ど-222. 帰ってきてます
浦島太郎、な気分。
「ちょっと見ない内に随分と変わったな」
「そうで御座いますね、旦那様」
「トマトマイってこんな街だったか?」
「いいえ、旦那様の勘違いではなく、トマトマイの様相は確かに変わっております」
「だよな。……ん〜と、何々、『名物・ケルベロス饅頭』……うん、総てが分かった気がする」
「そう言えば害のない魔物個体として特例の措置が出た、という報告が先日ギルドの方へと入っていたような気がいたします」
「あぁ、俺もその報告は聞いた。でも変化としては早すぎるような」
「そうですね。ですが名物が出来るのは良い事かと存じ上げますが」
「ま、確かに。街に活気ああるのはいい事だ」
「はい、旦那様」
「それはそれとして、だ。これはいったい何だと思う?」
「見て分かりませんでしょうか、旦那様?」
「判るけど、一応聞いているんだ。大した理由はない」
「そうですか。ではお答えいたしますが、旦那様がお建てになられた何でも屋『出逢いと絆』ではございませんか。もうお忘れになられたので?」
「いや、うん。……だよな。随分と風変りしてるように見えるけど、そうだよな」
「はい。最も確かに数日前に出発した時の面影が微塵もないのは確かですが」
「……ふむ、これはどういう事だと見る?」
「恐らくみー君が暴れ回った結果、建物が崩壊したのではないかと、そちらの片隅に木片の残骸も御座いますし」
「いや、それはいい。それは言われずとも判ってるんだ。俺が聞きたいのはもっと別の事。壊れた後で一体何があったのか、って事だ」
「申し訳ございませんが私にも想像がつきかねます」
「そうか。お前にもか」
「はい、旦那様」
「……俺が想定するに、恐らく俺の事を秘密裏に見守っていたどこかのお嬢さんがその迸る愛の証を形にしてくれた、辺りだと考えているのだが」
「そのような物言いはおやめ下さいます様、旦那様。……今の旦那様にそのような事を言われると本当にそのようになってしまう錯覚に囚われてしまいますので」
「いや、俺は別に何の根拠もなしに言ってるんじゃないぞ」
「……ではどのような?」
「気付かないか? この街に戻ってから影から見つめてくる熱い視線に」
「ちなみにその視線の方、男性で御座いますが?」
「まじかっ!?」
「はい」
「……俺にその気はないぞ」
「いえ、恐らく旦那様の思い違いかと。旦那様ではなく私を見つめていたのでは、と提案いたしますが。自分で言うのもお恥ずかしい限りではありますが私は絶世の美“少女”で御座いますから」
「少女って年か、と突っ込みが欲しいのか?」
「いえ、特には」
「そっか。しかし、そうか男かしかもお前を見てたのか。ふぅんそうなのかあー」
「……旦那様?」
「ちょっくらヤッてくる」
「……旦那様、お尋ねいたしますが、今のはあくまでお戯れで御座いますよね? なぜか旦那様が心底本気でおっしゃっているように、私には聞こえたのですが」
「俺は面白くない冗談は言わない」
「だ、旦那様!? お戯れが過ぎると思いますがっ。……いえ、旦那様が私如きに嫉妬してくださっていると言う事実は真に嬉しい限りでは御座いますが。やはりそれとこれとは話が違いまして」
「――はっ!? 唐突に俺はすごい事を悟ってしまったぞ」
「……な、何をで御座いましょうか?」
「実はその男は愛らしいお姉さんか妹さん、もしくはその両方がいてだな、本人じゃ恥ずかしいからってそいつに俺の様子を見てくてもらうようにってたんだんだ。それで結果がこれ。なんだそうなのか、そう言うわけだったのか。……安心だなっ」
「旦那様はそれでよろしいので?」
「ん? 何がだ?」
「いえ、よろしいのであればそれはそれで。……しかし旦那様、本気でそれでよろしいと思っていられるご様子。いえ、ですがまさか……今旦那様が仰られた事、本当になったりは、致しません……よね?」
唐突だけどちょっと纏めてみた。
十二使徒紹介(現在出てきた名前)
女神シャトゥルヌーメ:『灼眼』『燎原』『星天』『昏白』
男神クゥワトロビェ:『逍遥』『冰頂』『--』『--』
男神チートクライ:『点睛』『冥了』『--』『--』
使徒も残り四つとなりまして。……実は一つだけ名前も出て来ていないのが混じってる?
とある姉妹の騙り合い
「……はぁ、姉様、死なないかしら?」
「偶然見かけたと思えば。何を言っている、愚妹」
「あら姉様、いらしたんですか。いえ居るのが分かっていてさっきの言葉を言ったんですけど」
「相変わらず性格が悪いな。これが血のつながった愚妹かと思うと、いつもながら泣けてくる」
「それは私の科白です、姉様。こんなガサツでどうしようもなく乱暴者な女性として終わっている女性が姉様だなんて目の前が真っ暗にもなります」
「私は多少ガサツでも腹の中に真黒なモノを隠し持ってるよりは数倍マシだと思うがな」
「真黒なモノってなんですか、姉様? それと姉様のガサツっぷりは“多少”ではないでしょう?」
「……相変わらず、お前は私の顔を見ると喧嘩を売ることしかできないのか、この愚妹っ!」
「――そっくりそのままお返ししますよ、姉様?」