17. どれいとはりつけ
レム・・・磔にされて風前のともしび。
レアリア・・・ツン100%の奴隷の女の子。レム君を囮に逃亡中?
アル・・・しゃべれない奴隷の女の子。甘いもの好き。
リリアン・・・アルカッタの王女様誘拐中?
ダリア、マイシア・・・アルカッタの王様と王妃様。力関係は マイシア >> ダリア
スィリィ・・・実は公爵家。
ラライ・・・『灼眼の剣士』としてW.R.にも名が挙がっている凄いお方…のはずなのですが。
「……なぜに?」
「どうかしたのか、極悪犯?」
「だから俺は――と、言うよりもいつの間に極悪犯に? 正直状況が良く分からないんだが、どうして俺はこうして公開処刑みたいに磔で広場に晒されてるわけ?」
「今更何を。姫様誘拐を認めたそうじゃないか、極悪犯。結果として極刑は当然だな」
「……はい?」
「何か遺言があるのなら聞いてやらん事もないぞ。どうだ、言ってみろ?」
「う〜ん、急に遺言と言われても……って、だから俺はそんなんじゃ――…テッラ―、上手く俺を弁解してくれてるはずじゃ、……ってそのごめんなさいと言うジェスチャーは何だ!? おいこらてめぇ、俺を見捨てる気か!!」
「テッラ―? 極悪犯、貴様の仲間の名か?」
「いや、違うけど。極悪犯ではないけど。テッラ―って言うのは、ほらそこに…」
「? 誰もいないではないか」
「逃げたー?!?!」
「まさか恐怖のあまり気でも狂ったか? ……まあ、今更悔いたところで全てが遅いがな」
「くそっ、くそっ……くそぅ、俺が一体何をした?」
「誘拐犯が抜け抜けと」
「だからそれがそもそもの勘違いだと……」
「無様な姿だな、誘拐犯め!」
「んあ?」
「こっ、国王陛下!?」
「よぅ、ダリアじゃないか。久しぶり。相変わらず嫁さんの尻には敷かれ――」
「こ、この貴様国王陛下に対して何と無礼な口のきき方をっ。口を慎め!」
「よい、所詮はならず者の戯言だ。気にするほどのものではない」
「って、久しぶりに会ったのに無視は酷いんじゃないか? つかダリアなら俺が無実だって分かってくれるよな? て訳だから早くこの縄をほどいてほしいのだが」
「こ、国王陛下?」
「誘拐犯よ、そなた私を他の誰かと勘違いしているのではないか? 私とそなたは“初対面!”だぞ?」
「……うっわ、滅茶苦茶無視する気満々かよ。いや、そもそもこれってお前の差し金か?」
「ふふんっ、死にゆく者の戯言など痛くも痒くもないわ。何とでもほざいているといい」
「これ幸いって、まあ随分とでかい態度に出たみたいだな、おい」
「貴様の方が態度がでかいわっ、誘拐犯のくせに!」
「……あのなぁ、ヒトの話を聞かない、素直に信じないって言うのはよくないぞ? まずは信じる事から始めてみてだな、」
「貴様の言質など聞くにも値せんわ、私のぷりちぃ〜えんじぇる・リリアンを攫った不届き者めっ!」
「……今のダリアの発言、広場にこれだけのヒトがいるのに誰も突っ込みなしなのか?」
「……国王陛下の姫様溺愛ぶりは国中の民の知るところだからな。今更この程度」
「成程。お前も苦労しているわけだ」
「だからこそ、姫様を攫ったお前は極刑は免れないわけだ」
「つかな、何度も言うようだけどそれがそもそもの勘違いで…」
「黙れこの卑怯者が!」
「――ひきょうもの?」
「そうだっ、私のぷりちぃ〜えんじぇるを誑かしよって、卑怯者めが!」
「……――その言葉はムカつくな、おい」
「? ……おい誘拐犯、今更脱走しようとしても無駄だぞ。お前を縛っているのは本来なら特S級犯罪者の捕縛用に用いているモノだ。W.R.に名を馳せる姫様でさえ断ち切るのには一苦労なされるほどのものだ。貴様如きに」
「お前、ちょっと黙れ」
「ふんっ、その態度で凄んでも怖くも何ともないわ」
「なぁダリア、いい事を一つだけ教えてやろうか?」
「……何だ? 遺言ならば聞いてやろうではないか」
「俺はな、『女の子は優しく扱うように』って言うルナの教えがあるから女の子には極力優しくしてる訳だ。何か優しさと俺の待遇に違いがある気がしないでもないけどそれは極力考えないようにしている。けどな、だからって野郎にまで慈悲をくれてやる道理はないよなぁ?」
「こ、怖くないぞ。あのお方が傍にいない貴様なぞ怖くはっ…だからこそ今のうちに無き者にっ!?」
「こ、国王陛下?」
「ダ〜リ〜ア〜? 俺を怒らせるとどうなるか、お前には解ってるよなぁ? …………ところでこの事はマイシアは知ってるのか?」
「王妃様? 王妃様なら当然御存じ決まっているではないか。何を戯言を」
「っていう割には娘誘拐した犯人の公開処刑に顔を出さないってのも変な話だと思うけどな。それとマイシアの性格から考えて、もしかして今頃娘の安否を気遣って聖堂でお祈りの最中か?」
「っ!!! ……お、おい、早くこ奴の処刑を始めるぞ! 既に準備はできているのだろう?」
「はっ! 了解しました国王陛下」
「では早速始めろ」
「はっ!」
◇ ◇ ◇
「ほれ見た事か、無礼な事を言い陛下の心証を害すから、折角の寿命が縮んだぞ、お前」
「知った事か。………でもまぁ、ダリアの独断ってのも当然か。俺、てかリリアンよりなマイシアが知ってりゃこんな事にはなってないよな」
「何を言っている?」
「や、独り言だから気にしなくていいぞ」
「……ふむ。だがな、命を粗末にするものではないと思うぞ。とは言っても今更か」
「……なあ、ひとつだけ言っておいていいか?」
「なんだ、遺言か? 伝えたい者がいるのなら極力伝わるように配慮してやらんこともないぞ」
「お前、優しいなぁ。忠義心も厚いみたいだし」
「死にゆく者への配慮だ。気にするな」
「ああ、んじゃ気にしない事にする。それと予め言わせてもらっておくわ。――悪いな」
「? どういう意味だ。今更姫様を誑かした事を悔いても遅いのだぞ?」
「んー、まあ一応ってやつだ。今はあんまり深く考えるな」
「まあ、貴様がそう言うのならばそうしておこう。……準備ができたみたいだな、では覚悟はいいか?」
「あー、一応聞いておくけどさ、これってどんな処刑法だったりするんだ?」
「火炙りだ」
「やっぱり?」
「何、苦しいのは最初だけだ。直ぐに気を失う」
「…………さて、そろそろ潮時か」
「? だから先ほどから一体何の――」
「その処刑待った!!」
「何者!?」
「はい、お約束な返答をありがとう。で、その処刑、ちょっと待ってくれる?」
「おぉ、その声は……て、誰?」
「あなた、レム・ザ・へたれキングで間違いないわよね?」
「随分と懐かしい名前を……て、ヒト違いだ。しかも間違いだらけだ」
「本人に違いないみたいね」
「だから違うと言っているだろうが」
「って事だけど、ヒトに確かめさせないで自分で言ってくれないかなぁ、スィリィ?」
「…スィリィ? 聞き覚えのある名前だなぁ、何か」
「この大勢の中で叫ぶのが恥ずかしいってのは判るけど、つまりは当然私も恥ずかしいって事なんだよ……て、スィリィ、聞いてる?」
「…やっぱり、間違いじゃなかったのね。でも此処で会ったが五年目よ。他の誰にも横取りなんてさせない」
「って、聞いてないっぽいわね、こりゃ。……まぁ仕方ないのかな、これが何時もスィリィが言ってる“彼”ってんなら――」
「レム、その命、私が頂戴するわ!!」
「は? ……いやちょいと待――…って、動けない? 俺縛られてるの忘れてた!?」
「レム、覚悟!」
「いやちょい待ち冗談じゃ――」
「誰が冗談言うか。女の、もとい私の永遠の敵め。――切刻め氷風、アイシクル!!」
「う、きゃー?!?!?!」
◇ ◇ ◇
「…ここ、何処?」
「……(ころころ、ころころ)」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……アルちゃんって言うんですか。可愛いお名前ですね?」
「……(ころころ、ころころ)」
「あぁぁ、その飴を舐めている仕草一つとっても、なんて可愛らしいんでしょう。…あ、ちなみにここはミクスベルの森と言う場所です」
「さっきまでアルカッタの首都にいたはずなのにどうしてこんなところにいるのかしら?」
「……(ころころ、ころころ)」
「はぅぅんっ♪らぶり〜ですっ!! ……って、私は一体何をしてるんでしょうか。いえですね灼眼、この子は違う、この子は違うこの子は違うんです」
「…さっきから危ないヒトにしか見えないわけだけど、あなた、何者なの?」
「……(ころころ、ころころ)」
「きゅんっ。……いえ、傍から見て今の私が危ない人に見えるというのは充分に自覚しているのですが、これがまたどうしようもないといいましょうか、ここまで“彼女”が暴走するのも珍しい、初めての事で私としてはどう対処すればいいのか困って」
「……(ころころ、ころころ)」
「げふっ!? ……や、やばいです。このままでは奮死してしまいそうな勢いです」
「…あーもう良いわよ。あなたがだれであろうと。それよりもさっきいた場所に戻してくれないかしら? 私、急ぎの用事があったんだけど」
「それって『カトゥメ聖国がリリアン・アルカッタを誘拐したという勘違い』を判って貰う為にこの密書を届けるって事ですか?」
「そっ、それいつの間――!?」
「んー、でもそれは止めた方がいいですよ。今何やら誘拐犯の一人が捕まったとかで公開処刑が行われるらしいですから、それと同じ目に逢いたくなければ、ですけど。……まぁ、どのみちこんな手紙はない方が世の為ヒトの為ですけど」
「って、ああー!!! 燃や、手が、う、嘘ぉ……」
「……(ころころ、こくん)」
「あ、途中で飲み込んじゃダメです、あぁそんな無垢な目で私を見ないで燎げ――……けふん、けふん。だから灼眼この子は違うと先ほどから……」
「ちょ、あな……何て事を……!」
「ああ、大丈夫。心配しなくていいですよ。カトゥメ聖国によるリリアン・アルカッタの誘拐って言うのは間違いでも何でもない、確かな情報ですから」
「それは――」
「だからあなたにリリアン・アルカッタ誘拐はアルカッタの一方的な勘違いですよ、なんて教えたヒトがいるとすればそれはあなたに嘘を吐いてたって事です」
「っ!! ……何を、そんな」
「ちょっと祖国の暴挙を止めてみましょうか、って偶然お会いしたスィリィさんに誘われて来たので粗方の事情は知っていると思いますよ、私」
「スィリィ? ……公爵家令嬢のスィリィ・エレファン?」
「はい。スィリィさんの御実家を見た時は驚きました」
「……どういう、事?」
「それを今から確かめに。レアリア・ルーフェンス、それとも王太子殿下の姉君、と言った方がいいですか?」
「……あなた」
「……(こくん)」
「きゃあああああ、見ました? 今見ました? アルちゃんが頷きましたよ!? ましたよ!!!!」
「あー、私、何してるんだろ、ホントに。……そう言えばレムの奴、無事なのかしらねぇ?」
何かごたごたしてきた。そしてどうして気がつくとレム君は酷い目に合っているのか?
正直レム君を酷い目に遭わせようとか、そう言う事を思った事は一度もないのですが、気がつくと…(汗)
不思議ですねぇ〜
ちなみにスィリィ嬢の代わりに喋っていたのは親友のアイネさんです。学園は卒業して放蕩中。