ど-155. …もっと
この言葉だけだと意味深な気がしなくもない。
「つ、疲れた」
「レム、もっと」
「も―無理」
「レム、もっと!」
「いや、無理!もう無理だからっ」
「レムは海藻がない。…照れます」
「は?何を照れてるのか全く…、いや――」
「回送なしのノンストップ列車?」
「…あぁ、それを言うなら甲斐性無しだろ、ってどうして自分でんな事言わなきゃいけないんだよ?」
「レムは甲斐性無しです!」
「ああうん、言いたい事は分かったから、別に大声で主張しなくてもいいんだぞ、シャトゥ。…それと俺は決して甲斐性無しではない」
「レムは笑えない冗談が凄く上手い」
「冗談を言ったつもりはないぞ?てかな、一応俺はこの館の主様なわけだが、一番偉いんですが?つまりな、この館の奴らを養ってるのは俺って言っても過言じゃないわけだ。どうだ、これでもまだ俺の事を甲斐性無しというか、シャトゥ?」
「レムは甲斐性無しです」
「…まだ言うか」
「我ともっと戯れろ」
「ゃ、だからもう無理。少なくとも今は無理だってさっきから言ってるだろ?」
「やっぱりレムは甲斐性無しです」
「…これは甲斐性、っていうのか?」
「我の相手も務まらないレムは情けない?」
「いや、この場合はシャトゥの方が凄いんだと思うけどな。普通は誰だって二日ほど徹夜で追いかけっこを続けてりゃへばるぞ?むしろここまで頑張った俺をほめてほしいくらいだ」
「偉い偉い」
「…別に本当に褒めてもらわなくてもいいんだけどな」
「レムを褒めて我は凄く疲れました。もう今日は休みます」
「それって何か違くね!?いや、もう休むって言う事には全面的に賛成なわけだが」
「レムは我にどうしろと言う?添い寝?」
「その発想がどこから出てきたのかは知らんが違う。出来れば素直に帰って一日くらいは大人しくしててくれると嬉しい」
「うむ。ではそうするの」
「…珍しく素直だな」
「うむ。レムを褒めてしまったので気力が根こそぎ無くなりました。休息が必要です」
「…俺を褒めるのにどれだけ気力使ってるんだ、それ?つか、単に今までの疲れがようやく一気に出てきただけじゃないのか?」
「我は貞操を守りきった事を埃に思います」
「貞操ってなんだ、貞操って」
「レムの視線が怖かった!」
「…いや、最後の方は本当に気力だけで動いてたからな、ある程度必死の形相になるのも仕方ないと言い訳しておくぞ」
「言い訳は所詮、言い訳です?」
「いや、それは確かにそうだが…別にお前の貞操を狙ってたとか、そういう犯罪くさい思惑は一切なかったから。これだけは断言しておく」
「うむ。犯罪くさいではなく犯罪です。…レムの存在?」
「……あぁ、やっぱりあいつに育てられてるだけあって毒されてるなぁ。まあ本当に疲れてるからもう突っ込む気はないけど」
「ではそろそろお昼寝の時間なので行きます」
「ああ。それと一応“母様”には顔を見せとけよ?二日ほど顔見せなかったはずだから、多分かなり気にしてるはずだ」
「うむ、分かった」
「ん、ならよし」
「…うむ?あと、埃だらけになる前に埃はちゃんと捨てなければいけません?」
「ん?いきなり何の事だ?」
「我の貞操ははかないものでした。…ほろり」
「???意味分からん」
「では先に焼却炉に向かうので、レム、お休みなさい」
「……ま、いいか。んじゃな、シャトゥ、また……まぁ三日後くらいに会うとしよう」
「うむ。今夜あたり忍び込むので楽しみに待つようにして下さい」
「………期待しないで、全力で拒絶しておくわ」
「うむ?…うむ」
誰か、シャトゥの勘違い発言を訂正してあげて下さい。
……などと言いたくなってしまった。
旦那様の今日の格言
「――そこかっ!?……ね、眠れねぇ」
女神さまの本日のぼやき
「忍び足の訓練です」