DeedΣ. サラサ&……?
ひとりじゃないよ?
「んぐ、ぐぅ!!!」
「……もう良い頃合いでしょうか。では――」
「ぷはぁ!」
「手荒な真似をしてしまい、大変申し訳ございませんでした」
「い、いきなり何するんだよっ!?」
「目と耳と口と鼻を塞ぎ両手足を固めた上で運びあげましたが、何か?」
「俺はお前の主人の依頼人だぞっ。それをメイドごと、ごとき……ごとき、が」
「如何なさいました? 若干の発熱と呼吸の乱れ、紅潮がみられますが大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だっ! だから俺に近づいてくるな」
「そうですか。ではそのように致しましょう」
「……っはぁ! ったく、何なんだよ、一体」
「では改めまして自己紹介を。私、トゥーイと申し上げます、とは言っても偽名では御座いますが。何卒よろしくお願いいたします」
「あ、あぁ。俺はリュシウスだ。その、よろしく頼む」
「はい。では早速ではございますが、此度のご依頼の件をお訪ねしても宜しいですか。中におられる寝惚け色ボケ天然ボケの三ボケ旦那様に変わりまして伺わせて頂きます」
「ああ。って、何だ。メイドの方は主人と違ってちゃんと話が通じるじゃないか」
「まあ、アレは腐敗しきって更にその先に逝ってしまわれた旦那様ですので、広いお心で許していただけると私といたしましても、助かります」
「あ、あぁ。俺はこう見えても心が広いからな。あの程度、気にしちゃいないぞ」
「お優しいのですね。ありがとう御座います。旦那様に代わりまして、御礼申し上げます」
「い、いやぁ、それほどでも。あはははっ」
「それで此度のご依頼の件なのですが、先ほどの女性の御病気について、ですか?」
「――判るのか?」
「ええ、あの症状は以前に見た覚えが御座いますので」
「あ、ああ。確かにサラサの、あいつの事もあるんだけど、実際それだけじゃなくて――」
「――兄さん?」
「ひ、ぃ、ぁ……アイ、シャ」
「えぇ、そうよ。兄さんの可愛い妹のアイシャよ。それで兄さんは、」
「いや、その、な? ……ほら、あれだよ、あれ。うん、アレなんだよ、アレ」
「――へぇ、ふぅん、そう。そうなの。兄さんは、私が一生懸命、サラサの為に頑張ってるって時に、そんな変な格好をした女のヒト何かと乳繰り合って――」
「――変な格好、ですか」
「あ、アイシャ、少し落ち着け、お前は勘違いをしてる。それとトゥーイさん、その服はすごく似合ってるから、アイシャの言葉なんて気にしなくていいからね?」
「勘違い? 今の態度で勘違い。へぇ、そんな事言うんだ、兄さん。兄さんも随分と偉くなったものね?」
「そ、それはあの、その……」
「……申し訳ございませんが現在の状況の理解が正しくできていないので、よろしければご説明いただけると非常に助かるのですが」
「――あなたもねっ、どうせその顔と変な服装で兄さんを誑かしたんでしょうけど、少しくらい空気読みなさいよねっ!!」
「――では多少空気を読んだ行動をしてみましょうか。……アイシャ様?」
「だからっ、少しは空気を読みなさ――、……な、何よ?」
「先ほどの言葉と態度よりおおよその力関係及びお気持ちは伝わりました。そこで恐らくアイシャ様にとって非常に重要であろう事をお教えいたしましょう」
「回りくどい事を言ってないで言いたい事があるならさっさと言ったらどうなのっ!?」
「では率直に申し上げますに――ただいまサラサ様は色欲に塗れた男性と二人っきりの状況で家の中におられま――、と、既に行ってしまわれましたか」
◇◇◇
「お、おいトゥーイさん。い、いいのか?」
「いい、とは一体何の事でしょうか?」
「あの、レムって奴の事。あの勢いだと下手するとアイシャの奴、相手を殺しちまうかもしれないぞ?」
「……旦那様には良い薬になるかと。或いは、今の旦那様ですと劇薬すら良薬にしてしまう可能性も御座いますが、まあその時はその時でしょうか」
気がつけば、一年間。でも一日一話だと32回ほど足りなかったりする。