19. どれいと、そして救出へ――
〜あらすじ〜
暗殺者に捕まったレム。目的は“レム”と言う名前の男らしい。
ダリアって名前の王様にも見捨てられて、レム君ピンチ?
レム・アイリアス・・・格好良さげだが、偽名。レムの本名は未だ以て未公開。
マイシア・アルカッタ・・・アルカッタの王妃様でリリアンの母親。アルカッタ影の(公認?)支配者。
ダリア・アルカッタ・・・アルカッタの王様。一番偉いヒト。
セミリファ・ケイラン・・・偉くなった、元新人さん…て、何だそれは
「ぐふっ!?」
「ごがっ!?」
「げほっ!?」
「――あなた、何を仰ってられるのですか?」
「ひっ、マ、マイシア? どうしてここに。聖堂に籠っていたのでは…?」
「ええ、籠っていました。リリアンの無事を祈っていましたとも。――でも、こんな騒ぎがあっては参らないわけには行きませんでしょう? ……それに、懐かしい殺気にも呼ばれた事ですし。ね、婿様?」
「だから俺は別に婿じゃないって…」
「おっ、おのれ犯罪者めっ! 助けにマイシアを呼びおったのか、この卑怯者が!!」
「――あなた?」
「ひぃ!?」
「…ごめんなさいね、婿様。状況はよく分かりませんけど、このヒトが無茶を働いたみたいで。ほんと、リリアンの事となると馬鹿になるんだから。…困ったヒトね」
「いやー、まぁそれはこの際いいのだが、それよりも先に俺を助けてくれると助かります。………つか、他の奴らを瞬殺したんなら俺の後ろの奴もついでに気絶させといてくれればいいのに」
「あら、それでは婿様の活躍の場を奪ってしまう事になるでしょう? それはいけませんよ。それに瞬殺だなんて物騒な言い方しないで下さいな、無益な殺生はよくないでしょう?」
「無益、ね。まあ確かに」
「くっ、こうなればこの男だけでも道ずれに――」
「っと、悪いな。そういう訳にもいかないんで」
「し…ぇ、消え――?」
「代わりに取り敢えず名乗っておこうか。レム・アイリアスだ。別に覚えなくてもいいぞ。野郎に覚えてもらう必要はないから」
「まぁ、婿様ってば♪」
「ぐぬぬっ、この犯罪者めがっ」
「んじゃ、バイ!」
「な、うし――」
「……う〜む、やっぱりこの『転移石』って便利だよなぁ……と、本来なら言いたいところだが。やっぱりか、あのヤロ、細工施してやがった。………ま、どこに飛んでったかは知らんがあの暗殺者君の冥福は祈っとくか」
◇◇◇
「婿様、お疲れ様です」
「……マイシア。俺は別に婿じゃないっつーの」
「あら、でもリリアンは『自分を泣かした相手じゃないと結婚しない』って言ってるんですよ?」
「や、言ってないだろ。俺が聞いたのは『自分よりも強い相手じゃないと結婚しない』だぞ?」
「そうだ! そしてすうぃ〜とまいえんじぇる・リリアンが貴様如き犯罪者に劣るわけがないわっ!!!」
「あら、どちらもそれほど変わりませんよ? それにあなた、そんなだから最近リリアンに冷たくされるんですよ、もう少し自重してください。正直、最近うざいです。でないと私、リリアンを連れて実家に帰らせてもらいますよ?」
「そそそそれは困るっ!!!」
「ふふっ、ならあなたは少し黙っていてくださらない? あなたが口を挟むと婿様とお話ができないでしょう?」
「ぐ、う、うぅ〜!!!」
「いや、だからって俺を睨まれても困るわけで。それとマイシア、俺は婿じゃないと何度言ったら――」
「何度言われても変わりませんよ?」
「……はぁぁぁ。でもさ、そもそも俺はリリアンを負かした事なんてないぞ」
「あら? でも数年前に婿様はあの子を泣かせましたよ。私が証人です」
「いや、あれはリリアンが全然小さい時で、泣いたのだって別に俺の所為じゃないだろ。確か、俺に絡みついてた巨大ツィートルを見て――」
「でもあの子を泣かせたのは確かですし、あの子を泣かせる事が出来たのは今も昔も婿殿一人だけなんですよ?」
「…そもそもだぞ、昔は違ったかもしれないけど今のあいつは世界で十指にも入るほどの強さだぞ? それを何処の誰とも判らんような俺と比べるのは、」
「あらあら、婿様は謙遜がお好きですね?」
「別に謙遜してるわけでもないけど」
「それにですね。女の勘は舐めてかからない方が身のためですよ、婿様?」
「どういう意味だ?」
「さあ? でもあの子が気に掛けるような殿方がほとんどいないのと、婿様――レムさんに酷く興味を持っているのは確かな事です。それだけで十分じゃないですか?」
「それは……ほら、リッパーとかあいつ――ほら、銀髪っぽいメイドとかを気にしてるだけだろ?」
「そうかもしれませんね?」
「なら――」
「でも正直あの子に勝る殿方なんて草々いるとは思いませんし、生き遅れはしないかとあの子の未来が心配でもあるんですよ、私」
「だからって別に俺である必要はないわけだろ?」
「それはそうですが。そうするとあの子に勝る殿方なんて、敢えてあげるなら燎原の賢者、ステ――」
「――――」
「――……そう、“それ”です」
「――ちっ」
「……何よりもその殺気の密度です。常人なら――一時はW.R.に名を連ねた事のある私たちでさえ、身動ぎ出来ないほどの恐怖を感じてしまうほどの意志力。それがどうして弱いと言えましょう」
「――なぁ、マイシア」
「……はい、何でしょう、レムさん?」
「俺は別に、そんな大層な奴じゃないって。大切な奴一人守れない、ただの愚かも――」
「ぁ、危な」
「――のぶえ!?!?」
「あ、ごめんなさい、そこのヒト。当たっちゃ……って、レムか。なら願ったり叶ったりじゃない」
「てめぇ、勝負の最中に景品の掻っ攫いたぁ、卑怯だぞ!!」
「何よ? 別にわざとじゃないわ、偶然よ。それにアレは私の獲物だって、まだ覚えられないの?」
「はんっ、知るかそんなの!」
「…これだから、バカは嫌いよ」
「んだとぉ…?」
「これだから馬鹿は嫌いよ」
「二度言うなよ! 十分聞こえてるわ!!」
「ふ、くくくっ、あははははっ、ざまあみるがいい、犯罪者め!! 天罰だ! 私のすうぃ〜とまいえんじぇるに手を出そうとした報いだ、いい気味だ!!!!」
「あなた、少し黙ってらして?」
「ぷぎぃぃ!?!?!」
「……ふふ、婿様はいつも人気者ですね」
「別に、こんな人気…欲しくねぇし。……それよりもダリア、放っといていいのか? 何か口から泡吹いてるぞ?」
「あらあら、贅沢ものですね? それとこのヒトの事はいつもの事ですから大丈夫ですよ」
「いつも…む、報われねぇ」
「ふふっ?」
「――……、それよりもマイシア、下半身凍ってて動けないんだが助けろ…いえ、助けて下さいよ」
「婿様、ここで頑張って男を見せればあの子のハートも鷲掴み♪ かもしれませんよ?」
「え゛? 何か嫌な予感。それってどういう――」
「隙有りっ!」
「ぐふっ!?」
「……、こほん。セミリファ、いますか?」
「はい、ここに。王妃様」
「これから、マーサと一緒にあの子の救出に向かって貰う事は先ほど話しましたね?」
「はい、承っております」
「それにこの方も連れて行って下さい」
「は……、ですがこの者は姫様を攫った――」
「心配いりません。それはあのヒトの早とちりです。この方が無害であると言う事は私が保証します。それとも私の保証だけでは足りませんか?」
「いっ、いえ。そのような事は御座いません! ……承知いたしました、王妃様!」
「場所は『ミクスベルの森北方134の一軒家の中』だそうです。……では、頑張ってくださいね?」
「――はっ、この命に掛けましても!! ………それでこの者はどうやって連れていけば良いのでしょうか? 何故か気を失っているような」
「引きずって行ってくださって結構ですよ?」
「え、ですが…」
「結構ですよ?」
「――、はっ、了解しました。それではセミリファ・ケイランならびにリン・フェル、マーサ・シュトルの三名、姫様救出の任に移らせていただきます!」
「朗報を期待していますよ?」
「はっ!!」
「…そうですね、孫は二人、男の子と女の子がいいです」
「はっ! ……は?」
「…こほん、とにかく頑張って来て下さいね?」
「は、はぁ…? ――では、行って参ります!!」
「行ってらっしゃい。それと婿様も、頑張ってあの子を今以上に惚れさせてみてくださいね♪」
何故かタイトルだけ格好良さげな気がするのは気のせいでしょうか?
そしてレム君はいつでもレム君、と言う訳で…締まりがないなぁ。
こうしてレムの処刑はお流れになりましたとさ、お終い?
一方でスィリィさんとフィン君の二人は街を壊しながら戦闘中。んで、レムがいなくなってた事に後から気づいたスィリィ嬢が激怒→その後…?
まあ、語りもないお話。あとがきで書いてる事は基本的に思い付きっぽいのであまり気にせずにおいてください。