ど-200. 覚醒
レッツ、暴走
「あ゛ー、喉渇いた」
「旦那様、如何なされましたか?」
「お? ちょうどいいところに。一眠りしてたら何か猛烈に喉が渇いて来てな。何か飲み物を……って、いいモノ持ってるじゃないか」
「ぁ、旦那様ソレは――」
「けちけちするなって。少しくらいいいだろ。…無色無臭、うん、まさか飲めないもんでもないんだろ?」
「え、えぇ、それは確かに。飲めない事もない、とは思うのですが……」
「ならよし。……んくっ、んくっ。――おぉ、すげぇ美味いぞ、この水」
「そうなのですか?」
「そうなのですかって、何ならお前も少し飲んでみるか?」
「いえ、それは全力で辞退させていただきます」
「何だ、もしかして間接キス〜とかで照れてる?」
「そのような事は断じて御座いません。それよりも旦那様、体調の方は問題ないでしょうか?」
「………あれ? 今更ながらに聞いておくけど、今俺が飲んだこの液体、危ないモノ、とかじゃないよな? めちゃくちゃ美味かったんだから――」
「恐らくは」
「恐らくは!? 恐らくってそれどういう意味だよ!?」
「実はそれはシャトゥが送り付けてきた『謎液体』でして」
「は?」
「謎液体でして」
「二度言わなくてもいいから!!」
「いえ、流石の私も少々気が動転しておりまして。旦那様、本当にお身体の方は何とも御座いませんでしょうか?」
「一応何ともないが……で、でもあれは赤かっただろ!?」
「本日見たところ魔力吸収現象も収まり透明な液体になっておりましたので、どのような効果があるのかを確かめるために運搬中、旦那様が通りかかられまして……」
「飲んだ、と」
「はい」
「そ、そう言えばシャトゥに問いただした結果、この液体の効果ってなんだったんだ?」
「シャトゥ本人にも判っていないとの事に御座います」
「分かってない!? 創った本人が…いや、むしろシャトゥが創ったからこそ、なのか?」
「そのように推測されます。それで旦那様、度重なり再度、お尋ねいたしますがお身体に何かおかしな所は御座いませんでしょうか?」
「あぁ、今のところは問題ない気がする………む!?」
「…旦那様?」
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!」
「だ、旦那様?」
レムは覚醒した!!
「っ!?」
「――どうしたんだ?」
「い、いえ。ただ今の言葉はいったいどこから届いたのかと…?」
「――ふっ、細かい事は気にするな」
「は、はぁ…。それで旦那様? さきほど突然叫ばれ始めましたが大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫? 大丈夫かだって?」
「え、えぇ」
「大丈夫に決まってる!」
「そうで御座いますか。では普段の旦那様とどことなく異なっているように見えるのは私の勘違い、と言う事に御座いますね?」
「それは違うなっ」
「…違うのですか」
「応よ。今の俺を見てお前は何とも思わないのか?」
「いえ、特には」
「お前もまだまだって事だな」
「旦那様、やはり一刻も早く治療を施した方が――」
「そんなものは必要ないっ! 俺に必要なモノは――」
「必要なモノは?」
「……夢――そう、夢だ。ヒトってのはな、夢があるから羽ばたいていけるんだぜ? そして俺は空にだって羽ばたいてみせる!!」
「恐らく今すぐ休息を取った方が賢明かと」
「だから必要ないと言っている! くどいぞっ」
「申し訳ございませんでした旦那様。…しかし、夢が必要と言う事は旦那様は――」
「そうっ、俺の夢! それは――」
「世界征服に御座いますね?」
「違うっ!!」
「…ちぇ」
「そう! 俺の夢は――」
「ハーレムに御座いますね?」
「ふっ、皆まで言うな。分かってる。俺がその気になれば世界の女なんて――イチコロだ」
「わーすごいですね―、旦那様」
「そう僻む必要はないぞ。お前は俺のハーレム第一号にしてやるんだ。光栄に思ってくれていいぞ」
「…むしろ今更そう言われる事自体が私どもにとっては心外なのですが」
「さあ――夢を、始めようじゃないか」
「……まあ、その気になられた旦那様と言う事で、これはこれでありではありますか。しかしこの『謎液体』、残りは如何に処分いたしたものでしょうか?」
そして旦那様の暴走が始まる?
まあ、いくら何を言おうと所詮はレム君ですので。結果なんてタカが知れてますけど。
とあるお方のコメント×2
「――異界の堕とし子、素敵です」
「女神様、目が腐ってるんじゃない。あれを見てどうしてそんな感想が出てくるのよ?」
「ふふっ、あなたには愛し子の素晴らしさなんて一生分かりませんよ、出来損ない」
「一生も何ももう死んでるし。それに正直分かりたくもないわね」
「……ほふぅ、今すぐ駆け寄り抱きしめてやれぬこの身の口惜しさです」
「こりゃダメね」