ど-219. 四人目……よりもそろそろ自己紹介を
レム君がまだ名乗ってなかった事に気づいた。
「さあコトハ、結婚しよう! ……でも済まない。俺は世界中全てのお嬢さんのモノだから、コトハ一人だけに愛を与えるってわけにはいかないんだ、それだけは許しておくれ」
「……、はぁ」
「ですからコトハ様、そのような表情で私を見られましてもご返答致しかねます、と何度も申し上げております。やはり一番適当なのは聞き流す事でしょうか」
「あの、済みませんけどお断りします。第一、わたしあなたの名前もまだ知りませんし」
「む? 俺とした事が自己紹介もまだだったとは迂闊。と言う事で、俺の事はレムって呼んでくれ、コトハ。ちなみに趣味は薬作り」
「薬? レム……って、薬師なんですか?」
「いや、薬師なんてもんじゃなくって、趣味の範囲だけどな」
「ちなみに今地上で扱われている治療薬の約五割は旦那様の発見した調合率かと思われます。確か薬師名はスズタケ、と言ったはずですか」
「スズタケ……って、どこかで聞いた名前の様な気が」
「あまり気にしなくてもいいよ、コトハ。第一、君の美しさの前じゃ何もかもが霞んで見えるんだから」
「だ、だからそのような物言いは止めて頂けると、……助かります」
「照れた表情も可愛いよ?」
「っ!!」
「旦那様、コトハ様が困っておりますので、そのような物言いは控えられた方がよろしいかと」
「うん? あぁ、コトハは初心なんだな。それは悪かった。けど、まあそれも仕方のない事か。何と言っても俺だからな」
「何が俺なのかは分からないけど、……恥ずかしいからそんなお世辞は止めてください。お願いですから」
「お世辞って、誰が?」
「……」
「ですから旦那様は本気ですので。受け入れ難いのであれば聞き流すよう、お願いいたします、コトハ様」
「それはそうと、本気でわたしについてくる気なんですか?」
「ああ、それは本気も本気」
「……どうしよう」
「俺たちの事は気にしなくて良いぞ。遠慮なく仕事に励んでくれ。俺は横から見守ってる事にするから」
「横から見守るって、気になるんですけど」
「そうか、流石に俺が見てると気になるか。それはそうだよな。……済まなかった、コトハ。君を困らせるつもりは微塵もなかったんだ。そういう事なら俺は――身を引く事にするよ」
「え、どこかへ行ってくれるんですか?」
「いや、コトハの仕事が済むまでちょっと時間を潰してくる事にする」
「……そうですか」
「それじゃ、コトハ、仕事がんばって」
「はい」
何となく飽きてきた今日この頃。
とある姉妹の騙り合い
「なあ愚妹よ」
「なんですか、姉様?」
「死ねだの殺すだのと、いつも言っていて疲れてこないか?」
「……奇遇ですね、私もそう思っていたところです」
「……なら少しは気を休めたらどうだ? 勧めるぞ」
「それは私のセリフ……なら姉様、臨戦体制を解いてくださいよ」
「断る。お前の魂胆は分かっているからな」
「――なるほど。考える事は同じ、と言う事ですか。全く忌々しい」