ど-221. 四人目・鬼族のコトハさん
*昨日間違えたものと全く同一内容です。
既に呼んだ方はご注意を。意味が分からない方はお気になさらず。
「よう、コトハ、大盛況みたいだな?」
「レム? うん、見ての通り一杯いっぱいですけど……」
「手伝おうか?」
「そ、そうしてくれると助かります、けど。レムは薬の種類の方は――」
「おい、こっちにもひとつ、風邪薬をくれっ!!」
「はいよー、今の時期だとササミの丸薬辺りか? ほら、銅三枚な」
「……合ってますね」
「まあ、伊達に薬作りとかしてるわけじゃないしな。しかし大変だよな、何でも流行病が流行ってるとか?」
「ええ、しかも聞いている限りの症状からして……あまり大きな声では言えませんけど、これは恐らくペイン病――通称『【厄災】病』って呼ばれているものです」
「らしいな。初期の軽い発熱症状に、次第に体力と魔力を削られて徐々に四肢の感覚も奪われて気づいた時には死に至る、と。今はまだ初期症状の体力と魔力の低下くらいしか起きてないけど、そうだろうな」
「……詳しいですね。ペイン病は発見が遅れれば確実に死に至るって言う事からあまり知られてないと思ってたんですけど。いえ、それよりもそこまで分かっている割には慌てていないのですね?」
「俺は素敵だからな。問題ないんだ」
「素敵? それが一体どんな意味が」
「素敵に無敵だからだ」
「……、はあ」
「ある意味では旦那様のお言葉は的を得ていますので、旦那様へのご心配は杞憂に御座います、コトハ様」
「……本当、かなぁ?」
「それよりも俺としてはコトハの方が心配なんだけどな?」
「いえ、ペイン病はわたしたちには罹らないものですから。心配してもらえるのは嬉しいですけど」
「いや、そう言う事じゃなくて。コトハ最近凄い忙しいだろ?」
「でも今わたしがなまけてしまうと、下手をすれば死んでしまうヒトも出かねないので……」
「だからってコトハが倒れたら元も子もないだろ?」
「大丈夫です。これでもわたし、戦闘種族ですから。身体は丈夫な方なんです。たとえば睡眠は十日くらいはとらなくても大丈夫――、あれ???」
「ほい、と。危ないな」
「す、済みません。それとありがとう御座います、レム」
「いいって。でも俺が支えてなかったら確実に頭から地面にダイブ! だったぞ? 当然、俺がお嬢さんを、ましてや可愛い可愛いコトハを助けないなんて事はあり得ないけどな」
「そそ、そうですか……」
「照れてる?」
「……知りません」
「照れ隠しに拗ねるコトハの表情も可愛いよ?」
「〜〜っ」
「旦那様、あまりコトハ様をからかいに……いえ、あまり正直な物言いをされるのは止めた方がよろしいかと。コトハ様もお困りのご様子」
「うん? それはいけないな。お嬢さんを困らせるってのは俺の信条に反する。ルナに夢の中で怒られるのも嫌だしな。……それで、コトハ?」
「……何ですか?」
「そう警戒しなくても。俺、哀しくなるよ」
「……そう言うセリフをころっと言うから、警戒するんですよぅ」
「ふふっ、コトハは初心だなぁ」
「……旦那様」
「っと、そうだったな。それよりコトハ、これをあげるよ」
「……お団子?」
「そう。ちなみに俺特製の手作り。薬は入ってるけど毒は入ってないから、安心していいよ?」
「くすり?」
「元気になるお薬だよ?」
「元気になる、と言う言い方が凄く気になりますけど……、はむ」
「……どうかな?」
「甘い、ですね」
「疲れた時には甘いもの。元気になるかな?」
「そんなすぐには元気になんてなりません」
「――で、もう一つどう?」
「……頂きます」
「ちなみに只今巷では子供に大人気で御座います。無料で配布を行っている、と言うのも受けがよろしいようで。最もその所為で大人の方々には非常に怪しまれておりますが。あとは……誠に遺憾では御座いますが旦那様のヒトとなり、でしょうか」
『ペイン病』
別名、死の病。真名、“冥了の涙”。生きとし生ける全てのモノを死に至らしめる、絶対的な災厄。
酷かった。酷かったのです。
とある姉妹の騙り合い
「あーん、姉様、どうぞ?」
「……どういうつもりだ、愚妹?」
「ただ単に姉様に毒入り団子を食べさせてあげようとしているだけですけど、それが何か?」
「何だ、それなら問題ないな」
「はい、全く問題ないですよ。と、言う訳で姉様、私に食べさせてもらえる幸運を身に噛み締めながら、どうぞ。あーん?」
「むしろお前が自分で食え、愚妹」
「嫌です。毒入りですよ?」
「なら私も断る。毒入りなのだろう?」
「ちっ、……姉様の臆病者」
「ふんっ、愚妹の戯言なんて微塵も心に響かないわ。――でも取り敢えず死んでおけ」




