ど-226. 勘違い?
そして今日もひたすら暴走の道を行く
「じゃあ、ちゃんと元気に――」
「成――敗っ!!!!」
「なれよ、っと。んで、どちら様?」
「くっ、この――」
「わははははっ、無駄無駄無駄ぁぁぁ」
「な、なんで当たらないのよ……?」
「それは俺が素敵だからさっ、名も知らぬお嬢さん?」
「わ、訳分からないわよぅ、このっ!」
「ステップっ、……ついでに三回転ジャンプもしておこう」
「くっ、舐めるな!!」
「そして華麗にターンっ。……ふむ、ここで俺は閃いた。俺に奇襲を掛けてきたお嬢さん、アイシャ(仮)は実はサラサの双子のお姉さんで、妹を溺愛しているから危険人物と思われる俺に向かって攻撃中、と。何とも肉親愛溢れる良い内容じゃないか。それによく見れば顔もサラサと瓜二つだしなっ」
「なっ!? こいつ、私の事を知って――」
「んにゃ。今のは全部何となくの勘」
「勘なんて嘘よっ。だったらどうして事情だけじゃなくって私の名前まで当てられるのよっ!!」
「ふむ、もしかして全部正解したか。さすが俺、さすが素敵で無敵。いつにも増して勘が冴えわたってるのが分かるぜ。……怖い、自分の才能が怖すぎるっ!!」
「な、何なのよこいつ」
「俺? 俺か。俺はレムと言う、何を隠そう愛の狩人さっ。さしずめ今の獲物はお嬢さん、君ってところかな?」
「ひっ!? な、何よこいつ。わ、私に近づいて来ないでっ!!」
「そう言う訳にはいかないさ。愛らしいお嬢さんが目の前にいて相手をしないって言うのはそのお嬢さんに対して失礼にあたるだろう?」
「そ、そんな事ないっ。そんな事ないからっ。それ以上私に近づいてこないでよぉぉ!!」
「ふふっ」
「怖っ!? 全然良く分からないけど、ナニか怖っ!?」
「……えっと、姉様。それとレムさんも。お楽しみのところ済みません?」
「サラサっ、大丈夫なの!?」
「はい、姉様。私は大丈夫ですから少し落ち着いてください。それにレムさんも」
「でもこいつが……」
「サラサに頼まれてしまっては仕方ないな。お嬢さん、二人の楽しいダンスはまた今度としよう」
「だ、誰が楽しいダンスか、誰が……」
「君と、だけど? もしかして楽しくはなかったのか、それは残念。次からはもっと君を楽しませて見せるから、それで許してはくれないか?」
「……本当になんなのよ、こいつ」
「あはは、レムさんは兄様が連れて来てくれた、お医者様じゃないけどお医者様のヒトです」
「はぁ!? どういう意味よ? ……それとあの馬鹿兄さん、やっぱり後でコロす」
「レムさん、こちら、私の双子の姉でアイシャです。……それと、事情の方は先ほどレムさんが言ってた通りだと思います。姉様が失礼な事をして済みませんでした」
「ちょ、何でサラサが謝る必要があるのよっ!?」
「ああ、そうだぞサラサ。それに俺は全然気にしてないからな。麗しきは姉妹愛、じゃないか。な、アイシャ?」
「――馴れ馴れしく私の名前を呼ばないでくれる?」
「ふふっ、仕方ないな。そう照れなくてもいいんだぞ?」
「照れてないっ!!」
「皆、最初はそう言うんだ」
「最初でも最後でも言う事に変わりはないわよっ!!」
「そんなちょっぴりシャイなところも可愛いよ、アイシャ?」
「〜〜っっ!!!!」
と、言う訳で無敵&素敵?状態のレム君の独走はまだ続く。
とある姉妹の騙り合い
「姉様、生け花って知ってます?」
「馬鹿にするな。それくらい知っている」
「驚きです。まさか姉様が生け花を知ってらしたなんて」
「お前、私を馬鹿にしているのか? それとも喧嘩を売っているのか?」
「まさか。姉様に対して、そんな時間の無駄……正直視界に映すのも虫唾が走りますが、するはずないじゃないですか」
「そうだな。私もお前を見ているだけで虫唾が走る。用事がないならさっさと去れ」
「何故私が? 去るなら当然姉様が何処ぞとなり往けば宜しいではありませんか?」
「……お前のその平然とした、傍若無人な振る舞いが一番嫌いだ」