ど-205. 続々二人目・看板娘のシルファさん
シルファさん攻略中。
「探りは入れましたが全く――何故に旦那様はあのようにピンポイントに器量よしかつ訳ありな女性の方と出逢われたのでしょうね。これもあの液体の効能か、旦那様が覚醒なされた故か、もしくは――元よりの旦那様の資質所以か」
「と、言う訳で金・力を揃えてみた。容姿は残念な事に初めから持ってるから必要ないしな。ふっ、罪な俺」
「事情が全く呑み込めません。説明してください、レムさん」
「ん? いまシルファに必要なモノを用意しただけだよ?」
「今私に必要なモノって……」
「借金してるみたいだったから、金」
「っ!! それをどこで――」
「次いでその借金取りが性質の悪い相手っぽいので、力」
「……力?」
「うん、そう」
「その、後ろに並んでる女の子たちの事?」
「ああ。ちなみにこれだけで国一つほど滅ぼせる、かもしれないくらいの戦闘力があったりする」
「冗談が下手なのね、レムさん」
「それ程でもないぞ?」
「それにしても……レムさん、ひとつ聞いてもいい?」
「ああ、シルファの彼氏がいるかどうかからスリーサイズ、最近のお腹のぷに肉事情や今まで玉砕した男の数まで、一つと言わず何でも聞いてくれていいぞ」
「それ全部私の事、じゃ、なくて!」
「うん?」
「不躾な質問で悪いんだけど、レムさんってもしかしてやんごとなき身分のヒトなの?」
「やんごとなきって、例えば?」
「大商家のドラ息子とか、貴族のお坊ちゃまとか、そう言うの」
「そんな質問を聞いてくる割には俺への態度は変わらないな、シルファ」
「……御免なさい。私、教養とかってないから偉い人にどんな態度をとればいいのか分からないの」
「ふぅん。――それだけじゃない気もするけど、ま、別にいいぞ。つか俺ってそんなやんごとなき身分とかじゃないし。一応こいつらの御主人様ではあるけど」
「ご主人さまって……レムさんってそういう趣味のヒト?」
「多分、シルファは勘違いしている。だから後ろへ後ずさるのは止めろ」
「う、うん」
「こいつらは正真正銘、俺の“モノ”だから」
「俺の……モノ? それってもしかして、“隷属の烙印”の……?」
「うん、そう。だから俺の“モノ”」
『――』
「の、割には何か凄い睨まれてる気がするけど?」
「教育の賜物だから気にしなくていいぞ。大丈夫、みんなちょっと照れ屋なだけだから」
『……はぁぁぁぁ』
「……まあいいわ。それよりも貴族のお坊ちゃまとかじゃないんなら、このお金ってもしかして盗んで――」
「は、ないぞ。ちゃんと血水を流して稼いだ金だ」
「汗水じゃなくって血水、ってところが微妙に気になるけど」
「気にしない気にしない。それよりも、どうだ?」
「……どう、って?」
「そろそろ俺に惚れた?」
「どうしたらそういう結論に至るのか知りたいわ」
「いや、シルファと出逢って、もう結構経つし」
「今日で四日目よね? それと出会って、って言っても私が働いてる店にレムさんが日がな一日来て食事と紅茶だけ頼んでずっと居座ってるだけじゃない」
「あれ? 俺ってもしかして迷惑だったり?」
「うん、もしかしなくても凄く営業妨害。居座るならもっと注文してください」
「まあ小さい事は気にするな」
「……それに関しては前から似たような事があるから然して気にしないけど。でもねレムさん、そんなに悪いヒトじゃないみたいだから忠告するけど、そろそろ私に付きまとうのは止した方がいいわよ?」
「どうして?」
「――運良く“あいつ”に会ってないからまだ無事だけど、こんな私に付きまとってるところを見られでもしたらレムさんは……」
「自己完結してるところ悪いんだが、シルファ、それじゃひとつ聞いていいか?」
「……なに?」
「シルファは、俺に付きまとわれてるの迷惑?」
「うん。さっきも言ったと思うけど、凄い迷惑」
「ふぐっ!? は、ははっ、照れ屋だな、シルファは」
「別に照れてないけど。それに迷惑って言っても“あいつ”ほどじゃないからそんなに気にしてもないし」
「ところでさっきから出てくる“あいつ”って誰の事?」
「……別に。単なる嫌な奴の事よ」
「――へぇ」
「って、レムさん、どうしたの? 日中に帰ろうとするなんて珍しい……って言うより初めて。私、まだ仕事あるよ?」
「うん、分かってる。ただちょっと、用事が出来てからな」
「用事?」
「そ、用事。世界のお嬢さんは全て俺のモノで、世界を――女の子を悲しませる輩は総て俺の敵なの」
「相変わらずナンパなモノ言いだけど、どういう意味?」
「ピンチに颯爽と現れるヒーローなんてどこにもいなくて、でもだからこそ俺がいるって事。ついでに言うと今まで押して来たから引いてみるのも一つの手かと」
「益々意味が分からないんだけど?」
「結構。気づいた時には俺に夢中ってパターンだな、うん。……それじゃ、シルファ。こいつらは念のために置いて行くからまた明日な!」
「毎度ありがとう御座いましたー、……って、いったい何なのかしら、本当に。貴女達も、何なの?」
「さあ?」
「強いて言えばレム様の、モノ?」
「……ハッスってば、大胆発言ねぇ」
『きゃ〜』
「……余計に意味分からないし」
「うん、それが我らが主の望みであるのなら――」
「全身全霊を以てしてそれを叶えるのが私たちの務め」
「私たちの歓び」
『――なぁんて、お姉様の真似!!』
「……でもレム様の事、何も知らずにのうのうとしてるのはちょっとムカつく」
『あ、それ同意』
派遣されたメイドさんはハッス以下四名。レム君のいないところでは意外とレム君は人気があります。ただし本人がいない所に限りますが。
とある姉妹の騙り合い
「容姿あり、金あり、力あり……なんて、何様のつもりでしょうね、あのヒト」
「バカには違いない」
「……確かに」
「しかし本気なのか? その、アレをすると言うのは」
「あれってなんですか、姉様?」
「ほら、アレはアレだっ!!」
「あぁ、もしかして夢はハーレムなんていう戯言の事ですか? ……と、言うよりも姉様恥ずかしがってます? 皇族の端くれなのに?」
「――五月蠅い五月蠅いうるさーい!!」
「ふふっ、騒げばそれでいいと思ってるなんて姉様もまだまだ子供ですね? と言うより耳障りなので黙ってくれません? もしくは即刻黙らせて差し上げましょうか?」
「……こ、殺す 今日こそ完全に殺し尽くしてやる、愚妹!!!!」
「姉様如きが出来ますか? いえ、返り討ちです」