ど-197. 今の状況、その二人
うみ!
「…う〜む」
「旦那様、如何なされましたか?」
「いや。どうして今の状況に陥っちゃったのかな、って考えてたのだが、」
「理由は判明なされたのでしょうか?」
「全く。全然、これっぽっちも判らなかった」
「そうですか。それは残念な事で」
「で、さ。ひとつ聞きたいんだけどいいか?」
「はい、何用で御座いましょうか旦那様?」
「お前って機嫌悪かった…んだよな?」
「いいえ? そのような事実は旦那様の妄想の中にしか御座いません」
「…あれ? でもお前さっき、俺に対して怒ってるって言ってなかったか?」
「はい、それは確かに。私は旦那様に大して怒りを覚えていたと言う事実は御座いますが、だからと言って機嫌が悪かった、とは一言も申し上げてなど居りません」
「そうだったっけ?」
「はい」
「言われてみれば、そうだった気も。……でも機嫌が悪いのと怒ってるってのは同じ意味なんじゃないのか?」
「そうと限るモノでも御座いませんよ、旦那様。それに今は多少では御座いますが私の気分も落ち着いておりますし」
「落ち着いてる、ねぇ」
「旦那様は落ち着かれておられないご様子で?」
「ん〜、かなぁ。つか、お前その恰好って何?」
「何、と言われましても。頭の方に生来の障害を患っておられる旦那様では見ても分からないのでしょうか?」
「いや、一応分かりはする、けどさ。…ここって浜辺だよな?」
「はい、浜辺で御座いますね」
「そして照りつける太陽。周りは海!」
「うみ! …でございますね?」
「ああ、うん。そうなんだよ。んで、せっかくだから俺らも〜、って流れだったと俺は思っているのだが?」
「その通りに御座います。故に旦那様は水着姿になられておられるのではないのですか?」
「うん。だからこそ聞いてるんだよ。お前、その格好は何?」
「メイド服で御座いますが、見えませんでしょうか?」
「いや見えるよ? ばっちり見える、てかそれ以外には見えないな。………水着は?」
「旦那様は私の水着姿をご所望されておられると、そういう訳で御座いますか」
「いや、別に俺がお前の水着姿を見たいとか、そういう事を言ってるわけじゃなくてだな。やっぱり浜辺、そして照りつける太陽! 海に来たからにはそれなりの格好になるのが当然ってものなのでないでしょうか、俺は思う訳だ」
「そうで御座いますね?」
「そう思うのなら何故水着にならないっ!?」
「ちなみにこれは防水・防火・防刃ならびに保温機能を有しております特注のものとなっております」
「デザイン変わらないから分からないって!! あと最後の保温って、……………あぁ、トカ――」
「――旦那様♪」
「御免なさい。今のは失言、ゃ、何も言ってないから気にするな」
「はい、ではそのように」
「……一瞬浮かべた笑顔が何よりも怖いと俺は思う」
「ふふっ、そのように笑顔が似合う、などと言われますと世辞と分かっておりましても照れてしまいます」
「あれ? 今、俺ってそんな感じの事言ったか? 一言も言ってない気がするのは俺の気の所為か??」
「さて?」
「…まぁ、せっかくこんな場所に来たんだ。深い事を考えるのは止めておこう」
「はい、それが宜しいかと」
「んー、じゃあこれから何するかなぁ? …一応聞いておくけど、何か 仕事しなくちゃいけないとかって言うのはないよな? 俺の自由時間だよな?」
「はい。確かに“私たち”の自由時間で御座いますよ、旦那様?」
「……、うし! なら決めた」
「何をなされるおつもりで?」
「取り敢えずお前、脱げ!!!」
「畏まりました旦那様」
「――……ぇ、即答ですか???」
メイドさんはメイド服だからこそのメイドさん。
つまりメイド服脱いだらメイドさんじゃなくてもOK?
とあるお方のコメント×2
「むきー!」
「どうどう、女神様、良いから落ち着け」
「あのメイド、……羨ましい。私も愛し子といちゃいちゃ。むしろ私が脱ぐ!」
「独りでご勝手にどうぞ、女神様?」
「……空しいのです」