ど-225. 五人目? 盲目のサラサ
ちなみにまだ?の状況です。
「……兄様?」
「盲目の美少女万歳!!」
「ひっ!? に、兄様どちらにおられるのですか?」
「あ、あぁ。俺ならここに――」
「黙れ、邪魔だ、隔離しとけ」
「畏まりました旦那様」
「――むぐぅ!?」
「……さて、お嬢さん。驚かせてしまって済まなかった。君を怯えさせるつもりはなかったんだ」
「……ど、どちらさまでしょうか? それに兄様はどちらに……」
「あぁ、奴か。奴はちょっと至急の用事があるそうだから、ちょっと出て行ったよ。そして俺の名前はレム。まあ医者のまねごとをしているモノだと思ってくれればいい」
「お医者様、ですか……?」
「いや、医者って言うのは俺の柄じゃないし、そんなに立派なモノでもないよ。俺は……そうだな、君を病床から救いにきた愛の騎士、とでも覚えておいてくれればいい。かな?」
「ではお医者様ではなくて騎士様なのですか?」
「んー、言われてみれば騎士様って言うのも柄じゃないか。俺の事は気軽にレムさん、もしくはレムって呼び捨てで呼んでくれればそれでいいよ」
「えっと、それなら……レムさん?」
「うん、何かな?」
「それで、レムさんは何をしにこちらに?」
「言っただろ? 君を病床から救いに、だよ」
「病……、兄様は私の事はどこまで仰っていたんですか?」
「いや、何も?」
「何も?」
「ああ、一切聞いてない。でも君の様子を一目見れば一目瞭然だよ」
「一目瞭然、なのですか?」
「ああ。“ちょっと性質の悪い風邪”にかかってるみたいだな」
「えぇ、最近少し熱っぽくて。でも私は昔からこんなの――身体も強くありませんし、そんな大した事はないんですよ?」
「自分の体の事だから分かります、って事?」
「はい。それなのに、兄様も姉様もすごく心配してくれて。……正直、申し訳ないくらいなんです。って、私初対面のヒト相手に何を喋っているんでしょうか。ご迷惑ですよね?」
「いや、そんな事は全然。むしろ光栄、かな?」
「……済みません、気を遣わせてしまって」
「いや、全然。それよりもねお嬢さん、ひとつだけ忠告」
「はい?」
「いくら自分の事だからって、素人診断は止した方がいい。もしかしたらちょっとした風邪だと思ってても実はすごく危険な病だったって事もあるわけだしな」
「はい、分かりました。気をつけます」
「って、随分と素直だな」
「だってレムさん、お医者様ではないですけどお医者様なんでしょう?」
「何だ、その矛盾したモノ言い」
「ふふっ、そうですね。でもそれに、レムさんは私の体の事を心配して言ってくれてるんでしょう? なら聞かないのは失礼ですよね」
「そう言ってくれると、有難い。心優しいお嬢さんだ」
「いえ、そんな私なんて、――ぁ、と。……そうでした、済みません、レムさん。私ったらまだ名乗ってもいませんでしたよね。私はサラサっていいます。兄様がお世話になっているみたいで、ありがとう御座います」
「そうか、サラサか。いい名前だね」
「……ありがとう御座います」
「それはそうとサラサ、さっきも言ったけど君はちょっとたちの悪い風邪にかかってるみたいだ」
「はい、ちょっと熱っぽいですし。でも性質の悪い……?」
「ああ。ま、魔力が抜けてく感覚なんて魔法とか魔術を使わない輩には馴染みがないから仕方がないんだろうけどな。と、いうわけでこれがお薬。お食べ?」
「えっと、これは……お団子?」
「うん、俺特製の。安心して食べると良いよ。味は保証する」
「……」
「なに、信用できない?」
「いえ、そんな事は。……はむ」
「どう?」
「……レムさんってお料理上手なんですね」
「おぉ、そんな事を言われたのは生まれて初めてだ」
「そうなんですか?」
「ああ。まぁ、色々とあったりもしたからな。そういう機会は考えてみればなかった、ってのは確かか」
「はぁ、そうなんですか」
「そうなんだ。それと、お団子だけどあと少しここに置いておくから、後で食べるといい」
「はい、分かりました」
「それじゃ、俺はこれで」
「はい、レムさん。ありがとう御座いました」
「いやいや、どういたしまして」
最近レム君の行動が変になってきている気が……。
全く、一体何を目指しているのか、解らなくなってきた。
とある姉妹の騙り合い
「会うたびに死ね死ねと言うのは芸がないと思う訳だ」
「同感です、姉様」
「と、言う訳だ愚妹。二度と私の目の前に姿を見せるな。それで全部解決だ」
「それは姉様がして下さいな? なぜ私が姉様の言う事を聞かなければいけないのですか?」
「……仕方ない。やはりこうなるのか。初めから実力行使で二度と姿を見せれなくしてやればいいだけの事だったんだ」
「まあ、そうなるのは姉様の方ですけどね」
「さて、どうかな?」