ど-154. 癖になった
変な癖をつけるのはやめましょう
例:難癖
「…ん?」
「旦那様、お起きになられましたか?」
「……あれ、俺?」
「少々お疲れの様子。眠っておられました」
「あぁ、そっか」
「あまりご無理なされるのは控えて下さいますよう、旦那様」
「とは言われてもなぁ。それならもう少し俺に回す仕事を少なくしてもらえないか?」
「それは無理な相談に御座います」
「どうしてだよ?目を通してる限りそれほど重要な懸案じゃないものばっかりな気がするんだが?」
「はい。確かに旦那様が目を通す必要のないものばかりを優先的に旦那様にお渡ししておりますので、その認識に間違いは御座いません」
「…お前さ、言ってる事とやってる事が食い違ってないか?」
「そうなのですか?」
「俺に聞くな、俺に。つかお前、絶対確信的にしてるだろ?」
「それは勿論、至極当然の事に御座います。旦那様は皆様の為に身を粉にして働いてこそ、旦那様で御座います。旦那様に対します皆様方の評価もこれ少々は帳消しになる事でしょう」
「…それって普通は見直されるとかじゃないのか?」
「常日頃の旦那様の評価から判断いたしますに見直されるのはよほどの事をなされない限りは無理かと」
「つか、そもそも俺の評価が低いのも俺の所為じゃなくてほぼ全てがお前が流してる嘘八百が原因だよなっ!?」
「実に些細なことではありますが、確かにそのような事も御座いました」
「些細じゃねえよ!?それがなけりゃ俺って今頃すげぇ尊敬されてるんじゃね?ってくらいは頑張ってる自信があるぞ?」
「失礼ながらそれは過信と申します、旦那様」
「…まぁ確かに今のは少し言い過ぎだとしても、だ。奴隷たちよりも俺の方が疲労困憊って言う事実が既におかしいと、俺は常々思ってるわけだ」
「奴隷ではなく“隷属の刻印”を刻まれた方々に御座います、旦那様」
「今はそんな些細な事を話し合ってるわけじゃなくてだな、」
「重々、承知しております。つまり旦那様は頑張っているのだからそれなりのご褒美があって然るべであろう、と仰られているのですね?」
「いや、そう言う事は……まぁ確かにその通りではあるが」
「それは何と自分勝手なモノ言いでしょうか。流石は旦那様」
「それは褒めてるのか貶してるのか?あと、てめぇだけには言われたくねぇよ、その台詞!!」
「当然、貶しております。それでは旦那様のお期待に添えるよう、お一つ提案を行いたいのですがよろしいでしょうか?」
「却下」
「まだ何も申し上げておりませんが…」
「や、言いたい事は大体想像がつくから、聞くまでもない」
「そうですか」
「意見を却下したのに、どうして少し嬉しそうなんだ?」
「いえ。それは詰まる所、旦那様が私の事をよく理解してくださっておられた、という事ですので。これ以上の幸は私には御座いません」
「…あ、そう」
「はい」
「で、だ。ちょっと良いか?」
「はい、何でございましょうか、旦那様?」
「この膝枕、いつまで続けてるつもりだ?」
「何時まででも。旦那様が御飽きになられるまで」
「…そか」
「はい」
「んー、どうにもちょっと疲れてるみたいだからな。もう少しこのままの体勢でいさせて貰うぞ?」
「はい、どうぞ旦那様のお気の済むままに」
「ああ」
「………で、あるからこそ、多少ばかりは申し訳ないのですが旦那様に労を強いてしまうのですけれど」
「んあ?なにか言ったか?」
「いえ、何も。ただ、僭越ながらも常日頃より旦那様のお世話をしてります私にも少しは自分へのご褒美があって然るべきであると考えていただけで御座います」
「んー、色々と突っ込むところはあるが、まぁ一応、確かにその通りではあるなー。…ふむ、何か考えとくか」
「いえ、それには及びません」
「ん?そうか?自分で褒美が欲しいって言っときながら、変な奴だな」
「そうでも御座いません。…………只今、十二分に頂いておりますので」
終始一徹してご褒美状態…という今回。誰にとってのご褒美かは、言うまでもない?
旦那様の今日の戯言
「メイドさん膝枕は男のロマンの一つ」
メイドさんの今日の格言
「働く者には相応の酬いを」