そうですね。ですから、今の状況は少し拙いです。カトゥメ聖国に恰好の言い分を与えかねない。――と、言う訳なのでちょっと止めて来ようと思います」
「……ごめん、マレーヌちゃん。私、今ちょっと聞き間違えたかも。軍隊を止める、って聞こえたんだけど?」
「はい、そう言いました。確かにアルカッタの軍はカトゥメ聖国よりも精度は良いですが、混乱で暴走する程度の軍隊です。何とかなるでしょう?」
「なんとかって、ならないならないってばっそんなのひとりじゃ!!」
「正確には私と、サリアの二人ですが? 最もサリアが此処でリアイアしたい、というのであれば私には是非もありませんけど」
「う、うぅ〜、その言い方は、ずるい、マレーヌちゃん」
「大丈夫、サリアに危険は及ばせませんよ。……もしそんな事があれば、主様が悲しまれる」
「……マレーヌちゃん」
「と、言う訳で行きましょうか、サリア」
「え、え? えぇ〜??? ほ、本気なの? 本気でたった二人で軍隊止めようとか……!?」
「怖ければ隅でがくがくと震えていてくれていいですよ、サリア?」
「――っ、ふ、ふんっ、マレーヌちゃんが怖いって言うなら手でも握っててあげようか、ってくらい私は平気だよっ!」
「そうですか。ではお願いします」
「う、うん」
「――サリア、先ほど程度ではやはり不服ですので、今度こそ私の修行の成果というモノをはっきりと見せてあげますよ」
と、言う訳で一方その頃のサリア&マレーヌの二人。
リリアンの居場所を発見したのもこの二人だったり。
ちなみに二人の仲は……まあ見たとおりです。