ど-161. ちゅー
ちゅー=???
「ちゅーしよう、レム!」
「――」
「ちゅー、使用中?」
「……はっ!?」
「…ちゅーしよう、レム?」
「いや、そう自信なさげに言われても…じゃなくてだな。いきなり何を言い出すんだ、シャトゥ。危うく意識が花畑に飛んでったじゃないか」
「楽園だった?」
「ああ、確かにそれは…でもなくて!」
「では何?」
「だからな。シャトゥ、いきなり何を言い出すんだ」
「何を?…ちゅーしよう?」
「そう、それだ。唐突に何突拍子のない事を言い出すんだ、お前は」
「ちゅーしない?」
「しない…って泣きそうな顔をするな。そもそもどうしていきなりそんな事を言い出したりするんだよ?まさか魂の慟哭とか夢に変な幼女が出てきて『迫れ!』とか脅して来たとかじゃないよな?」
「我は幼女ではない!…ですが養女です?」
「や、いまいち違いが分からんが。別にシャトゥの事を言ったわけじゃないぞ?」
「うむ?何となくカチンと来ました。…このロリコンめ?」
「待てシャトゥ、お前今最後に変な事呟かなかったか?」
「うむ?我は知りません。何か言った?」
「……いや、覚えてないなら?自覚がないならいいんだけどな。んで、どうしてあんな事を言い出したりしたんだ。何か理由があるのか?」
「特に理由はない。かっとなってやりました。今も反省してません」
「…なぁシャトゥ、できる限りその場の思いつきとかで行動するのは今後の為にも慎もうな?」
「うむ?」
「つまりよく考えてから行動に移しましょうって事だ」
「うむ。我は短慮ではない」
「分かってくれたならそれでいい」
「と、見せかけておいて実は皆の話を小耳に挟んだからです」
「って。……んで、その“皆”は一体どんな話をしてたんだ?」
「レム、目つきが少し怖いです」
「気にするな」
「うむ、では気にしない」
「で、どんな内容だった?」
「館の皆が今度レムの唇の奪い合いの相談をしてた」
「――マジで!?」
「うむ。確か『争奪☆(笑)御主人様(泣)の唇は誰のもの?第一回ちゅー争奪戦(物理的に)』という垂れ幕があったのを我は見ました」
「……所々気になる箇所があって素直に喜べないのはなんでだろう?」
「レム、ワガママ?」
「いや、これは我儘とは違うと思う。…て、そう言えばその相談とやらにあいつの影はあったりするのか?」
「母様?」
「そう、“母様”」
「ううん。母様は満足そうに遠目から眺めているだけでした」
「その満足そうにってところが気になりはするが……迷うところだな。知ったからには事前に潰しておくべきか。それとも敢えて見過ごしてみるべきか」
「ところでレム、ひとついいですか?」
「ん?何だ?」
「ちゅーというのは唇を削ぎ落す事を言うの?」
「――よしっ、潰すか!!」
「レム?」
「シャトゥ、ちょーと俺、至急の用事が出来たから行ってくるわ」
「レム、でも我の疑問」
「また後でな!なに、すぐ戻ってくるからちょっとそこで待ってろって」
「……行ってしまいました。…うむ?でも皆が刃物を持ってたのはレムの唇を削ぎ落すんじゃなくて料理中だったから?ならちゅーって“キス”でいいの?皆はレムが好き??……うむ????」
そして今日も墓穴を掘る。
旦那様の今日の戯言
「ふー、いい汗かいた」
女神さまの本日のぼやき
「妨害、成功?」