ど-171. …あ、まだ居た
前回、シャトゥは地上へダイブしておりました。
「…ふぅ。祭りの後の遣る瀬無さ、って感じだな」
「うむ?」
「で、シャトゥ。何故にお前はここにいる?つい先日大見得張って地上へダイブしてなかったか?」
「しました。そして我は舞い戻って来た!」
「それは早いご帰還で」
「……うぅ、レムの癖に我を苛めます。ですが我は負けない!我はやって出来る子なのですっ」
「え?俺今虐めてたの?つか、いつ?」
「そんな無自覚な発言が何時も誰かを傷つけている。…その事にレムも気づいた方がいいよ?」
「急に大人な発言!?……まぁ、その手に持った本がなければ決まってたけどな。それ、何だ?」
「母様から頂いた『迷言集?一度は言いたい恥ずかしい言葉-完全版-』なの」
「……まぁ、素で聞くと確かに恥ずかしいわな、今の言葉」
「照れるの。…てれてれ」
「それは恥ずかしがるとは微妙に違う」
「…ショック!」
「………んで、そろそろ聞きたいんだがいいか?」
「うむ?ダメです」
「そうかそうか。それでシャトゥ、どうして戻ってきたんだ?まさか『旅立つときは今!』とか言って飛び出てったけど本当にもう戻って来たのか?」
「違うの。忘れものをしたので取りに来ただけです。決してレムにお礼参りをしようと企んだ訳ではありません。…本当に?」
「ゃ、それは俺の方が聞きたいから。つかお礼参りはしなくていいからな」
「それは残念でした」
「そうしょげるなって。それで忘れものとやらはもう取って来たのか?」
「うむ。世の中、先立つものが必要と本当に身に染みて分かりました」
「…お前、下界に行ってからまだ半日も経ってなかったよな?何見てきたんだ?」
「…何、些細なモノでした」
「おぉ、あのシャトゥが遠い目を。まぁ敢えて聞きたいとも思わないけどな」
「と、言うわけで先立つ“者”を持っていくの。レム、いい?」
「ああ、ってわざわざ俺に聞かなきゃいけない事なのか、それ?」
「うむ?…アレは元々我の“者”なので問題ありませんでした。レムが何と言おうと我は持っていきますので」
「ああ。何を忘れたかは知らないけど、大体のモノなら別に持っていかれても困るって事もないしな。それに先立つものって事は金品だろ?良いぞ、持てるだけ持っていっても」
「我はそのような俗物ではない!」
「おぉ、悪い。……て、先に先立つモノとか言い出したのはシャトゥの方だろうが」
「うむ。確かに先立つ“者”は必要なので持っていきます。でもレムも失礼です。もう少し熟女の扱いを心得なさい、なの」
「………、熟女?」
「ぽっ」
「ああ、まかり間違っても熟女なんてどこにもいないな」
「うむ、その通り」
「…ま、いいか。んじゃ、今度こそ独り立ちの旅とやらに出かけるわけだな?」
「うむ。世直しの旅に少々出かけてきます。…我、偉い?偉い??」
「ああ、偉いぞー。ただあんまり張り切り過ぎるなよ?おまえが張り切り過ぎると絶対に良くない事が起きるから」
「うむ?…よく分からないけどせめてレムの遺言だけは素直に受け取って気をつける事にします」
「遺言とか不吉な事言わないで!?マジでそうなりそうで本当に怖いんだよ!!」
「ではレム、忘れ“者”を二人持っていきますので。…では今度こそ去らば!」
「………、ふむ。何か、微妙にシャトゥと会話の齟齬があった気がするんだけど、俺の気の所為か?」
実はこれで本当に最後。そして拉致られる二人の被害者、もとい魂の姉妹と下僕一号様。
レム君の食生活は改善した!
…なんてテロップが出たり何だったり。
旦那様の今日の格言
「意志疎通は入念に行うべきだと常々思う」
女神さまの本日のぼやき
「私は帰ってくる…いつの日か、きっと!」