ど-224. ……五人目?
ちょっと違うのです?
「ちょっと待ってくれ!!」
「野郎に興味はない。じゃあな」
「待ってくれ。あんたが何でも屋『出逢いと絆』の凄腕の主人のレムって男だろう!?」
「凄腕って、俺そんな大層な事はまだしてないぞ?」
「ちなみにハカポゥ様が旦那様のない事ない事、誇大妄想的な噂を実に精力的に垂れ流しておりました」
「成程。すべては俺が魅力的すぎるのが悪いと、そう言う訳なのか。……やれやれ、本当に仕方がないなぁ」
「ちょ、俺の話を聞いてるのか?」
「聞いてない」
「……兎に角っ、あんたが何でも屋のレムって男で間違いないんだろうっ!?」
「野郎に興味はない。去れ」
「頼むっ、至急の依頼があるんだ!!」
「お前、この街に戻って来てからずっと俺たちの事を見てたやつだろう? 俺にそっちの気はないからな」
「そっちの気?」
「具体的に言うと男色だ」
「俺にもないわ、そんなものっ!!」
「そうか。……と、言う事はこいつ狙いか。ふふっ、いい度胸だな、俺のモノに手を出そうとするとは。――荒野で一人朽ちる覚悟はできてるのか?」
「旦那様の“モノ”などと。そのような事を言われてしまいますと照れてしまいます。それとついででは御座いますが、余りご無体はお控えくださいますようお願いいたします、旦那様」
「なあ、マジで頼むよ。俺の命がかかってるんだ」
「命か、それは大変そうだな」
「そうだよ大変なんだよっ。だから頼む、俺を助けると思って……!」
「断る」
「どうしてだよっ!?」
「今の言葉でやる気を全てなくしたからだ。俺を助けると思って? 野郎なら自力で何とかしろ。母親にそう教わらなかったのか?」
「マジで切羽詰まってるんだよっ。俺一人じゃどうしようもないの、だから依頼をしに来たんじゃねえか!!!」
「それは無駄足ご苦労様」
「……実に、爽快なまでに旦那様の態度が異なりますね。それはそうとそちらのお方、大変切羽詰まっているご様子ですがどうなされたのですか? ……旦那様も、話を聞くだけ聞いて差し上げてもよろしいのでは?」
「んー、まあ仕方ない。なら話だけは聞いてやろう」
「……偉そうだな」
「俺は偉いからな、当然だ」
「……やっぱり別の奴に頼った方がよさそうな気がしてきた」
「なら他を当たれ。俺は一向に構わん」
「いや今の嘘、今の冗談だからっ。この街にはあんたみたいな職のヒトは他にいないんだよ、だから仕方なく……」
「やれやれ、仕方ない。ならさっさと話すだけ話してみろ。聞いてだけはやろう」
「御遠慮なさらずに、どうぞ」
「……ん、ごほんっ。実はな、俺の妹の事なんだが――」
「詳しい話を聞こう。まずはお前の家に案内しろ。今行こう、すぐ行こう」
「旦那様が、オチられました」
コトハさんは一旦お預け。でも彼女は恐らくまだ続くモノと……
今はシルファとかハカポゥのいる街に戻ってきております。
↓以下。二人のやり取りが行き着く先は常に同じ。ループする会話なのです。
とある姉妹の騙り合い
「姉様は男性の趣味が悪いです」
「自分の事を棚に上げてよく言う。私が悪いならお前こそ悪いだろうが、愚妹」
「少しでも趣味の悪さを自覚しているのならば直して下さい、姉様?」
「そっくりそのまま、今の科白をお前に返すぞ」
「話の通じない姉様ですね。私は、だから姉様は早く此処から消えてくださいと、そう言っているんです」
「愚妹、なら私もお前にも理解できるように言葉をかみ砕いて言ってやろう。――死ね」
「ふぅ、すぐにそんな暴力的な事を言うのですね。育ちが知れると言うものです」
「お前の方こそな。言葉の端々から育ちが分かると言うモノだ」
「もう良いです。消えて下さいませ、姉様?」
「お前の方が消えろ、愚妹」