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宴の前に〜孤独に蟲毒な祭りの最中〜

一休み。




「……おや」



旦那様の食事係が失踪した(?)と言う事で久しぶりに台所で料理をしていた“彼女”の目に留まったのは一つの瓶。ちなみにドクロマークが彫ってある上に明らかな異臭を放っていると来た。

だからこそ、意図的に、誰の目にも留まらなかったわけであるが。



「まだ残っていたとは驚きですね。あの後でどなたかが処分されたものと思っておりましたが。……まあ、気持ちは分からないでもありませんか。あの時の旦那様は――…………、さて、仕事に戻ると致しましょうか。こちらは……今は放っておくと致しましょう」



そして再び同じ場所に戻される瓶。

名を『蟲毒』といい、ちょっとだけ特殊な方法で造られた――ただのジュースである。決してお酒とかではない。





◇◇◇





“白日”とは――二つの新月が重なり合う時、そして月の魔力が最も弱まる時であり……偉大なる創生の始祖、白龍ルーロンを祝うと言う大義名分を元にどんちゃん騒ぎをする日でもあった。

その裏に隠された真実を知る者はほぼいない。だから“白日”のしばらく後に“とあるコト”がある事を知る者の数は非常に少ない。




「呑めや騒げ―、はははははっ♪ ほら、皆も遠慮しないで、どんどん飲んだ飲んだぁ!!」





「はい、一杯どうぞ」


「ありがとう御座います。こちらからも一杯」


「っとと。ありがとう御座います。それじゃあ私もお返しにもう一杯」


「そんな、悪いですよぉ〜」


「遠慮なさらずに」


「遠慮なんて……」


「さあ、一気にぐっと飲んでください」


「……、――んっ!」


「良い飲みっぷり!」


「……ほら、私からもお返しです。遠慮せずに、いっぱい飲んでくださいねっ?」


「ありがとう御座います。ではいた、……頂きます」


「はい、どうぞ?」


「……、――んっ!」


「よっ、世界一!」


「ありがとう御座います。それじゃあ、こちらからもお返しに――」


「いえ、こちらからも一杯どうぞ――」


「……うぅ、気持ち悪」


「……まだ潰れないの? そろそろ限か、」


「あら、どうかしましたか? お辛そうですけど?」


「そんな事はないですよ? さあ、もっと一気に――」


「ありがとう御座います。ほら、ならこちらもお返しに――」


「「――、……うふふふふふ」」





「ちょっとぉぉ、ちゃんと聞いて、るのですかぁぁぁ!?」


「うん、うん、分かる。分かりますよぉ、その気持ち、痛いほどよく分かります」


「ならいいのですっ。そもそもですねぇ、私が言いたいのは、言いたいのは……なんでしたっけ?」


「そうです! 私もそれを言いたかったんです! やっぱりあなたは分かっていると思っていまひた!!」


「ほほっ、それ程でもないですよぅ。で、一体何のおはなひをしてたんでしたっけ、私たち?」


「さあ? 頭の中がぽわぽわしていて覚えてません。でもきっととても素晴らしい事だっと思います!」


「ですねっ、ですねっ!!」


「はいです! はいですっ!!」





「……ああはなりたくないわよね」


「んむ?」


「あぁ、ミミルッポは気にしなくていいわよ」


「ライ姉ぇもたべる?」


「いえ、私は良いわ」


「そうなの? でもおりょーり、おいしーよ?」


「ううん、こういう席はこれだけで十分なの」


「おさけ?」


「そ」


「それ、のどがかっかしてきらいー」


「……えぇ、貴女は多分、呑まない方がいいと思うわ」


「??」


「つまりね、好きなだけ食べてていいって事よ」


「……? うん!」


「いい子ね、ミミルッポは。それに引き替え、――はぁぁぁ、もうこのカオス、何なのよぉ。お酒でも飲んでなきゃやってられないわ」





「一番、ファイ、歌いまふ!!」


「いいわよー、頑張ってー」


「ファイ―、良いボケ期待してるわよー」


「ちゃんとオチはつけてよねー」


「……うぅ、皆さまにこれだけ期待してもらえるんだなんて、わたひ、わたひは幸せ者です。うわああああああん」


「うわっ、ファイちゃんが泣き出した!?」


「誰の所為よ?」


「貴女じゃない?」


「私じゃないわよ、貴女の所為よ!」


「そんな事ないわ!!」


「皆様、私の為に喧嘩は止めて!!」


「「「「誰も喧嘩してないわよっ」」」」


「……そ、そんなに怒らなくても。わたひ、わたひ…………この想いを魂に込めて、今こそ歌いまふ。百五十三番、『地獄へ堕ちろ、ビッチ共』!!!!」


「――ボッコにしましょう」


「――そうね。酔った勢いとはいえ言っていい事と悪い事があるって、ちゃんと教えてあげないとね」


「――ふふっ、新薬、試す……いい機会。ふふふっ」


「ほぇ? 皆様、寄ってたかってどうかしたで――うきゃあああああ!?!?!?」





「う〜ん、みんなイイ感じに飲んで騒いで、暴れてるなぁ。良き哉、良き哉!!」





「スヘミアさまぁ〜、お酒がたりてませーん。うふふふふ〜……うっぷ」





「ふむ。それは私への期待だね? 挑戦だね? 勝負だね? ――望むところっ。それじゃ、私もとっておきを出しちゃおうかな〜、って、こりゃ私も結構酔ってるなぁ」





◇◇◇





「お、随分と盛り上がってるみたいだな、お前たち」





『ご主人様!?』





「って、俺が来たからって草々畏まらなくてもいいって。折角楽しそうにやってるんだ。俺に気を配る必要はないって」



「レム兄様ってば太っ腹っ!」



「……だからと言ってスヘミアもこれ以上煽るなよ? 何か騒ぎが大きくなったら危険な気がしてるからな」



「うん? 大丈夫だいじょうびー」



「つか、お前も結構酔ってるっぽいな。大丈夫か?」



「うん! 私は大丈夫だよ全然正気だよぉ、レム兄様ぁ〜」



「正気のお前は断じてそんな甘えた声ですり寄っては来ない」



「酔った勢いで一夜の過ちを……きゃ〜♪」



「あー、はいはい。そりゃよかったな」



「む〜、レム兄様ってばそっけない〜。……それとも、やっぱりお姉ちゃんみたいな“ないすスタイル”じゃないとヤる気にならないの?」



「やるとか言うな、やるとか」



「むしろ殺っちゃう?」



「そっちの方が危険だろうが。いいから、少し離れろ。酒臭い」



「レム兄様のいけずぅ〜」



「酒は飲んでも飲まれるな、だ。酔っぱらいに優しくしてやるほど俺は慈悲深くないの」



「……む〜」



「不満か? 不満があるとしたら素面の時にでも聞いてやるから――」



「――“点睛”、踊れぇぇ!!!!」



――イエス、マスター



「え? は?」



「今夜はご〜ほーる、ないとぉ〜」



「いや、ちょっと待てスヘミア、おま、何を――」



「――皆、レム兄様を拘束しちゃって?」





『はぁい、スヘミア様』





「いや待てお前たち、お前たちは今操られているっ。だから気をしっかり持ってだな!」



「私は操られてるだけだから何も悪くない、悪くないの、うん、悪くないんだぁ〜」



「身体が勝手に動いてるんです、だから私の意志じゃないんです、本当ですよぉ?」



「あっ、自由が効かない〜、さすがスヘミア様ですねー」



「ほんと、ほんと。抵抗なんて私たちにはとても無理です〜」



「……わくわく、どきどき」



「……御主人様に、その……ぶっ♪」



「……今のチャンスに日頃の怨みを――」



「たのしそーだからわたしもまざるー」



「ちょ、ミミルッポ!?」





「――ってか明らかに操られてないやつばっかりぃぃ!?」



「ふ、ふ、ふ。レム兄様、もう逃げられないよ?」



「……と、ついいつものノリで逃げようとしてたけど、そもそも俺が逃げる必要なんてどこにもないじゃん。むしろ皆に囲まれて天国?」



「――そんなレム兄様にはちょっとお仕置きが必要だと思います。賛成のヒトー?」





『はーい』





「と、言う訳で満場一致で賛成が出たみたいだね。よかったよかった」



「……待て。つかその取り出した如何にも怪しげな瓶は何だ? 何が入っている?」



「ん〜? これはね、とってもおいしージュースだよ? 東の方でちょっと手に入れたんだけど珍しいモノらしいからレム兄様かお姉ちゃんに上げようかと思って。だから、レム兄様にあげるね?」



「いやまて、瓶の表面にドクロのマークがあるのは俺の見間違いか?」



「ん〜、どうでもいいよ、そんな事」



「いやどうでもよくないだろ、それはっ!?」



「レム兄様が飲まないって言うんなら皆で飲む事にしよっか?」





「それじゃ私が飲みたいです!」



「あ、ずるい。私も飲んでみたいー」



「……東の珍しい飲み物。どんなの?」



「……ごめんなさい、ごめんなさい、ちょっとお酒を飲んだからって私が調子に乗りました。むしろ調子に乗り過ぎましたもう致しませんのでどうかお許しくださいお姉さま方、私、ファイめはお姉さま方の一生の奴隷で御座いますので、どうか叩かないで、もう叩かないでぇぇ」



「ファイ、ひとりでなにいってるのー?」



「ミミルッポ、アレは見ちゃダメよ。それと気にしてもダメ。ついでに今のレム様とスヘミア様に近づいたりしちゃもっと駄目だからね?」



「はーい」





「うんうん、皆も飲みたがってるみたいだし、それじゃあ早速ぅ――一気、いってみようかぁ!!!!」



「いや待て明らかに怪しいだろソレ! んなもの一気飲みするなよ!?」



「……もうっ、レム兄様ってば、呑みたいなら最初からそう言ってくれればいいのにぃ〜」





『そうですよ、ご主人様っ』





「え? いや、俺は別に飲みたいとは一切言ってないが――」



「じゃ、レム兄様」



「ん゛? とても嫌な、はっ!? お前たち、早く離せ、つか俺を解放しろじゃないと危険な――」





「――飲め♪」





「んぶっ!? ……んく、んく、んくっ。げほげほっ、う、あぁ、思わず飲んでしまった」



「レム兄様、美味しかったですか?」



「バカヤロゥ、美味しいも何も、んな危ない――、」



「はれ、……レム兄様?」









「――スヘミア」



「あ、あれ? どうしてかな。レム兄様がいつもより格好良く見えるような……? わきゃ〜、私、どうしてどきどきしてるのー???」



「――それに他の皆も」



『ご、ご主人様……?』



「遠慮する必要はない。皆、俺の近くにもっと――“寄って来い”」





『――っ!!』




前回は疲れておりました?

今はちょっと脱線。


続きます、続きますか、これ?

と、いうよりも次辺りから本題に入れそうな、そうでないような……?

ど-27. 辺りの時のお話です。


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