ど-156 だーれだ?
誰かいる
「旦那様っ!!」
「っと、どうしたんだ、そんなに血相変えて。珍しいたらありゃしない」
「…旦那様、おひとつ、伺わせてただきます」
「ん?何だ、どうした?」
「旦那様、シャトゥを何処へ隠されたのですか?」
「シャトゥ?何のことだ?」
「……なるほど、お惚けになられる、と言う事で御座いますね?」
「いや、本気で意味がわかってないだけなんですけど…?」
「ここ数日、シャトゥを見かけておりませんでした」
「あぁ、そりゃそうだろうな」
「そして旦那様のお姿も拝見しておりませんでした」
「ま、俺もお前のこと見てなかったしな」
「ここからはじき出される結論はただのひとつしかございません。すなわち、旦那様がシャトゥに対してとても口には出せないような行いを数日に渡り決行していた、という事に他なりません」
「単に壮絶な鬼ごっこしてただけだけどな」
「そしてあわよくば捕まえたシャトゥを食べてしまおうと…。さすがは旦那様、外道にも鬼畜にも劣る劣情振りに御座いますね?」
「どうしてお前たちあ俺に対してそんな評価ばっかりするかなぁ。てかそもそもの発信源はお前だよな?」
「旦那様の昔の所業と現在の儚さを鑑みますに実に妥当な想定であると私は認識しております」
「いや、そんな事は…ないとおもうぞ?」
「そこで断言なされないことが何よりの証拠に御座います」
「ゃ、あれは昔のことを少し思い出しててだな。一概に否定する事もできないってか、でもやっぱり俺はそんな事は断じてないからなっ」
「では旦那様、シャトゥの事は、」
「や、昨日の夜間に戻ってきて、お前の方には一目だけでも行っとくようにって、一応言い渡しておいたはずなんだけどなぁ。行ってないのか」
「はい。昨夜シャトゥが訪ねてきたという事実はございません」
「じゃあ部屋は?隠した云々言ってたけど、帰ってきてるはずだから部屋にいたんじゃないのか?」
「いえ、部屋の方にもシャトゥの姿を見止める事は叶いませんでした」
「…っかしいな。ならあいつ、どこ行ったんだ?どこか途中で力尽きてるんじゃないのか?」
「………旦那様、こちらに参りました折から気になっていたのですがよろしいですか?」
「ん?なんだ?」
「あちらの――旦那様のベッドに窺い見れます膨らみのようなもの、あれを旦那様はどうご説明していただけるのでしょうか?」
「は?何を…って!!…いや、まさか、そんな……」
「では少々の失礼を――!」
「や!待…」
「………」
「………」
「…シャトゥ、やはりこちらにいましたか」
「いや待て?これは勘違いだ何かの間違いだ。だから頼むからおれの話をちゃんと聞いてくれ、な?」
「…シャトゥ、よく頑張りましたね?偉いですよ?」
「―っ――!!…な、何なんださっきからおさまらないこの寒気っ!?」
「――では旦那様、詳しい事をお聞かせ願います。お時間の方は…宜しいですね?」
「アァ、ウン。……いや、今のお前は絶対何か勘違いしてるからっ!頼むから落ち着いて話し合おう。な?」
「ええ、旦那様。私は十二分に落ち着いておりますとも。では、詳しい話をじっくりと聴きたいので、シャトゥを起こさない為にも少々地下の方へと参りましょうか。まさか拒否なされる、と言う事は御座いませんね?」
「…でも頼みますから俺の話をちゃんと聞いてくださいね?」
「ええ、承知しておりますとも」
「それが果たして本当かどうか」
「………まあ、シャトゥが旦那様のお布団に潜り込んでそのまま眠ってしまっただけ、との事で相違ないのは把握しておりますが。果てさて、旦那様はいつお気づきになられるのでしょうね?」
メイドさんは旦那様の思惑などすべてお見通しなのであります。
旦那様の今日の格言
「気温だけが寒さじゃない」
メイドさんの今日の戯言
「さて、何の事でしょうか?」