ど-229. 姉妹について
姉妹仲が悪い
「と、言う訳で旦那様に代わりまして私が話を進めておきました」
「目が覚めると樹海ってのは少し驚いたが。それで経緯は?」
「はい。サラサ様への投薬はまだ必要であると説明致しました所、アイシャ様が旦那様に頼るのは嫌だと仰られましたので。話し合いの結果、アイシャ様が薬の材料を取りに向かい、私がそれを調合する、と言う事でご納得されました」
「そうか。……と、言う事はこの樹海はナナヌの森か」
「はい。只今アイシャ様が薬の材料の一つ、トコヤミの実を取りに向かわれております。流石にトマトマイの街からは距離が御座いますので、この森の入口までは私がお送りいたしましたが」
「それで、俺達はこっそり後を尾行中、でいいんだな?」
「はい、その通りに御座います」
「お前が魔力をばらまいてる所為でよっぽど愚鈍なケモノじゃない限り近寄って来ないし、それ程危険もないか」
「アイシャ様がせめて薬の材料を取りに行くのくらいは自分一人の力でと仰られましたもので。これも苦肉の案では御座いますが」
「まあ、いいさ。アイシャがそうしたい気持ちってのも分からないでもない」
「私には分かりかねます。……妹の為に、と言うあたりが特に」
「そうかね?」
「はい、分かりません。姉妹愛などと言う言葉は世の中には存在するようですが私の中には存在しておりませんので」
「アルが妹だったと想像したら?」
「納得しました」
「そう言う訳だ。……それにしてもアイシャの奴、どこに向かってるつもりだ? トコヤミの群生帯はそっちじゃないぞ」
「いえ、そのような事が判るのは旦那様くらいのものかと。アイシャ様には何の予備知識も御座いませんでしたから」
「む。それなら俺が言って直々に手取り足取り教えてやらねばっ!」
「旦那様が向かわれると事態がややこしくなるのですが、と言ってお止め出来る今の旦那様では御座いませんが」
いやー、気分が落ち込んでると文章にも出てきちゃうっての、本当ですねぇ。……などと思ったり。
何と言うか、最近趣旨が違う気がする。
とある姉妹の騙り合い
「おい、愚妹」
「何でしょうか、姉様?」
「お前はメイド服は好きか?」
「好きか嫌いかと聞かれれば嫌いですが。それが何か?」
「奇遇だな。私もああいったひらひらの服は好まない」
「うわ最悪」
「今のお前の発言の方が最悪だ」
「……姉様の空耳では?」
「私はお前の幻聴を聞くくらいなら命を絶つ方を選ぶぞ」
「そう言えば姉様は姉妹愛って言葉をご存知ですか?」
「ああ、知ってるぞ。姉の為に下僕の様に働いてくれる愚妹の事だろう?」
「あら、私は妹の為に魂をすり減らしても従順に従ってくれる姉の事だと思ってましたわ、姉様」
「「――」」