ど-187. 成長ですか?
シャトゥは日に日に立派いに成長しております。…最もそれがいい意味での成長とは限りません。
『レムはそろそろ病気になりましたか?
私の方は下僕一号様が流行り病にかかり少しまずい感じのする今日この頃です。
今、私たちはトットポ砂漠という所にいます。レムールは寒かったので少しでも暖かいところに行こうとしたのが失敗でした。今度は暑すぎます。
水も尽きて彷徨う事五日になります。ルルは相変わらず眠ったままの薄情様です。下僕一号様はぐったりしているので私が担いで運んでいます。
「あ、そう言えば魔法を使えばいいのです? 水も食べ物も暑さも困りません。流石私です。レムもこれを見て私を褒めるがいい」
「う、うぅ…」
「下僕一号様? 気がつきましたか? 少し待っててください、今から水を出しますから」
「しゃとぅ、ちゃん? ここは…」
「此処は砂漠のど真ん中で私は下僕一号様にとっては救いの女神様です。褒めるが良い?」
「うぅ…?」
「うむ? 返事がないと寂しいのです。そして私は寂しいと死んでしまう。…貞操の危機!?」
「…ぅ」
「…詰まりません。ふっ、ならば私――もといっ! 我の108の必堕技の一つ、『フィーリングふぉーりんぐヒーリング・ぐっぴ〜♪』。喰らうのです下僕一号様!」
「ゃ、止め――」
「今こそ必堕の――『フィーリングふぉーりんぐヒーリング・ぐっぴ〜♪』!」
「ゃ、きゃ……、あ、あれ? 何とも、ない?」
「ちなみに『フィーリングふぉーりんぐヒーリング・ぐっぴ〜♪』は女神様の奇跡っぽい御技を使って、私の妄想を相手に刷り込むというものです。今回は下僕一号様の病気を治してみた」
「…うん、治ってる。あ、ありがとうねシャトゥちゃん」
「ちなみにどうしてさっさと直さなかったの? って言う文句は受け付けませんから」
「誰もそんな事言ってないよ」
「…ほっとしました。それで下僕一号様、良いですか?」
「何、シャトゥちゃん?」
「実は『フィーリングふぉーりんぐヒーリング・ぐっぴ〜♪』はまだ私には早い技なんです。もうふらふらで倒れそう」
「え! シャ、シャトゥちゃん大丈夫!?」
「ダメです。なので後は任せ――
シャトゥちゃんからの魔力の供給がストップしたので、おかしな所で映像が切れていると思いますが、私たちは無事にやっていますので心配しないで下さい。
あのあと、親切なおじさんとおばさんが通りかかって、砂船に乗せてくれたんです。
ルルの姿をしばらく見ないのと、シャトゥちゃんに会わせてもらえないのと、軟禁されている気がするのは気のせいです。気の所為だと思いたいです。気の所為です。
あ、ルルが空飛んで火を吹いて暴れて
気の所為ですね。
御免なさい、病気が治ったばかりでまだ疲れているみたいです。
また元気になってから連絡したいと思います。では。
』
「そう言えば南の方で火柱上がってるの、ここからでも見えた気がするな」
「はい。灼耀の気配も感じましたのであの騒動はルルーシアに間違ないないと思います。しかしシャトゥ、禁止していたのに“アレ”を使ってしまったとは、困った子です」
「…あ、それと最近トットポ砂漠って言う所でヒト売りが出没してる、とか言う情報があったような…?」
「それならば先日壊滅したとの報告を受けましたよ、旦那様?」
『フィーリングふぉーりんぐヒーリング・ぐっぴ〜♪』
シャトゥ、108の必堕技の一つ。必ずオチる技、と書いて必堕技。
ぐっぴ〜♪に意味はない。何となく、フィーリング。
イマジネーションを防御不可で相手に叩きつける凶悪技。でもやっぱり死なない。喰らっても死ねないし肉体へのダメージはなし。
精神ダメージとして眠るたびに『我を崇めよ』との可愛らしい女の子の言葉が聞こえてくるらしい。中には悦んで当たりに来るモノ好きもいるらしいよ?
…果たして108全ての技を発表する機会があるのかどうか。
とあるお方のコメント×2
「私を無様と笑うがいいわ、出来損ない」
「別に嗤わないわよ。それより良い事したんだから胸を張ったら? あ、張る胸がないか」
「あなたは私を褒めたいのですか、それとも貶したいのですか?」
「別に、どっちでもないわよ。私はただ私の思っている事を言っているだけ。女神様が貶されてるって思ったんならそれでいいし、褒められてるって思ったんならそれでいいわ」
「…では、別に喧嘩を売ってるわけではないのですね、出来損ない?」
「何言ってるの? 当然、“撃って”るわよ」
「こ、この……」