ACT XX. スヘミア-1
忘れてました
「どーん!!!」
侵入成功。ついでに数人吹き飛ばしちゃった気もするけど些細な事だ。どうせお姉ちゃんに鍛えられてるのならこの程度大丈夫でしょ。
「あ〜、ここに来るのも久しぶりだな〜」
目に映る景色が全部懐かしいや。あ、主様の…じゃ、もうなかったっけ。レム兄様の花壇もある。まだお姉ちゃんに潰されてなかったんだ、へぇ〜。よく我慢してるな、お姉ちゃん。
「ふ〜ん、…うん、もうちょっとがんばってみよう?」
わたしを囲んでいる護衛部の子たちに笑いかける。うん、さすがに訓練が行き届いてるね。そう懐かしんでもいられない感じかな?
「でも、わたしを見た目どおりの子供と侮っちゃうとひどい目見るよ?」
って、もう見てる人もいるけど。
うん、軽い挑発にも乗ってこない。まずは合格だね。……へぇ、数人面白い子達がいるみたい。ほんのちょっとだけ、たぶん無意識だけど覚醒してる。
様子見のつもりもあったけど…ここまで半覚醒の子たちが多いってことは意外ともうそろそろまずいのかもしれない。対策、少し考えとかないと。……ま、今はいっか。それよりこっちが優先、だね。
ん、奇襲のつもりだったけど思ったよりも警戒が行き届いてる。ならどうせお姉ちゃんにはもうばれちゃってるだろうから、存分に相手してあげる。
「“点睛”、行くよ」
――イエス、マスター
だからわたしは君のマスターじゃないって…て、無駄だよね。
『っ!!』
わたしが動くのが判ったんだろう。一瞬前に一斉に掛かってくる。うん、いい動き。
「…でも」
人海戦術でわたしを相手にするには相手が悪いよ?
少し、いじる。まあ、認識程度で十分だよね。
「あ、ああああああ!!」
「きゃ!?な、何??」
いきなり、味方を襲い出したら混乱しちゃうよね。さあ、どう出る?
うん?
一人の指示で混乱してた子を抑えて…一気に体勢を持ち直した。やっぱりいい動きをしてただけあってあの子が頭か。なら…
「“点睛”、あの子だよ」
――イエス、マスター
だからマスターじゃないって…もう。
「あ、ああ。ルイネ様!?如何なさいましたかっ!!!」
『?』
いきなり変な事を言い出した一人に皆が一斉に振り返る。普段が冷静な分驚きが大きいし、こういう事にも慣れがない分不得手なんだろうけど、わたしから意識をそらしちゃだめだめだよ。
あ、あとお姉ちゃん今はルイネって名乗ってるんだ。まあ、まず偽名だけど。
「皆、失格だねっ」
『っ!!』
気づいた時にはもう遅い。動けないでしょ?
隙を見せた瞬間に全員いじったからね。もっとも隙なんてなくてもこの程度の人数はいじれる自信あるけど、それじゃつまらないからね。
「きっとお姉ちゃんからわたしが来る事は告げられてるんだろうけど、気を抜きすぎだよ。わたしが敵対者だったり本当によそ者だったりしたらこれで一網打尽なんだから」
とは言ってもお姉ちゃんがいる限りそんな事にはなりえないだろうけど。でも頼り過ぎってのもよくないよね。
「“点睛”を侮り過ぎた事、ちょっとお仕置きが必要だよね、やっぱり」
「そうですね。悔しいですけど皆、勿論私も加えてまだ訓練が足りなかったようです」
へぇ…
「あれを打ち破って正気に戻るくらいの事は出来るんだ。中々見込みあるよね」
「いえ、残念ですがこれは点睛の魔女スヘミア、あなたのミスです」
「わたしの…?ああ、なるほど」
確かに、言われればこれはわたしのミスだ。
お姉ちゃんを――例えどんな幻影だろうと――騙れるわけがない。必ずどこかで食い違いが出てきて、後は綻んで崩れていくだけ。今みたいに。
「でもそれに気づけるってのはやっぱり見込みがあるよ。名前は?」
「…護衛部長をさせていただいているサカラと申します。ご一手、願えますか?」
「うん、いいよいいよ。そういうの好きだよ、わたし」
「では…」
「でもね」
さて、と。
「侮りすぎってのは確かだよ。最初に言ったよね、見た目に惑わされると痛い目見るって…まあ聞こえてないだろうけど、後でちゃんと伝えといてね、皆」
『…』
わたしが遠距離集団戦用って言ってもあのお姉ちゃんに鍛えられたからね。普通の子達に劣るほどやわじゃないよ。伊達に下で点睛の魔女って呼ばれてるわけじゃないしね。
「じゃ、いよいよメインイベントだね〜♪」
一応わたしもがんばってるつもりだけど、お姉ちゃんにどこまで敵うか楽しみ〜。あ、当然お姉ちゃんに会えるのも楽しみ。
「ふふ〜ん、わたしのせいちょーを見せ付けちゃうんだから♪それでお姉ちゃんに頭撫でてもらってぇ〜、ふふふっ」
スヘミアさんは強いです。どのくらい強いかと言うと館の護衛部(戦闘部隊のような感じ?)全員が一斉に掛かってもかないません。
…てよりも、能力的に多対一の戦闘の方がスヘミアさんは得意なので数は意味ないです。
ちなみに…