ど-172. 二人ぼっち
そして二人はに地上に戻る?
「行ってしまいましたね」
「ああ。…って同じような会話をつい最近した記憶があるぞ、俺は」
「それは旦那様には非常に珍しい事に正しい記憶に御座います」
「その言い方だと俺の記憶は間違っている事の方が多い、って事になるのだが?」
「コレは珍しい事です。旦那様が正しい発言を二度も!」
「……」
「…、二度も!?」
「いや、もう良いっての。寂しいってのは十分に分かったから。普段通りに戻っていいぞ」
「そうで御座いますか。…ではそのように。旦那様はいつ見ても凛々し」
「それも普段とは違くねぇか?」
「旦那様は褒められるのも違う、貶されるのも違うと仰られる。つまりは私に口を開くなと、そう仰られておいでなのですか?」
「どっちも両極端過ぎって気もするが…口を閉じる、ねぇ。出来るものならやってみろ」
「……」
「よしっ、じゃあ早速、痛っ!?」
「……」
「い、いきなり殴るんじゃない。つか俺が何をした?何でいきなり殴るんだよ?」
「……」
「…ちっ、あくまで口を閉じっぱなしでいる気か。ああそうか、それなら俺の方もそれでいいさ。ならこっちにも考えってものがある」
「……」
「よっしゃ、コレを機会に世界征服でもしてみるかぁ〜」
「……」
「…このネタはダメか。これなら一発で飛びついてくるかとも思ったんだけどな。なら…実はここにお前の秘密を書き記した『驚が――痛ぇ!!!!」
「……」
「こ、このやろ、てあぁ!?俺の本が!至高が!!燃えていく……く、くそっ」
「……」
「うぅ、こういうときだけ表情が豊かになりやがって。演技とは判っててもその満面の笑みが憎い。いや、つか演技だって判ってるからこそ?」
「……」
「ったく、しぶといな。てか、これは一人でぶつくさ言ってる俺がバカみたいなんじゃないのか?」
「……」
「ぅ゛〜ぁ゛〜、そ・の・え・み・がっ!ムカつき過ぎる!!!心底ヒトを小馬鹿にしやがってっ!!!」
「……?」
「何だ、その意味不明なリアクションは?なにか云いたい事があったら言えよ」
「……」
「あー、何か言いたいけど口を閉じてるから言えない、ね。ちっ、本当に忌々しい」
「……」
「あーくそっ、もう解った!俺の負けだ、だからもう喋ってもいいぞ!!つか喋れ、今すぐ喋れ」
「本当に堪え性が御座いませんね旦那様。だからと言ってすぐさま私に当たるのは止めていただけませんでしょうか?そのように大声を出されずとも十分に聞こえておりますので。本当にどうしようもない、根畜生の風下にでも置いておけば少しは役に立ち気がしないでもないという気分にほんのりとさせてしまわれるような旦那様で御座いますね?」
「…何つーか、口開けばそれしかないのか、お前は?」
「いやんっ、旦那様のいけずぅ〜♪」
「それこそキャラ違うから止めれ」
「…失礼いたしました」
「そうして後から照れるようなら始めからするなよ」
「…ぽっ」
「……何か、どこからどこまでが演技で本気か分からなくなってきた」
「私は常に一本気で旦那様に尽くしております!」
「…ふぅ。何か、変わらねぇなぁ」
「えぇ。――そうで御座いますね、旦那様」
「やれやれ、だ」
「やれやれ、ですね」
「……つか、お前がそれを言うな」
「本当にその通りで御座います!」
「………やー。ま、いっか」
いつもこんな感じで楽しく?過ごしているメイドさんと旦那様。
旦那様の今日の格言
「ふっ、お前の秘密は全てこの頭の中にある!」
メイドさんの今日の戯言
「よかったですね?」