ど-214. 四人目――はまだ遠い
にちじょー
「……ふむ」
「どうぞ、旦那様。粗茶ですが」
「うむ。……うん、いつもながらにいい腕してるな。ほんのり甘い舌触りがいい感じだ」
「お褒め頂きありがとう御座います。それはそうと旦那様、先ほどより何やら考えておいでのようでしたが、如何なされましたか?」
「ああ、それなんだがな、最近の状況をお前はどう見る?」
「どう、と言われましても。そうですね……旦那様、早く吐いたほうが楽になれますよ?」
「何の事だ?」
「……いえ、心当たりがあられないのでしたら、それはそれで宜しいかと」
「良く分からん」
「ならば喜ばしい限りですが。それ以外でしたら、そうですね……、特に当たり障りのない日常、平和そのものかと存じ上げますが」
「そうっ、それだ!!」
「つまり旦那様は出会いが足りないと、そう仰りたいわけで御座いますね?」
「何だよ。初めから判ってるなら俺に言わせるなよ」
「認めたくない事とは必ず存在するものです」
「……そうか、そんなにも俺が完璧すぎるって言うのは罪なのか。それは済まなかったな」
「済まないと多少なりとも感じられておいでならば今すぐ私の目の前にひれ伏し土下座をし得全身全霊をもって謝ってくださいます様、身を粉にしながら頭を垂れて誠心誠祈願意致しましょう」
「それはできないな」
「そうですか。それはつまり済まないとは思っていないと言う事ですね?」
「いや、違う。それは誤解だ。俺が完璧で容姿人格運性その他何もかもが素晴らしいのは当然の事。なら俺がいくら謝ったところで謝罪が尽きる事はないだろう? ならばこそ俺は別の形でこの想いを伝えたいと、そう思っているだけなんだ。信じてくれ」
「私が旦那様を疑うなど、かつて一度たりともあったでしょうか?」
「……いや、そうだったな、うん。いや、お前を少しでも疑ってしまった俺の方を許しておくれ」
「お断りいたします」
「……そ、そうか」
「はい、許しません」
「ならどうしたら許してくれるんだ? 俺に出来る事なら何だってするぞ」
「一生許しません」
「それは困ったな。……、――なら仕方がないっ! 責任を取って俺」
「いえ結構です」
「――……、そうか」
「はい。それはそうと旦那様、先ほど最近の状況がどうと喚いておられましたが、如何かされましたか?」
「……いや、な。最近は滅法出会いがすくないな、と思ってな。何故だっ!? これは世界が俺に与えた試練だとでもいうのか?」
「そう言えばこの何でも屋『出逢いと絆』に訪れたお客様は今のところおひとり様だけで御座いますね。かれこれ十日ほど経ちますが」
「そうなんだよなぁ。それでその一人がハカポゥちゃんだろ。でも、一体何が悪いんだ、知名度か?」
「いえ、私どもの事は広く街の皆様方に知られておりますので御心配なさらぬよう、旦那様」
「そうか、お前が言うならそうなんだよな。って事は信用か? 信用ってのはこつこつ積み上げていくしかないからなぁ、とは言ってもお客が来ないんじゃどうにもならんし、本当にどうしたものか」
「……ひとつ、伺わせて頂きますが旦那様は本気でそう仰られておいでで?」
「ん? お前は全然お客が来ない、もといお嬢さんと俺との出会いが全然ない理由が分かってるのか?」
「いえ、旦那様の出会い云々に関しましては存じ上げてはおりません」
「だよな。しかし、となると何かしらの解決策を立てる必要があるな、どうするかね?」
「……家の前にA級魔物であるケルベロスを飼っている家になど誰が近づきたがりましょうか、と思うのは果たして私だけなのでしょうか」
ゆったりとティータイム、な二人です。やはり旦那様はちょっと暴走気味ですが。
魔物のレベルとカ、特AとかBとかですけどあまり気にしないように。かなり適当につけてます。
とある姉妹の騙り合い
「死んでください」
「行き成り何なんだ、愚妹」
「いえ、姉様に消えて欲しいのに理由はありませんが?」
「……それもそうだったな。私もお前がいなくなるのに大層な理由は持っていない。ただ、邪魔なだけだ」
「では納得していただけたところで――死んでください」
「ああ、心配ない、心配はいらない。――ならお前が死ね、愚妹」