ど-164. 特効薬
レム君のおなかの中は真黒です。
「旦那様、如何なされたのですか?」
「…見て分からないか?」
「多少、いつもよりも色が黒いような気もいたしますが判断がつきかねます」
「…そうか」
「それで旦那様、如何なされたのでしょうか?」
「シャトゥにツィートルの墨を全身に塗りたくられた」
「…なるほど。それで旦那様のワイルドさが当社比50割増しなのですね」
「…おい、それってどれだけなんだ?いつもの俺にワイルドさがないのか、それとも肌が褐色になった程度で俺のワイルドさがそこまで上がったのか、どっちだ?」
「どちらでも御座いません」
「は?どういう意味だ?」
「旦那様はお気づきになられておりませんか?多少ですが旦那様よりどす黒いと言わざるを得ない思念が前日比9割減で漏れ出ておりますよ?」
「それは逆に良い事では…と思うのは俺だけか?」
「そうで御座いますね。最近は旦那様も多少は毒を持たれてもよろしいのでは、と思わなくも御座いません」
「…ま、いいや。それよりもこの色落とす方法、お前知らないか?」
「知っております。ミショルトの根を擂り潰した粉を振りかけておけば数刻ほどで落とす事が可能です。そして丁度ここにミショルトの粉が御座います」
「……用意が良すぎる気がするけど」
「旦那様の気の所為に御座いましょう」
「ま、だよな。…多分。じゃあさっそく――」
「ところで旦那様、お一つ忠告させていただきますが、」
「――……既に全てが遅い気がする。んで、それでもやっぱり聞いておこう。なんだ?」
「ミショルトの粉は人体に対して極めて無毒ではありますが、非常に身体が疼いてしまうのが難点でしょうか?それを元に動物を捕らえる時の強力な麻痺薬として用いられることも一部ではあるのですが……旦那様?ちゃんと聞いておられますか?」
「〜〜〜っ!?!?!?!?」
「ご返事がない、と言うよりも私の事が既に目に映っておられない様子。…寂しいもので御座います」
「〜〜〜〜」
「さて、旦那様もご満足いただけているご様子ですので私は館の清掃に参ると致しましょうか。旦那様、失礼いたします」
「!?!?!?!??!」
「…では」
その後の旦那様は……自力で薬を調合して助かりました?とさ。
レム君はあわてんぼうです。知識があるのに抜けている?
旦那様の今日の格言
「ヒトの言葉はまず疑え」
メイドさんの今日の戯言
「御冗談を」