ど-230. 六人目・森の中のアイシャ
森の中で妹の為に薬の材料を探してる最中のアイシャさん
「っ、誰――!?」
「俺だよ、アイシャ」
「ぇ、あ」
「俺が来たからにはもう大丈夫。アイシャは何も心配しなくていいからな」
「……って、何であんたが此処にいるの?」
「何故って、解りきった事を聞くんだね、アイシャ。俺がここにいる理由なんて初めから一つしかないじゃないか」
「何故か寒気がするんだけど。なんなのよ、その一つしかない理由ってのは?」
「それは当然っ! ……アイシャ、君がここにいるからに決まってるじゃないか」
「……、あ、そう」
「そうだよ、アイシャ。でもこんなところで一人にさせてごめんね、寂しかっただろう?」
「いえ、別に。私の好きでやってる事だし。それよりもそれ以上私に近づかないでくれる?」
「でも俺が来たからには大丈夫っ! アイシャの事は俺が守るから。矢でも魔法でも飛んで来いと――」
「ぁ」
「言う。と、まさか本当に矢が飛んでくるとは思わなかったが、まあこの程度、君を守る為だったら造作もないってのを分かってもらえたかな、アイシャ?」
「うそ。……矢を、素手で取った!?」
「ふっ、ちょっとだけ心配させちゃったかな? でも大丈夫、俺は素敵だからたとえどんな攻撃がこようとも――」
「ぁ」
「――……どうやら中々の相手みたいだな。まさか空間攻撃をしてくるとは思ってなかった。……アイシャ、大丈夫?」
「て、へ? あ、あれ私……?」
「だから言っただろう? アイシャは俺が守る、って。それよりもアイシャ、ひとつ聞きたいんだけどいいかな?」
「……なに?」
「アイシャは、誰かに狙われているとか、心当たりはある?」
「特にないはずだけど……あぁ、ひとつだけあったわね」
「そうか。しかしそいつも馬鹿な奴だな。まさか俺の目の前でアイシャを狙うなんて」
「ちなみにその心当たりってのはあんたの事よ」
「俺がアイシャを狙うのは俺の摂理だから仕方ないんだ。愛の狩人足るもの、こんなに可愛らしいアイシャを狙わないのは失礼に当たるだろう?」
「……その口で私のサラサを誑かそうとしてると思うと、…………そう言えばここは森の中。こんなところに人気なんて、ないわよね?」
「何だい、アイシャ。男女二人きりの時に人気を気にするなんて随分と積極的な事を言うね」
「積極? 一体何の――、っっ!!」
「でも大丈夫。俺はいつでも受け入れオッケーだからっ!!」
「ちが……違うわよっ。あんたも変な勘違いをするなっ」
「問題なしだ。さあ――どんと来いっ」
「誰が行くかぁぁぁ!!!!」
なんとかせねば、と思う。
とある姉妹の騙り合い+α
「いい加減、お前の顔を見るのも飽きたな」
「それは私の科白です、姉様。そもそも色違いの自分を見ているようで気味が悪いですし」
「胸は私の方が大きいがな」
「少しの差ですよっ、ほんのちょっとだけっ!!」
「その僅差が絶対的な差と知れ、愚妹」
「く、ぅぅ。ちょっとだけ、ほんの少しだけヒト様よりも胸が大きいからと威張り散らして……」
「最も今はそんな事はどうでもいいわけだ。――そろそろ決着をつけようか、愚妹」
「――ええ、そうですね、姉様。私も姉様の顔は見飽き過ぎているところですし――私たちの関係にもそろそろ決着をつけましょう、姉様」
「ふっ――覚悟は良いな、愚妹?」
「――姉様こそ、覚悟のほどはよろしいですね?」
「「――愚問!!」」
「……あ、二人とも。何してるの?」
「いや何でもない。二人で仲良くどつき合いをしているだけだ。なぁ、愚妹?」
「ええ、そうですよ、アル。二人“仲良く”どつき合いをしているだけですから。ねぇ、姉様?」
「そうなの? ふーん、ならいいけど。……実は喧嘩とかじゃ、ないよね?」
「そんな事はないぞ、アル!」
「そんな事はありませんよ、アル!」
「なら、良いや。うん、だって二人は仲良しだもんね〜?」
「「当然!!」」
アル>>姉妹 な、関係。